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鬼狩り裏譚 異形を纏う少年は勝ち続け、運命に叛逆す【第2部更新中!】  作者: 雨宮ソウスケ
第2部

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第五章 特別授業②

 一方、その頃。

 1年1組の教室では同じように作戦会議の時間に入っていた。

 2組同様に仲の良いメンバーで集まり、談笑交じりの会話に興じている。


 そんな中で、沙夜は少し浮いていた。

 別に、以前の翔子のように孤立している訳ではない。沙夜はぶっきらぼうに見えても根は穏やかで優しく、クラスメイトにも受け入れられていた。

 ただ、今回のレクリエーションは模擬戦が前提なのだ。このたった一週間で沙夜は逸脱した実力を見せていた。そのため、何とも話しかけづらい空気になっていた。

 石神家の砂塵姫。まさに戦闘のプロだ。そんな彼女に的外れな意見を言って、気まずいことにならないかと考え、ほとんどのクラスメイトの腰が引けていたのだ。


(やれやれじゃな)


 そんな様子を見て、由良は苦笑を浮かべた。

 仮にもレクリエーションなのである。親交を深めるはずが、腰が引けて空気が悪くなっては本末転倒だった。


(だが、好都合でもあるか)


 由良は立ち上がり、沙夜の席に向かう。


「石神。そなたはどう戦略を立てる?」


 そして由良は沙夜に話しかけた。

 沙夜は座ったまま、由良の方に目をやった。

 沙夜が少し考え、口を開こうとした時、


「それは私も気になるな」


 別の少女の声が割り込んできた。

 同じくクラスメイトである白藤緋雨の声だった。


「白藤か」「白藤さん」


 沙夜と由良は緋雨の方に顔を向けて名前を呼ぶ。由良に少し遅れて、彼女も沙夜の元に訪れていた。初日こそ出鼻をくじかれた感じではあったが、この一週間で何気に緋雨も沙夜とはそれなりに親しくなることに成功しているのだ。結果的にだが、奇しくも同じ目的を持つ由良ともよく話すようになっていた。本人たちも知らないことだが、密かに1組では仲良し美少女三人組とも呼ばれていた。


 ともあれ、緋雨は沙夜を見やり、


「石神。お前は実戦経験もあるんだろう? 今回のはレクリエーションに過ぎないが、大規模な模擬戦でもある。お前ならどんな戦術を組むんだ?」


 腰に手を当てて、改めてそう尋ねてきた。

 沙夜は「……ん」と小首を傾げて、


「別にこれといって戦術はない。私には式神を見つける能力はないから、標的の式神も、妨害する生徒たちも手当たり次第狩るつもり」


「……中々の蛮族っぷりじゃのう」


 由良が苦笑を零して言う。緋雨も「……そうだな」と頬を引きつらせた。

 沙夜は少しだけムッと頬を膨らませて、


「けど仕方がない。接近戦以外は本当に苦手だから。ただ」


 そこで一拍おいて、


「私は悠樹くんと戦えるだけでいい。そしたらきっと楽しい」


「……悠樹とは、2組の『四遠悠樹』か?」


 緋雨があごに指先を当てて反芻する。由良は「ん?」と緋雨を見やり、


「何じゃ? そなた、悠樹を知っておるのか?」


「いや。私も1組なんだぞ。知らないはずがないだろう。鷹宮と御門の《霊賭戦》だってこの目で見ている。1組、2組であいつを知らない生徒はいないんじゃないか?」


 と、大きな胸を支えるように腕を組んで緋雨は言う。


「……ああ、そうじゃったな」由良は遠い目をして嘆息した。


「悠樹の奴め。無駄に目立ちおって……」


「というより、そもそも全校生徒でもだぞ。なにせ、亡くなった鷹宮も含め、お前と御門。四遠は第八階位(トパーズ)の討伐者になるんだぞ。嫌でも有名人だ」


 緋雨の指摘に、由良は「うぐっ」と呻いた。


「……その話は私も聞いた」


 興味深そうに、沙夜も会話に加わってくる。


「元々、私の今回の編入はその事件がきっかけだって聞いている。あなたたちは本当に三王位の一角、第八階位(トパーズ)の妖鬼と戦ったの?」


「……ああ。それに偽りはない」


 流石に由良も表情を険しいものにして返す。


「実力もとんでもなかったが、それ以上にあやつは不快極まる化け物じゃった。それだけに鷹宮の死は今でも悔やまれる」


「……そうだな」緋雨も双眸を細めた。


「鷹宮か。それに神楽坂か。一時期とはいえ、このクラスでは人食いの化け物が人間のフリをして授業を受けていたんだ。あの話には私も正直ゾッとしたな」


 これは緋雨の本音であり、大きな屈辱でもあった。潜入調査のプロである自分が怪物の潜入に気付けなかったのだ。失態以外の何物でもない。


(お屋形さまにはとてもご報告できんな)


 まだお会いできずにいる将来の主君に対しても、そう思う。


「まあ、それはともあれじゃ」


 重い空気になったので、由良が話題を変えた。


「話を戻すぞ。石神。そなたは悠樹と戦いたいそうじゃが」


 そこで由良は自身の胸元に片手を添えて苦笑を浮かべた。


「残念じゃが、悠樹はまず妾を狙ってくるじゃろうな。それは間違いない」


「え? どうして?」


 素朴な疑問として沙夜が尋ねると、


「悠樹は妾のことをよく知っておるからな。はっきり言って、このイベント、妾一人でも勝利は確実じゃぞ」


「ん? ああ。やはりお前は遠距離戦のエキスパートなのか」


 雑談を装いながら、緋雨は少し探りを入れた。


「お前は手の内を見せないからな。その癖にどう見ても容姿は神宮寺家の直系だ」


「むむ。妾が遠距離戦を得意とするのは否定せんが、妾は神宮寺家ではないぞ」


 そんなやり取りをする緋雨と由良。沙夜は、まじまじと二人を見つめて、


「私も鳳さんの素性は気になるけど、今回の模擬戦、悠樹くんが鳳さんを狙ってくるというのは確かなの?」


 そう尋ねる。由良は「うむ」と頷いた。


「少なくとも妾が悠樹の立場ならその一択じゃ。出なければ一方的に敗れてもおかしくない。妾にはそれだけの自負がある」


「……そう」


 沙夜はあごに手をやって考え込む。

 そして、


「ん。決めた」


 改めて由良を見る。


「鳳さん。今回、私はあなたを守ろうと思う」


「なんじゃと?」


 由良は眉をひそめた。緋雨もだ。沙夜は「ん」と頷いて、説明する。


「悠樹くんが鳳さんを狙ってくるのなら、闇雲に探すより接敵しやすいから」


「むむ。確かにそうなるじゃろうが……」


 由良は少し渋面を浮かべつつ、腕を組んだ。

 そして思わずこう告げるのであった。


「そなた。本当に悠樹のことが大好きすぎんか?」










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