010:猪鹿亭4
翌朝の目覚めはとても爽やかだった。
昨日の夜の重苦しい気分はすっかり晴れ、身体も軽かった。「じいちゃん、強く生きるよ……」僕は、そう呟いた。
寝台の側の窓からは、昨晩は暗くてよく見えなかった、外の風景がよくみえた。
「へー、思ってたより森広いな。外壁まで続いてるんだ……右にみえる建物は……領主様の邸宅かな?」
昨日森の向こうに見えた、柵のある放牧場は建物の敷地かもしれない。
「おや、変わった木だな……不思議な雰囲気だ」
僕は庭に一本だけ生えている、その不思議な若木を暫く眺めていたが……
「あっ、いけないそろそろ、朝食を食べて、ギルドにいかなきゃ」僕は慌てて階段を下りていった。
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一階の食堂では、朝食の準備をするカロさんの姿が見えた。僕が挨拶してカウンター席に座ると、
「おはよう、昨日は良く眠れた?」
そう言って朝食の麦粥を差し出してくれた。緑豆と干し肉が入っている、結構贅沢なお粥だった。
「美味しそうです、ありがとうございます。おかげさまで良く眠れました」香りを堪能しながら僕が、食べ始めると……
「それは良かった。うちの朝は、いつもこれだよ。煮物の残りの出し汁を使ってるから身体にいいよ」そう言って厨房に戻って行った。
僕は夢中で食事をしていた。朝食は結構な量だけどお粥なのでとても食べやすい。
格安で泊めてもらい、こんな朝食付きだと、なんだか罪悪感が湧いてくるようだ……
パタンとドアの音がしてラナさんが奥の部屋から現れた。「あら、早いのね……その顔色だと良く眠れた見たいね、とても元気そうに見えるわよ」
初めて会った時より、若干ラナさんの口調は砕けたものになってきたように思う。
僕もお客というより、下宿人のような気持ちだったので、親しみが増したような気がして気分がよかった。
「今日はこれから、探索者ギルドに向かうので元気だしていかないと」自分を励ますように頷いて答えた。
「あら、探索者ギルドに何かご用かしら?」と不思議そうな表情のラナさんに、なんだか会話が噛み合わない気がしたが……
「今日、探索者ギルドで登録して、探索者になるんです!」妙に感じる不安感を押さえながら元気にこたえた。
「ええっ‼」ラナさんに物凄く驚かれてしまった…….
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僕は昨日来た道を逆戻りしながら、トボトボ歩いていた。「じいちゃん、強く生きるよ」ちょっと違う意味を込めて、呟いた……
出かけに見送ってくれたラナさんの「いってらっしゃい、危ない事しないようにね!」という見送りの挨拶に
「はい、気を付けます!」と元気に答えながらも、(すいません……ダンジョン入るので、少し危ないです……) すこし、ダメージも受けていた。
それでも街の中央通りに差し掛かり、活気のある商店を見ていると気分も切り替わり、村にいる時から興味があった探索者ギルドを楽しみにする余裕も生まれてきた。
中央通りを北に進むと突き当たりに、その巨大な建物はあった。
想像を越えた規模の建物に若干怯えながら、僕は、その広い入口に向かって歩きだした。




