表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の靴下が片方ないっ...!!  作者: 三食咖哩
9/29

9足目 キバちゃんと靴下

昇降口で靴を履き替えていると声をかけられた。


「おはようミスターモモ」


「青水か、おはよう。それ呼びにくくないか?」


「少し呼びにくい。変えようかしら」


呼びにくいとは思ってたんだな。


「それはそうと、昨日は大丈夫だったのか?急に飛び出していったーってクララも心配してたぞ?」


「その件ならもう問題ない。申し訳なかった」


「そうか...。1つ聞きたいんだが昨日嗅いだ後のあのリアクションは何だったんだ?」


「正直臭くも何ともなかったけど、盛り上がるかと思って。でもその後のことは...ふむん、私にも分からないの。調べている最中よ」


「その後?何かあったっけ?」


「気にしないでミスター。でも、あなたの靴下を少し研究させてもらったほうがいいかも」


「はぁ?させるわけないだろ。」


何言ってるんだコイツは。

心配して損した、これ以上話していても無駄だ。


「靴下が何故消えているかわかるかも...ってちょっと」


青水が話している最中だったが背を向けて教室へ歩き出す。

教室前まで着いてきて、後ろで何か言っていたがスルーして中へと入った。


ホームルームが始まる前にアレを渡しておこう。


「おはようクララ」


「あ、モモくん。おはヨう!」


「昨日弟がこんな本を学校で借りてきたんだけど...読む?」


カバンの中から出した本を手渡すと、不思議そうに首を傾げながら受け取るクララ。


「ちきゅうのうらがわ?」


「うん、俺らが知ってる地球と全然違うっていうか。オカ研が好きそうな本かなって思ってさ」


「わぁ!ありがとうございマす!休み時間に読んでみまスね!」


喜んでもらえたようでよかった。その後すぐキバちゃんが入ってきてホームルームが始まった。





2限終わり、甘太郎とダラダラ喋っているとクララが勢いよく近づいてきた。


「モモくん!甘太郎くんも!」


「どうしたの?」


「あの本、続きはないんでスか!?」


早速読んでくれたのか。こんなに興奮するほど食いつくとは...。


「続きかぁ、俺も借りてる本だからな...」


「お二人さんよ、あの本ってなんだ?」


こいつ朝ギリギリアウトで来たからいなかったんだっけな。


「昨日クララの好きそうな本を小春が借りてきてな。持ってきたから読んでもらったんだ。」


「なるほどね、どんな本なんだ?」


「『ちきゅうのうらがわ』っていう絵本というか伝記というか...なんかSFみを感じる本?」


「なんで持ってきた本人が疑問形なんだよ」


「いや、読めばわかる。」


「そろそろいいでスか?!」


興奮気味に鼻を鳴らしているクララ。


「あ、話止めちまったか。ごめんよクララちゃん。」


「...確かに2巻に続くって書いてあった気がするけど、小春に聞いてみないと分からないな」


「そうですか...早く地底人の謎をもっと読んでみたかったのでスが... 」


「地底人。」


唐突に出てきた単語にポカンとする甘太郎。

事情の読めない甘太郎のために、実際に読んでもらうことにした。





「地球空洞説か、確かにオカ研好きそうだな!!」


読み終わった甘太郎が笑いながら言う。


「これは大発見かもしれないんデす!地底人がいるとイう!」


目が輝いている...。事実かどうかは置いといても探してやりたいな。


「じゃあ今日帰ったら弟に聞いてみるよ、続きが図書室に揃ってるかもしれないし。」


「先程の話にも出ていましたが、弟さんがいたんでスね?」


クララには話したことなかったっけな。


「そうだよ、小学生なんだ」


「ほほう!オカ研の部員として将来有望でスね」


「最近できた友達に紹介してもらった本らしいんだけどな」


「あ、弟さんの趣味ではなかったんでスね」


「小春ちゃんはあんまりこういうの見なそうだよなぁ。」


体を伸ばしながら苦笑いする甘太郎。よくウチに遊びに来ているので、小春のこともそれなりに知っている。


「確かに自分から手に取ったりはしないかな。でも楽しそうに読んでたよ」


「やはり部員に!」


「クララちゃん、そもそも入ってくる頃にはもう俺ら卒業してるって」


「それもそうでした」


にはは、と笑うクララ。その後も3人で駄弁っているとチャイムの音とともにキバちゃんが教室に入ってきた。


「授業はじめるぞー」


「やべ、キバちゃんだった。菓子食べてるのすぐバレるんだよな」


「そもそも授業中に食うなよ...」


休み時間の終了を惜しむ甘太郎を追い払う。クララは苦笑いで席に戻っていった。





一度始まれば静かなもので、先程までの喧騒はどこへやら。

授業を聞きながらぼーっと前を向いていると、ふとキバちゃんと目が合った。


が、気まずそうな顔をしてすぐに逸らされてしまった。


その後もノートをとりながら前を向いていると度々目が合うが、やはり逸らされる。そもそもこんなに目が合うことさえ普段はないんだけど。


どうしたんだろうと考えているうちにチャイムが鳴る。


「はい終わり。お前らは次で帰れるんだからしっかり授業きいとけよ〜」


はーい、とのんびりした声がまばらに上がる。


「あと百束、ちょっと来い」


えっ。何か変だなとは思ったけど呼び出し...?怒られるようなことしてないよな?


「どんまいモモ!何やらかしたのか後で教えてくれよ!」


「見に覚えがなさすぎるんだけど」


「ほんとかぁ?」


ニヤニヤしながら茶化してくる甘太郎を放置して、キバちゃんの後について廊下に出た。


が、廊下に出ても足は止まらない。どこに行くんだ...?


「あのー先生?どちらまで行かれるんですか?」


「ちょ〜っとついてこい、すぐ済むから」


振り向かずに放つ言葉は少し強張っているように聞こえた。


「は、はい」


とりあえず返事をして後をついて行くと、廊下を歩き、階段を降り...生徒相談室に到着してしまった。


キバちゃんが鍵を開け、先に中へと入る。

入ってドアを閉めると、向かい合わせに用意された椅子に座り、


「とりあえず座ってくれ」


と一言。

言われるまま席に着き、緊張を和らげるために深呼吸する。


「――すみませんでした!」


先手必勝。理由は分からないがとりあえず頭を下げて謝っておくしかない。


頭を上げると、フーっとため息のような深い息をつき、気まずそうな様子で口を開いた。


「...女の子に足を嗅がせていたって話は本当だったってことで...いいんだな?」


「え!!???」


驚きのあまり立ち上がる。心臓に衝撃が走りバクバクと音を立て、脈がこれまでにない程速くなるのを感じる。


「せせせ先生、それは誤解でして!!」


「誤解?... 謝ったのは心当たりがあったからじゃないのか?」


「とりあえず謝罪をしようと思いまして...」


ハァ〜、とため息をつくキバちゃん。


「あのなぁ、呼び出された理由も分からないまま謝るんじゃない」


「すみません...」


うぅ、開幕謝罪は完全に裏目に出てしまった。


「それで?誤解ということは一応やったということでいいのか?」


「えーっと、まぁ、そうなります」


「理由は聞いても問題ないか?その、特殊な性癖...とかの話だったら無理に話さなくてもいいんだが...」


ばつの悪そうな顔のまま尋ねてくる。


「そういうんじゃないです!とりあえず聞いてください...」



これまでの靴下を紛失した昨日までの経緯をかいつまんで話す。先程までとは違う真剣な表情で話を聞いていたキバちゃんが口を開いた。


「ふぅ。この前暗い顔してたのはこれか。こういうのはもっと早く相談してくれ百束。まぁ言いづらかっただろうけど」


「はい...」


「それで、紛失した靴下は一足も見つかってないのか?」


「はい」


「嗅がせたのはただのじゃれあい、靴下の紛失は嫌がらせかどうかの判断もつかない... 」


腕を組んでうーんと唸るキバちゃん。


「とりあえずもうチャイム鳴りそうだから教室もどれ。ちょっと整理させてくれ、また話そう。


「は、はい。失礼しました〜」


そっと立ち上がり指導室を出て扉を閉める。


ついに先生に片靴下連続紛失事件がバレてしまった。あんまり大きい問題にならない方が嬉しいんだけど...。正直恥ずかしいし。


指導室の前で考えているうちに予鈴が鳴ってしまった。


「やべ!」


小走りで廊下を抜け、階段を駆け上がる。


手すりを使い、踊り場を勢いよくターンすると――


――突然、目の前に女の子の顔があらわれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ