↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
叛天サクリファイス ~鬼狩り裏譚~【第2部更新中!】  作者: 雨宮ソウスケ
第2部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/73

第八章 その絆は幾度でも②

 ――ドゴンッ!

 跳躍した悠樹の『前蹴り(ビッグブーツ)』が、紅騎士の胸板に炸裂した!

 体格で勝る紅騎士だが、竜人と化した悠樹の体格もまた人のサイズを軽く超える。紅騎士は大きく吹き飛ばされた。

 が、即座にメイスを地に突き立てる。

 ズザザザッと土煙を上げて、メイスと両足で勢いを殺す紅騎士。

 悠樹はその隙を見逃さない。

 無防備になった首を『剛腕薙ぎ(ラリアット)』で刈り取った!

 丸太のような剛腕による一撃だった。

 グルングルン、と冗談のような勢いで縦に回転しながら、紅騎士の巨躯は近くの木に叩きつけられた。その木に背中を預けて棒立ちとなる。

 悠樹は間髪入れずに跳躍した。

 狙いは紅騎士のあご。砲弾のような速度の『膝蹴りシャイニング・ウィザード』を繰り出した。

 しかし、それは左手で受け止められる。

 背中の木は衝撃で粉砕されるが、紅騎士自身に負傷はない。竜人の膝を握ったまま、片手で頭上へと抱え上げて地面に叩きつける!

 地面には亀裂が奔り、背中から叩きつけられた悠樹の体が反動で宙に浮く。紅騎士は悠樹の左の足首を掴むと飛翔した。


 黒い六翼を羽ばたかせて、凄まじい速度で移動する。

 体感では音速に近いかもしれない。

 景色が瞬く間に移り変わり、森からビル街へと移った。

 すでに学校の裏山ではない。風倉市の市街区だ。

 大きなビル群が並ぶオフィス街である。


(――くそッ! そういことか!)


 敵に足首を掴まれた状態で、悠樹は舌打ちした。

 今回は由良との分断を考えていないのかと思ったが、たった十数秒でこんなところまで移動できるのなら、わざわざスタート位置を変える必要はないということか。

 余計だった力を温存した分、戦闘に力を割いているのである。


(やっぱり、こいつら考えて動いてる)


 知性があるのかは分からないが、戦術を組めるのは厄介だ。

 戦術や謀略をする敵が、どれほど恐ろしいかは妖鬼で思い知っている。

 いずれにせよ、いつもまでもこの体制は不利だった。

 ――ボボボッ!

 悠樹はアギトから炎を溢れ出させた。

 そして、

 ――ゴウッ!

 アギトから炎槍を撃ち出した!

 それは悠樹を掴む紅騎士の左腕に直撃した。業火で燃え上がる左腕。流石に大きなダメージを受けたか、紅騎士は悠樹の足首を離した。

 だが、それだけでは終わらない。宙空で手を離されて落下し始める悠樹に対し、紅騎士は黒翼を羽ばたかせて大きく旋回。接近と同時にメイスを振るった!

 落下中では回避も出来ない。悠樹は両腕を交差して防御の構えを取った。

 直後、

 ――ズシンッ!

 重い衝撃が竜人の両腕に奔る!

 悠樹はビルの一つへと弾き飛ばされた!

 竜人の巨体がビルの窓を砕き、壁を砕き、ビルそのものを貫いていく。地上のアスファルトまで一直線だ。道路に叩きつけられ、飛び石のように竜人の体は跳ねる。

 アスファルトに幾度も亀裂が奔る。


(………ぐッ!)


 ようやく勢いが収まり、悠樹は片膝をついて体勢を整える。

 空を見上げると、そこには黒い六翼を大きく広げた紅騎士の姿があった。炎槍の直撃によって左腕は損傷しているが、徐々に復元しつつある。


(やっぱり強い。というより)


 ――さらに強くなっている。

 以前なら、至近距離からの炎槍の直撃ならば、左腕を吹き飛ばすことも出来たはずだ。

 今の一撃も重い。完全に防御はしたのに、両腕が強く痺れていた。

 頑強さも膂力も、以前よりも明らかに進化していた。


(こいつらが強くなる理屈は分らない。けど、出し惜しみしていたら、由良が合流してくれる前にやられてしまいかねない)


 悠樹は、ギリと拳を強く固めた。

 自分が倒れれば、由良もまた殺されるということだ。

 それだけは断じて許容できなかった。

 悠樹は大きく息を吐いた。

 そうして、



『《黄金魄(おうごんはく)》招来……――《飛天(ひてん)黒竜(こくりゅう)》』



 そう呟くと同時に黄金の勾玉が現れる。それが竜人の胸部へと消えると、膨大な銀霊布が現れた。銀霊布は竜人の体を覆うと、その姿を変化させていく。

 長い尾と巨大な翼。そして鎌首を持つ黒竜の姿へと変化したのだ。


 竜人を上回る巨躯に、自在に飛行する能力。


 悠樹の切り札の一つである。

 早々にこれを使わなければ、押し切られてしまうと悠樹は感じていた。

 黒竜と化した悠樹は、翼を大きく広げた。

 ゆっくりと羽ばたかせて、ひしゃげた脚が地から浮いていく。

 紅騎士は何もしない。

 黒竜が同じ高さに辿り着くまで静かに待っていた。

 負傷した左腕が、完全に復元するのを待っているのかもしれない。


(感情らしきものが見えた方がやりやすいんだけどな)


 こいつらと対峙するたび、悠樹はそう思う。

 無機質な敵は本当に厄介だった。その上、自動で負傷を復元させていくのだから、攻撃が通じているのか全く分からない。


(復元が出来ないほどの大きなダメージを一気に与えるしかないか)


 そこまでして、ようやく撃退できる。

 それだけが悠樹たちが生き延びる唯一の方法だ。

 黒竜は大きく息を吸った。

 胸部が膨れ上がる。アギトからは炎が溢れ出した。

 そして、

 ――ゴウッ!

 竜人の時とは比にならない炎槍を撃ち出した!

 流石に直撃はまずいと判断したか、紅騎士は飛翔して回避する。代わりに後方のビルが炎槍の直撃を受けて撃ち抜かれた。

 ビルの壁面に、高熱で崩れる大きな穴が穿たれた。

 黒竜はゴフウっと熱い息を吐いた。

 そうして、


『……さて』


 大きな翼を羽ばたかせて、黒竜は告げる。


『ここから先は、大火力で行かせてもらおうか』








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。