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第1話 異世界召喚からの追放

「なんだこのステータスは!? まともに刀も使えない無能など必要ない。貴様を追放する!」


 自分の身に何が起こっているのか理解できていない僕は呆然と立ち尽くす。

 学校からの帰宅途中いつもの道路が光を放ち、『500年が経過し、勇者の召喚に成功しました』という謎の声を聞き終えるとこの場所に立っていた。


「ようこそ、勇者様。早速ですが、お名前をお聞かせください」


「は、はい。佐山さやま 冴也さやです」


「サヤ様ですね。こちらへお越し下さい」


 石造りの祭壇を中心に司祭風の男たちが何らかの呪文を唱え続けている。

 目の前にいる巫女装束の女性に手を引かれると自分が魔方陣の中に立っていたのだと知った。


「この度は我らの呼びかけに応じて下さり、ありがとうございます。早速ですが、サヤ様には能力測定を受けていただきます」


 促されるままに置かれた水晶に手をかざすとホログラムのように浮かび上がった文字を見て女性は目をぱちくりさせた。

 何度見直しても結果は変わらず、それが良いのか悪いのか僕には分からない。


 称号:『さやの勇者』

 スキル:『作成』、『契約』


 この結果を見て一番大きな椅子に座る太った男が僕に言い放った言葉こそ、先ほどの残酷なものだった。

 右往左往する僕に追い打ちをかけるように別の女性が歓喜の声を上げる。


「ゼィニク様、こちらをご覧下さい! このお方こそ、まさしく我々の待ち望んだ勇者様です!」


 隣に立っている少年を取り囲み、巫女装束の女性も司祭風の男性も拍手している。

 ゼィニクと呼ばれた太った男も椅子から立ち上がり、ニチャと笑っていた。


 僕もつられて浮かび上がったホログラムを見上げると『つるぎの勇者』と書かれていた。


 腕を組んでいる少年は長髪で切れ長の目をしており、顔は整っている。

 年齢は僕と同じくらいだから高校生だろう。

 特に驚くことも、おごることもなく、それが当然だとでも言うように仁王立ちしていた。


 気づくと僕を案内していた女性もそちらへ駆け寄り、同じように歓声を上げている。

 一人残された僕は召喚時と同じように呆然と立ち尽くすことしかできなかった。


 ダメだ。このままじゃ、放置される。

 僕はゼィニクと呼ばれた男に向かって叫んだ。


「ま、待ってください! 訳も分からずこんな所に連れてこられて、いきなり追放だなんてあんまりです! 用がないなら僕を元の場所へ返して下さい!」


「やかましいぞ無能。そんな簡単に元の世界へ戻れるものか。なんせ、500年ぶりの勇者召喚の儀式だからな。死なないように気をつけながら生きろ」


「そんな無茶苦茶な!? 僕だって勇者なんですよね!?」


「そうだったな。余興にはちょうどいい。この刀を抜いてみせろ」


 ゼィニクは祭壇の隅に置かれた岩に突き刺さっている刀を指さす。


「あれは!? これまで誰も引き抜けなかったという伝説の刀!?」


 僕を案内した女性が両手で口元を覆いながら目を見開いて叫んだ。

 挑発的な視線と期待の混じった視線を多方向から受けつつ、僕はゆっくりと歩き出して岩の前に立つ。

 じっとりと汗のにじんだ手で刀の柄を握り締めた。

 途端、高い天井から雷鳴が鳴り響き、稲妻がはしる。


「うわっ!?」


 情けなくも驚いて尻餅をついた僕は恥ずかしさを押し殺しながら立ち上がり、全力で刀を引っ張ったがびくともしない。

 手汗で滑っている可能性もあるけど、そんな簡単な話ではなく強い抵抗感が指先から伝わってきた。


「ほら見ろ。やっぱり無能じゃないか。つるぎの勇者よ、貴殿はどうだ?」


 長髪の少年はうつむく僕を鼻で笑ってから通り過ぎて、左手をポケットにつっこんだまま右手で刀の柄を持った。

 周囲が騒ぎ立てる中、彼は興味なさげに刀を引き抜いてしまった。

 とても岩に刺さっていたとは思えないほどの輝かしさを放つ刀身は見る者を魅了する。

 僕も息を呑んでその光景を眺めていた。


「素晴らしい! 閃刀せんとう雷覇らいは』を抜くとは、やはり貴殿が我々の求めた勇者だ! 名をなんという?」


嘉多かた 長利ながりだ」


「ナガリ殿、それら十本の刀を収集する任務に就いて貰いたい。詳細は屋敷へ移動してから説明しよう」


 ゼィニクはナガリと名乗る勇者とともに出口へ向かって歩き出し、巫女装束の女性たちと司祭風の男性たちが彼らに続く。


「ハハハハハッ! さっさと奴を追い出せ」


 司祭風の男性二人に腕を掴まれ、引きずられるように彼らと反対側の出口から放り出される。

 着ていた制服は土に汚れ、手のひらからは小さく出血していた。


「そんな……」


 絶望感に打ちひしがれても手を差し伸べてくれる人はいない。

 僕は見知らぬ土地で一人になってしまった。

 勝手に召喚されて、無能と罵られて、追放された。


 元の世界でも運が良い方ではなかったけど、ここまで不遇な目に遭ったことはない。

 なんだか、だんだん腹が立ってきた。


 こうなったらヤケクソだ。

 絶対に生き延びて、あの丸々と太った男とナガリを見返してやる。

 そして、必ず元の世界に帰ると心に誓った。

当作品を見つけていただき、ありがとうございます。


・面白くなりそう!

・更新、頑張れ!


などと思って下されば、ぜひとも画面下の☆☆☆☆☆から評価をいただけると最高の応援になります。

ブックマークも大歓迎です!


10万文字程度で完結するので、最後までよろしくお願いします!

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