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110/213

110:白狼3

 突然その場に現れたキャロ達に驚いた僕だったが、いつまでも驚いてばかりではいられなかった。


 白狼はその場で暫く呻き声のような物をあげていたが、その内、敵対心を自分の体を傷付けたもの達に向けるのは間違いないだろう。


「フィーネ! キャロ達に白狼の敵対心が移るかもしれない」


 僕はそう叫んだ後、ディーネとルピナスにキャロ達と合流するよう指示した。動ける戦力を集中するためだった。


 ルピナスは直ぐにキャロ達の元に飛んでいった。しかし、ディーネは、動こうとせず「精霊石、貸す」と言って手を差し出してきた。


 僕は不思議に思ったが、普段なら自己主張などしないディーネがそんな事を言うのは何か事情があるのかもしれないと思い、素直に精霊石を取り出し手渡した。


 精霊石を受け取ったディーネは、急いでキャロ達の元に駆けていった。


◻ ◼ ◻


 最初の一撃で右目を潰すという大戦果を挙げたキャロだったが、実際は動けなくなっているように見える二人を見て、慌ててサラから借りたままだった精霊弓を使って白狼の顔を射てしまったのだ。


「仕方なかったのでしょうけど……不味いわね」シルフィーが白狼を見てそう呟いた。


「サラさんとユーリさんが苦戦するような相手なのよ! 私達じゃ一溜まりもないんじゃない?」普段、勝ち気なリーゼが不安そうに言う。


「お二人は大丈夫でしょうか?」


 勝手に動いてしまい、シルフィーに注意され反省しているキャロを抱き締めながらルナが二人の姿を見た。


「本当は逃げるべきだと思うんだけど……シルフィー、あの敵の攻撃を僕達で止められると思う?」冷静なティムの顔色も悪かった。


「私とキャロで【ウィンドウォール】を重ね掛けして盾で受ければギリギリかしら……でも狼って動きが速いでしょ盾以外を狙われると危険ね」


 ユーリのように盾やバゼラードで弾く訓練をした事もない三人に、素早い動きの相手に対応がどこまで追い付くのか疑問だった。


 三人が大盾を持っていて、受け持ち範囲が狭い事だけが救いだった。


「ピピッ」ルピナスが飛んで来てシルフィーの側にやって来た。


「そう……フィーネもこっちに来てくれるの……それならこっちに敵を引き付けるべきね。その内、サラとユーリも回復するでしょう」


 シルフィーが彼方にいる白狼を見ると、さっきまで唸り声を上げていたのだが、こちらを見ると猛然と向かってきた。


「皆、守備体形! キャロ【ウィンドウォール】いくわよ! こうなるならキャロにもっと射たせとくべきだったかも」最後は呟きになったシルフィーの声に「うん!」キャロが手を広げて魔力循環を始めた。


 シルフィーは、三人が各々の分担場所で盾を構え、キャロが【ウィンドウォール】を周囲に張るのを確認した。そして、自らもそれを補強するように【ウィンドウォール】を展開した。


「ピッ」ルピナスが上空に舞い上がり、白狼の元に飛んでいく。


 サラの側にいたフィーネも、白狼が標的を変えた事を確認して、サラの元を離れ射程ギリギリから【風刃】を放ちながら白狼を追いかけている。


 サラの黒魔弓での長距離の射撃が行われ、ルピナスも上空から【風刃】を放っている。


 回避で足止めをされた白狼が怒りの咆哮を上げながら【遠吠え】を行い魔法攻撃を無効化した後、強行突破で突っ込んできた。


 頭から突撃してきた白狼の攻撃は強力だったが、怒りで半狂乱状態の為か動きに知性を感じられず予測しやすかったので、三人は盾を並べて最初の突撃を無事に受け止めた。

 

 無謀とも取れる強力な突撃を白狼は繰り返したが、合流したフィーネが【ウィンドウォール】を重ね掛けした事で、強力な風の魔力に阻まれた白狼の攻撃は全て弾かれていた。


 半狂乱状態の白狼の身体から吹き出す魔力の噴出は凄まじく、サラとルピナスの魔法攻撃が当たっているのに効果がなかった。


 だが、半狂乱だった白狼も何度も攻撃を弾かれた事で、多少冷静さを取り戻したようだった。


 攻撃を辞め後ろに下がると、例の奇妙な唸り声をあげ始めた。


「雷撃がくるわ~、キャロ地面に【ウィンドウォール】お願いね~」


 フィーネから指示を受け、キャロが地面に【ウィンドウォール】を張った。


 だが、白狼から雷撃が放たれる事は無かった……


 白狼から雷撃が放たれようとした瞬間……強大な魔力を含んだ、魔法の矢が白狼の喉付近に突き刺さったのだった。

 


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