表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/36

ピアニスト


鴎外の「少し出かけよう」の一言で、茜音は今、築地のレストランにいる。なぜか、ステーキをごちそうになった。それがものすごく美味しくて、今まで持っていた明治時代のイメージなど、ぶち壊された。

彼がコーヒーカップを傾ける。長い指が目に見えると、なぜか紅茶が喉を通らなくなる。

そんな時だった。

「君、先日、鹿鳴館でピアノを演奏していただろう?」

スラリと背の高い、紳士に斜めから声をかけられた。

「はいっ。」

思わず声が裏返る。

「はじめまして。私は、この店のオーナーの廣瀬崇史(ひろせたかふみ)というものだ。」

「はじめまして! 守沢茜音です。」

「時に、守沢くん。君は演奏家という職業に興味はないかな?」

演奏家。そう聞いて何故か胸が痛んだ。しかし、興味が無いわけではもちろんない。

「あります。」

「私は今、君を、この店でピアニストとして雇いたいと思っているのだが。もちろんそれなりの報酬は払う。どうかな?」

やってみたいと思うが、鷗外の家に居候させてもらっている以上、自分個人の意見では決められない。

「鷗外さん。どうですか?」

私はなぜ、こんなにもうまくはなせないのだろう。こんな言い方を続けていたら嫌われてしまう。

「茜音ちゃんがいいのなら、僕も賛成だ。」

それでも鷗外はそう言って笑ってくれた。出会ってからまだ間もないのに、こんなにも安心できる人なんて、なかなかいないと思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ