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舞踏への勧誘
「ここだ。」
そう言われ、入った部屋は、茜音の想像していた食堂とは全く違った。食堂というよりも、お洒落なレストランという雰囲気だ。
中央で輝いているのは、大きなグランドピアノ。鍵盤の色からして、おそらく象牙を使用している高価なものだ。
その事実に感動をして、周りを見ずにピアノへ向かっていた。
とん。軽い衝撃が、身体に感じた。
「お嬢さん、ごめんね。怪我はしていないかい?」
「すみません。前をきちんと見ていなくて……。」
顔を上げる。そこには、白い軍服に身を包んだ、男性が。
「それは何の楽譜かな?」
その人の視線は、職員の人に渡されたピアノの楽譜に定まっていた。
「ピアノです。乙女の祈りの楽譜です。」
乙女の祈りは、明治時代のサロンでの定番曲だったと聞いたことがあったような。
「ということは、君の演奏が今日、僕は聞くことができるのか。」
手を握られる。
「頑張ってね、お嬢さん。」
手に、暖かいものがぶつかる。これは、西洋式の挨拶だ。でも、日本人のようなのに、どうして。
「ありがとうございます……!」
茜音はそそくさとピアノへむかった。
ここから、恋の舞踏への勧誘は始まったのだった。




