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116:第二の故郷

「ニース、持っていた小石はどうなったの?」


 初めてニースに会った時から持っていた小石を、投げたままにしてしまってよかったのか、今更ながら気がついたのだ。


 土壁が壊れた時、壊れたか、紛れて紛失してしまったのかもしれなかった。


 ニースはうーんという感じで考えていたが「明日またね」と言った。


「明日、探しに行こうって事?」僕が尋ねると、ふるふると首を振ると「生まれるの」と言った。


「明日になったらまた、小石が出来るって事?」


 ニースは嬉しそうに「うん」と答えた。


 どうやらあの攻撃は一日一回の制限があるのかもしれない。

 

 (あれだけの攻撃を簡単に出せるはずはないか)


 僕は少し残念だったが、制限もなく使えたらなんだか恐ろしかったのだ。


 (未熟な僕には一日一回でも過ぎた力に感じるからね)


 ニースが小石の事を気にしていない様子なので、僕は一旦この件は保留にする事にした。


 (さて、ディーネはどうしようかな)


 白狼との戦いで疲れて眠ってしまったディーネは、もう暫く眠らせたままにしておこうとも思ったのだが、気になっていたので再召喚する事にした。


 無理させたのでまた小さくなっていたらという僕の心配は、どうやら杞憂のようだった。妖魔の頃に初めて出会ったサイズに戻っていたのだ。


 ほっとした僕の側にトコトコとディーネがやって来て「魔石ちょうだい」と手を差し出してきた。


「何の魔石でも良いの?」


 コクンと頷くディーネに、僕は取り敢えず持っていたレッサーシープの魔石を渡した。


「【マナ・ドレイン】」ディーネがそう唱えると、魔石から魔素が流れ出しディーネの手のひらに吸収され消えてしまった。


 ディーネは見えてきたレッサービーに【スプラッシュアロー】を放った。しかも、三匹を連続で仕留めたのだ。


「装填式と同じ事が!」


 驚く僕の事など気にした風もなく、ディーネはキャロ達と一緒に蜂蜜の回収に行ってしまった。


 どうやら白狼の魔素を吸収した事で、僕の精霊達は目を見張るような進化を遂げたようだった。


◻ ◼ ◻


 一層の草原エリアの風景を見ると何時も、初めてダンジョンに降りた日を思い出す。


 僕はここの景色がとても好きだ。風が優しく吹き、草原の草花が揺れる姿を眺めながら集団の一番後ろ歩いた。


 皆は楽しそうにお喋りしながら前を歩いている。ルピナスの背中に股がって空を飛んでいるニースを羨ましそうにキャロが見ていて……


「ルピナス、もっと大きくなったらキャロも乗せてね」と言っているキャロに「ピピッ」とルピナスが答えていた。


 (そんなに大きくなったら小鳥ではなく怪鳥だな……)


 僕はそんな他愛のない事を考えながらも、先程のキャロ達とサラの会話を思い出していた。


 どうして危険な三層に来たのか尋ねたサラに、「二人が心配だったから」と、皆が答えたのだった。


 本当に危険な状況だった。皆をそんな危険に巻き込んだ事を申し訳なく思う一方、心配だからというだけで危険な場所にわざわざ様子を見に来てくれた皆の気持ちがとても嬉しかった。


 僕がガザフへ向かう為にコルネ村を出た日、僕の心の中はこれから一人でなんとか生きていかなければならないという思いで一杯だった。


 だが実際は沢山の大切な出逢いと助けに支えられたからこそ、何とかやってこれたのだ。


 僕は右手を空にかざして一つ羽の紋章を眺めた。


「じいちゃん、一つ羽の探索者になったよ。まだまだ、じいちゃんのいた場所には遠いね……じいちゃんが僕が三層以降に降りる事をどう思うのか、今となっては分からないけど……これからもこの第二の故郷で皆を助け、そして助けられながら何とかやっていくよ」


 僕はそう呟くと前を歩く皆の所に走り寄り、共に地上を目指し歩き出したのだった。


 これにて第一部が完結となります。十層の試練後にしようかと考えていましたが、主人公にとって三層の安全圏を超える事が、ある意味ターニングポイントかなと考えこういう形になりました。第二部は中級探索者編となります。エルフィーデ女王国の来訪の目的など話が広げられたらなと考えています。

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