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名もなき世界の物語  作者: 太陽人
春風は無条件に人の背中を押すらしい
1/2

新たな門出の前日は少し寂しい

ある日の病室。人工呼吸器をつけられ、ただ、生きているだけの少女がいた。

意識はなく、起きる気配はない。そばにある机には本とノートが置かれていた。ついさっきまで人がいたのか、ノートは開かれ、芯の出ているボールペンがおかれていた。

少しすると、廊下を歩く音が聞こえ、病室の扉が開き、白衣を着た30代くらいの女が入ってきた。

その女は手元に何かの装置をいじりながら、独り言のように話している。

「よし。あとは私が入るだけ。」「時間がないんだ。早く始めよう。あなたを生き返らせるための夢を一緒に見よう。」


白衣の女は、少女の横にあるベッドに寝ころんだ。白衣の女は首に機械を装着し、電源らしきボタンを押した。


その瞬間、彼女の意識は途切れた。



草原が広がる丘の上、ポツンとある一軒家の外。そこには青年がいた。斧を壁に立てかけ、切り株に腰を下ろしている。誰かの帰りをを待っているようだ。

彼の名前はシグ。好きなものはブドウとりんごで、嫌いなものは、中途半端に優しい雰囲気の胡散臭い人。

そんな彼も近々、中心街にある学校へ通うことになっている。

彼のいる国、「春風の国」では、15歳になると生きていく上での必要な知識や

何が得意か、卒業後に着く仕事の説明など、生きていくことに必要なことを学ぶため1年間「学校」へ通うことが義務付けられている。

シグも先日15歳になったばかりだ。そのため、明日の朝早くから馬車へ乗り、学校のある中心街へ向かうことになっている。

シグが切り株に腰を落としてのんびりしていると、丘の下に荷物を抱えたおじいさんが見えた。

どうやら買い出しに行っていたようだ。このおじさんは、ラールムおじさん。今年で75歳になる。シグの居候先のおじさんで、昔は冒険者として剣一本で世界中を見て回ったと本人は言っている。今は春風の国で余生を過ごしているらしいが実際のところ、本当かどうかはわからない。あくまで本人が言っているだけなのだから。

「もう結構な年なんだから、あんまり無理をしないでよ。」

「わかっておる。じゃが、体はうごかさないとなまるんじゃ。それに、何かあったとしても最悪ジルドが何とかしおるわ。」

「あんまりジルドさんを困らせないようにね。」

の丘を降りて少し歩いたところに夫婦で住んでいるのはジルドさん。おじいちゃんとジルドさんは昔に何かと縁があったようで、なんだかんだ言いつつ互いに助け合っている。

ジルドさんはおじいちゃんよりも一回り年下だが、それでも十分おじいちゃんだ。


「そんなことより、シグは明日も早い。昼の内に明日の準備をしっかり済ませて、明日に備えておくんじゃ。」

「わかったよ。おじいちゃんも、無茶はしちゃだめだからね。じゃあ、部屋で準備をしてくるよ。」

「まだまだ体は動く。問題ないわい。あと、今夜の飯は贅沢じゃぞ。1年間もあえんからのぅ。」

「うん。あんまり無茶しないでね。一人じゃできないことはジルドさんを頼るんだよ。」

「あんまり頼りたくはないのぅ。」

話を終えると、風呂場へ向かう。風呂場で10分ほどシャワーを浴び、牧割りの汗を流していく。体の疲れが水とともに流れ落ちていく、そんな感覚がやっぱり最高だ。

シャワーを終え、

部屋に戻り、一冊の本をを手に取る。タイトルは「アストラスの世界冒険記」シリーズ物で、つい最近5巻が販売された。今はその5巻を読んでいる。内容は、空から帰還した冒険者アストラスが、次は地底行くという話だ。

余談だが、学校に通うとなると、中心街に住んでいる人以外は寮生活となり、家族と離れることになる。その代わり、1年間分の食費、生活費を国が負担してくれる。

もちろん学費もかからない。

将来、この国に仕え、この国で働く人が大半だからだ。いわば、先行投資だ。卒業し、少し税をいただく。その税でまた若者が支援される。そんな感じだ。

ふと窓を見ると、太陽がすでに沈みかけており、きれいな夕日が広がっていた。半分ほど読んだ本を閉じ、明日の準備を済ませる。とはいっても、必要なものは数着の着替えと、移動中の暇つぶしくらいだ。

準備を終えると、部屋の外から声が聞こえた。

「シグ。晩飯ができたぞ。今夜は豪華じゃぞ。」

「わかった、すぐ向かうよ。」

台所に向かう。どうやら、ローストレッグのようだ。

「だいぶ奮発してそうだけど、大丈夫?」

「大丈夫に決まっておる。それに所詮老いぼれじゃ。金などもう要らんわ。それより、明日出発じゃろ?中央街は明日の夕方ごろ付くんじゃろ?。弁当を明日作ってやるから持っていくといい。」

「ありがとう。おじいちゃん。」

「何、若者に良くするのはジジイの特権じゃ。感謝などいらんわ。」

明日の朝には慣れ親しんだおじいちゃんの家を出る。そのことを否が応でも実感してくる。

家を離れることに一抹の寂しさを感じるけれど、なんだかわくわくするような、人生の分岐点にいるような、そんな気がする。

「ご馳走様。おいしかったよ。」

「そうか。ならよかった。洗い物はわしが食べ終わったらやっておく。今夜はしっかり寝て明日に備えるんじゃぞ。」

「ありがとう。お休み。」

「あぁ。お休み。」

食事を終えると、自室に戻った。食後は個人の時間になる。互いにそんな空気を察して、いつの間にかそうなっていたが、一人の時間も必要だ。

だから、今日はもうラールムおじいちゃんとは話さないだろう。明日の朝に挨拶をして、当分は離れ離れになる。


そんなことを考えたら今からでも少しだけ寂しくなってきた。そんな気持ちを紛らわすため、読みかけの「アストラスの世界冒険記5巻」手に取った。

「おぉ、世界冒険記?いいじゃん。諸説あるけど、人間を元にした本らしいね。」

背後から、明るく、だが、どこか、軽いような、信用できないような、そんな声が聞こえてきた。

「必要な時に呼ぶから、あんまり勝手に出てこないでよ。」

この、「胡散臭い」雰囲気を醸し出している存在は、

本人曰く、僕の魔法で、本人曰く、神様らしい。

ハイ。どうも。ウッス。こんにちわ。始まりましたよ物語が。

何かしたいと思いつつ、何もしないそんな今日この頃。

とりあえず手をだしてみたものが小説です。

そんなわけで一週間に1回は更新していきたいなぁ。(願望)


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