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俺の靴下が片方ないっ...!!  作者: 三食咖哩
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28足目 作戦と靴下

甘太郎から聞いた話をもとに、先輩達に相談することを決めた。


個別にKINEでメッセージを送り、放課後に集まってほしいと伝える。


エナトス集合だと番長と鉢合わせそうな気がする、と伝えたところ、間木さんのクラスに集合することになった。



他学年の教室に入るのは初めてで少しドキドキしてしまう。絡まれたりしないようできるだけこっそりと目当ての教室へと急ぐ。


先輩の教室は2-1...。教室の開いたドアから中をのぞき込むと、先日ゲーセンに居た友人たちと一緒に談笑している様子の間木さんを発見。


話を邪魔するのは悪いな...かといって、教室前にじっと立っているのも居心地が悪い。


結論、少し離れた場所にいよう!と教室に背を向けたところで


「モモちゃんお疲れ様~!」


振り返ると、両手を顔の前で振りながら肥田さんが歩いてくるところだった。これは助かった。


「お疲れ様です。」


「どこいっちゃうの?間木ちゃんの教室はここよぉ?」


「まだお友達と話している最中みたいだったので...。」


「あらそうなの。」


今度は肥田さんと一緒にのぞき込んでみると、どうやら視線に気づいたらしい友達の一人がこちらを見た。


「なずな、後輩くん来てるよ。」


その言葉を聞いてサッとこちらを向く間木さん。手を振っているので肥田さんとともに教室へ入る。


「わ。お待たせしました。」


「いえ、今来たところなので大丈夫です。」


「え~デートの待ち合わせみたい、ウケる〜。」


「えへへへ~?」


「もう、茶化さないの。ほら、二人とも遊びに行くんでしょ!」


間木さんが今まで話していた2人を追い払おうとする。前回もそうだったがあしらい方に慣れているので、日常茶飯事なのだろう。


「そうだったそうだった。」


「後輩くんばいば~い!」


そう言ったかと思うと、グニャグニャ流れるように教室を出て行ってしまった。一瞬にして教室が静まり返り、グラウンドの喧騒が聴こえてくるのみだ。

その静寂を破るように肥田さんが口を開く。


「さて、じゃあ早速モモちゃんの話を聞きましょうか?」


コクリと頷き、間木さんの席を中心に各々着席する。



「急に集まってもらってすみません。少し分かったことがあったので、アドバイスをいただきたいと思いまして...。」


「うん、私たちにできることなら。他ならぬ番長ちゃんのためだしね。」


やる気十分といった風に間木さんが言うと、肥田さんも静かに頷いた。


「では...もず、緑化プロジェクトに気乗りしていないように見える理由なんですが――」


「本当にザックリで申し訳ないんですが、思い出が関係しているらしいんです。」


「「思い出?」」


二人の声が重なる。まぁそういう反応になるだろうと予想はしていた。


「はい。」


「他には?何に対する思い出なのか〜、とか。」


「それは...わからないんです。」


「そっかぁ~。」


漠然とした答えに先輩たちも困惑気味。聞いてくれているだけでもありがたいくらいだ。


「昨日一晩考えても分からなかったので、先輩たちの知恵をお借りしようかと...。」


「ちょっと情報が少なすぎるわねぇ。」


「そうですよね...。番長を知っている人がこの学校にいればと思ったんですが、どうやらいないみたいですし。」


「間木ちゃんは何か知らない?」


「う~ん、私の使ってる3個先の駅で降りてるって番長ちゃんが前に言ってた...くらいかな。」


「もうちょっと何か欲しいんだけど...。」


「詳細は不明なんですけど、仲のいい友達がいるみたいです。」


「友達...ともだち...トモダチ...。とすると。」


神妙な面持ちで肥田さんが顔を上げた。


「「はい。」」


思わず俺と間木さんの背筋が伸びる。


「聞き込みしかないわね。」


「「聞き込み。」」


「もしかして隣町で、ってことですか?」


「えぇ、そうよ。」


「間木ちゃんの降りてる駅はどこだったかしら?」


「瓦葺です。」


スマホで路線図を探してみると。


「東金砂から瓦葺。さらにそこから3駅...秋津駅ですかね。」


「秋津...開発の進んでるベッドタウンね。良いところよ。」


「秋津駅の近くに中学校が2つあるみたいです。...どっちが番長ちゃんの出身校かな...。」


「2つとも行ってみるのはどうかしらぁ?」


「それしかなさそうですもんね。いつ行きましょうか?」


「できるだけ早い方がいいわねぇ。明日は日曜だから...月曜日でどうかしら。流石に学校へは入れないから、恐らく校門付近で出待ちになるだろうし。」


そうと決まれば話が早い。


「「わかりました。」」


「じゃあ週明けの放課後、東金砂駅に集合しましょ。各自柿迫ちゃんにはバレないように!」


「「はーい!」」





無事に話がまとまった後、部活もないので先輩2人と話しながら昇降口へと向かっていると。


ヴーッ、ヴッヴッとスマホがバイブ通知で震える。連続で通知が来ているので震えっぱなしだ。


甘太郎か?うるさいな...と思いながら先輩達の少し後ろに下がりスマホを確認すると、


「まだ?」「百束」「ねぇ」「忘れてないよね?」「ねぇ」「ねぇ」「ねぇ」「ねぇ」...


圧の強すぎるトーク画面が現れる。


「あ。」


やばい、口切への連絡をすっかり忘れていた。


「あ。じゃないわよ!」


シュポ、という音とともに新しくトークが送信されてくる。


あたりを見回すと、階段の陰からこちらをじっとりと睨みつけている口切を見つけた。


「すまん、これから向かうから!」


そうKINEで返すと、口切は上の階へと静かに上がっていった。


「百束くん?どうしたの?」


立ち止まってスマホを見ていた俺を振り返り、首をかしげる間木さん。


「すみません、ちょっと教室に忘れ物しちゃいました。先に帰ってもらって大丈夫です。」


「そう?じゃあまた明日ね。」


「気をつけて帰るのよぉ。」


チュバッと飛ばされた肥田さんの投げキッスを避け、また明日!と返した。



階段を上がっていくと、3階の踊り場に口切が立っていた。どうやら外を眺めているようだ。昼時の濃く青い空と調和して、整った横顔が普段より少しだけ大人びて見える。


「何してるんだ?今日はここで渡していいのか?」


「バカ、いいわけないでしょ。」


そういうとくるりと身体を翻し、また階段を降り始めてしまった。


「やっぱり今日はエナトスで貰うことにする。」


もう怒ってはいないようだが、表情が見えなかったので大人しく要求に従う。


「オッケー。」


先ほど別れたばかりの先輩がいないかどうか心配しながら、ゆっくりと進む口切の後ろを追い、エナトスへと向かった。





「あら~めぐるちゃん百束君。おかえり~。」


「ただいま戻りました。」


「ただいまです。」


家以外で「おかえり」といわれるのが少しむず痒い、が悪くはないなぁ。


「どうしたの~?今日はバイトじゃないと思ったけど?」


「ちょっと靴下で...」


言ってる意味は自分でも分からないが、理解してくれたようで頷く店長さん。


「もう百束君も従業員なんだから。奥の部屋は家みたいに使っていいからね~。」


「はぁ、ありがとうございます。」


番長は...今日は来ていなかったようだ。店内を見回してホッとする。


「早く行きましょ。」



店の奥へと進み、北欧風のリビングに入る。


「あぁ~疲れた。」


靴下を脱ごうとソファに座ろうとしたところで、昨日から座ってみたかった大きいクッションが目に入る。

確か『あらゆる生物をダメにする』がウリのクッションだ。確かCMでは成人男性が座って埋もれていたが、あれは演出なんだろうか。


「失礼しま~す。」


好奇心に負けてそっと座ると、見た目とCMで得た情報以上に柔らかかった。座った瞬間に身体が沈み込む感触に思わず感動してしまう。


「おぉ~。すげぇ~。」


「何一人でぶつぶつ言ってんの。早く靴下脱いで。」


口切の存在を忘れていた。そういえば靴下を脱ぐために座ろうとしたんだったな。


「はいはーい。」


身体が沈み込んでしまうので、なんとか足を上げて靴下を脱ぐ。


「うおっ、バランスとるのも難しいな。」


俺がモタモタしていたせいか、ため息をつきながら例のセットを持ち近づいてくる口切。


「百束?何やって、きゃあ?!」


ラグで足を滑らせたのか、悲鳴とともに口切が前のめりに倒れ込んでくる。


が、クッションに埋もれているため何もできない。茫然と見つめるしかないんだ、すまん口切。


トングと袋を放さなかったせいでロクに受け身を取れなかったためか、べしゃりと盛大に転んだ。間抜けな体勢で足元に突っ伏している。


「いったぁ~~〜い...。」


「持ってるもの手放さないから。」


「もう!元はといえばあん...!」


顔を上げた先には俺のつま先。


「あん?」


「たの...。」


その状況を理解できなかったのか、口切の動きは完全に停止しカチリと固まってしまった。


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