『03』/09
そして、焦点は再び――
・ ・ ・ ・ ・ ・
「――数年ぶりにあった相手に、随分と冷たい態度だと思いますけど?」
アウルにチクチクやられている、俺の所に戻る……
「……塩対応だったのは認めるが、何でお前付いて来てるんだよ……」
このバカ、あいつの傍に居ろってのに……
「てか仮面つけてても、服装が『メイド』じゃ意味無いだろこの駄『メイデン』」
「そもそも、御存知の通り生粋の『メイデン』とも違いますがね。
何ですか? シオと服装変更しておけば良かったですか?」
其処じゃない――まあ、いいや、お元気そうで何より。
「……むしろ、お前が何故付いて来てるんだ――
偵察と露払い必要そうなとこ調べに来ただけだってのに……
そも、三層の前の階段近辺にキャンプ構えてるから、何もする事無いぞ?」
「そう言うなよ、イゾウさんや。弟子取ったとか言うから、非常に面白いモノが見れる様な気がしてな」
「……あの僅かな関わり合いで言うのもどうかと思うがよ――数年で更に根性が黒くなってねえか、お前……?」
ああ、成るとも――良くも悪くも、散々な目を見たからな!!
「てか、弟子って言っても、別に何も教えてねえしなぁ……」
「え? バルとか、一緒に行動しててそれは通らないでしょ」
「『教えなくても勝手に冒険者成る!!』とか言っててだな。
最初はまあ、危なっかしくて仕方なかったから、多少は面倒見てたが――」
「ああ、イゾウさん、無駄に面倒見良いですからね……
だからってあっちゃこっちゃから何人も孤児やら引き連れてくるのはどうかと……」
……どこの『グラード財団』だよ。『聖闘士』かよ。何のマキアに備えてるってんだよ。
「いやもう――なんつうかよ――多分エルス辺りの事だと思うんだが――」
「うん?」
「前に厭な応対された、役人とか商人とかによ――
『『四位』様は良い部下を御迎えに成られた様で』とか、厭そうに言われたらよぅ……
なんつうかもう、くくく、引っ込みが付かなくなってだな――ひゃひゃひゃ!!」
「……ベルさんに殴殺されかけてもこれだもんなぁ……」
あー、でも、まあ、分かるわ。
あからさま下に見た対応した相手が、ギリギリ言いながら上目に見てくるの――
まあ、何と言うか――そこそこ楽しいよね(黒)。
「――あ、兄貴、お疲れ」
「――オス、師匠」
お――獣人じゃん、珍しい。
東方には割りと居たけど、人間とエルフが主軸っぽい、大陸側にも居るとは思わなかった――
――あ、いや、草時代に見たから、居ない訳でも無いな。
……そもそもで、そんなにこっちに居なかったしな、俺。
そして――デカイ――ナニガトハイエナイ。
「おう、バル、ルーリル。状況は?」
「いやー、正直あまり良くねえと思う。三層は、エライ事に成ってるはずだぜ」
「『吠え声』の間隔ガ、短くなっていル――覚醒の頻度が大きくなっている様ダ」
やっぱりか、と苦った顔のイゾウ。
「――て事は、だ――『群れ』も動いてるか?」
「アレ自体は『大回廊』とか『中央ホール』辺りうろついてるだけだろうけど、他が圧迫されてるな。
前の調査で二層には出てなかった『羽付き型』が、少ないながら上がって来たりしてるし」
「大きナ群れの移動ハまだ無いが――始末を付けナければ、最後にハ――」
「……もう、各国に軍隊の派遣要請した方が良いかもなぁ……つって、素直に出してくれるとこなんて――」
――いかん。体が思春期迎えたせいか、無駄にお盛んになって困るな……それどころじゃないんだが……
「――ところで。そっちの人は――」
とっ――ガァンっ!!
「え、ちょ、ルーリルお前――え!? 何やってんの!?」
――あの、ごめんなさい獣人お姉さん?
色々見てたのは謝りますから、無言で槍を撃ち付けないで貰えるかな?
「聞いテイた以上に変わった風合イ――その癖、その身ごナし――お前ガ、ジン=ストラテラ、だナ?」
「――『|そのとおりでございます(イグザクトリー)』」
ここでキメキメのジョジョ立ち――この世界でも変人は遠巻きに見るものと学んだんだぞぉ――
さあ、さあさあ、ヒけ、ヒクがいい、ドン引きして槍を――
「一合、付き合っテ貰うゾ!!」
――収まらない!?
「あー……すまん、ジン、ちょっと付き合ってやってくれ」
何でだよ!? めっちゃ瞳孔細くなってるじゃんこの姉ちゃん!?
親の敵と対峙した奴でも、此処まで興奮してねえぞ!?
「武者修行中なんですよねぇ、ルーリルさんは……有体に言って『決闘狂』です」
「そういうのは早く、つか、あらかじめ言えバカ!! 面白い者見る筈が、面白い者になってるじゃんか!?」
「いや、最初から――むしろ、酷く成りましたね」
「心外――
びゅおっ――ビュビュビュッ!!
ちょちょちょ、短槍なの含めても連突き速過ぎるだろ!!」
おまけに槍なのか疑わしい構造の武器だし!! 刃が広過ぎるって!!
「――身のこなシは、師匠に聞いた通り――だが、これをかわせるカ!?」
とっ――とっ――とっとっとっ!!
ちょっと待てイゾウ、なにこの獣、『縮地』しだしてんですけど……
「て――手合わせで其処までやんなおいぃ!!」
「まあまあ、まて、バル――まだ良いよな? ジン?」
む、むかつく――別に煽ってる気は無いんだろうけど、その困った笑顔は逆にムカつくぞ、この『保父』!!
「――速――いや、違う――緩急と幻術の重ね合いか?」
「――知れてモ」「かわせないなら」「意味は無イ」
何これ、かっこいい……高速と低速が継ぎ目無く動くとか、何この御庭番の御頭……
――じゃねえ、真剣にやんねえと死ぬな、これは(汗)
「――てめ、イゾウ――俺を試す気だったな?」
「まあ――どの位に成ったのか、知りたいと思うのは当然だろ?」
へー、ほー、ふーん――自分は隠し玉満載なのに、こっちは知ろうってか。
「何処ヲ」「――見ていル」
槍の穂先が鋭く迫る――おう、顔面狙ってくるとか、お優しい事で。
「『地滑蔦』」
「舐めるナ!!」
蔦に足を滑らせながらも、槍を地面に立てて更に跳ぶ――怖いねー、なんて動きだ。
――だが予測済みだ。
「『絶叫根災』――【有意転変】――『酔蔓』」
――ボフンっ
「ぶはっ!?」
跳んだ着地点にも何かある、と槍を突き出したまでは良いが、それが破裂するとは思わなかった様だな――
ケケケ、騙し合いで『武芸者』キャラが俺に張り合うとか、まだまだよぅ。
「なん――なんラ――こノ――ケム――」
え、こっわ。並みの獣人ならダルーンって成る程のマタタビのお仲間だぞ?
なのに、ふらふらしながらもまだ歩いてるよこの子――!?
とん。
「それまで、だ、ルーリル――悪かったな、ジン」
「――どういう事だよ」
「いや、一人で挑むって言って聞かねえんだもん、こいつ……」
……こいつ、俺を出汁に……というか……
――ヒュッ
「――『何』に? 一人で?」
「あだだだ、やめ、蔦で髪を引っ張るな、禿げる禿げる!!」
――ォォォォ――
……階段の方から……
「――おい、アウル。これが――ちらっとお前の言ってた奴か?」
来て顔合わせて早々、『確認を要する反応が』とか言ってたアレか?
「……聞こえましたよね」
「――あ? ちょいまて、アウル。お前も把握してるって事は――『アレ』、何だ?」
「……イゾウさん、現物拝んだんでしょ? なんに見えました?」
「何にって――」
――ァァァァァ――
「……手出し無用の危険物件……」
「『印象』は聞いてませんが」
「――すげえ顔で静かに素早く歩いて来て、『撤収、撤収!!』って」
「……判断は正常ですけど、そんな慌てふためいたんですか、このヒト?」
「ああ、まあ――兄貴でも其処まで焦る事あるんだな、とは思ったな。
事態報告求めてるギルドの人らに、『死んで報告したけりゃ好きにしろ、邪魔』って蹴ってたし」
「……正直、御国言葉ガ、サっぱリ理解出来なカった」
あらいやだ、マジですか? ――くく、ひきつってまあ――
判断が正解だろうと、『弟子』に格好悪いとこは、そら見られたくないわな……
「――まあ、失態は誰にでもあるわな――んで、何だったんだ?」
「――わかったよ、『竜』だよ!! ありゃ『竜』だった!!」
――おーい、聞いたか、みんな……第三層に『竜』て、なんだよこの状況……
・ ・ ・ ・ ・ ・
「第一、第二の調査の時には、確認されてなかったんだよ。あんな響いてる声自体がな」
三層目の通路を、ランタンを掲げながら歩くイゾウ、その後ろを付いて歩く俺とアウル。
『直ではヤバイ』と、大きく迂回をしながら、その相手に近づいている。
「第三次の斥候隊が、慌てふためいて帰って来てよ――『バケモンが出た!!』って」
「それ、第一と第二の手抜きじゃねえの?」
皇帝の継承争いの舞台として、報告せっつかれて端折ったとか――
そんな風に言ってみたが、イゾウは首を横に振る。
「抜けの『潰し』だった第二の時は分からんが、第一の調査の時は、死人まで出てる本当の冒険だったらしい。
あんなブツとぶつかったら、報告は上がる筈だ――そもそも、酒宴の席でそんな話が出ないのがおかしい。
普通なら、多少盛ってでも話す話題だ――『竜』と出くわした何て話し、相当稀だしな」
まあ、そうだな――勝ち負けは兎も角、『武勇伝』には成るよな。
「『異天』連中は戦って勝ったとか聞いたけど?」
「ああ、ありゃ、どっちかって言うと、最初は『竜』の方から来たとかいう話だぞ?
何百年前だかの『契約』で――ああと、詳しくねぇから端折るが――
百年周期だかで、当主の一族から『嫁』を出す代わりに、大人しくしてるとかなんとか――
まあ、そう言う契約を、その地の当代の領主が蹴ったらしくてな――」
「……人間の方がゲスいのな……」
遵守しろよ、自然災害が大人しくしてくれるってんだから……
「まあ、正直、話の内容が全然伝わって来ねぇから、細々とした所は分からん。
騙そうとしたから襲って来たのか、襲って来たから討とうとしたのか、とかはな。
――ただ、『力』の異天が首刎ねたのは事実らしいけどよ」
「まじか……」
止してくれよ、竜の首刎ねるって……ツブラだけでも厄介なのに。
「んで、そこの姫と婚約した、とかまでは事実らしい。俺の知る限りではな」
「……マジデ?」
「……なんでルーリルみたく片言なのかは知らんが、マジらしいぞ? 姫の方が惚れ込んだとか――」
「――リア充死すべし、慈悲は無い――」
「貴方が言いますか、それ――」
うっせえ、こっちは何年か振りの再会で対応しくじっとんのんじゃぁ!!
火じゃ、火を放て――伊勢長島より燃やすんじゃぁああ!!
「物騒な事ブツブツ言ってる炎上魔は置いておいて――イゾウさん、件の『竜』、どんなでした?」
「――どんなって――うーん、西洋風っちゃ西洋風だったが」
ひっひっひ、やっぱええのう火は、暖を取るのにも最適やでぇ。
「人語を解してたな――吼え声の中に混じってるの聞いただけだが。
ただまあ、人語に関しちゃ、『竜』てのは基本、かなり頭がいいとも聞くからな。
見てくれの上では――首が複数あった」
「――首が複数?」
「ああ。ただ――うまい説明が思い浮かばねえな。
なんだろなあ、『竜』の体した、『重複獣』とでも言えば良いか――」
「要するに、形は歪なんですね」
「――まあ、言っちゃ何だが、一目見れば『何か不味い』って分かるぞ、あれは」
「……分っては居たけど、非常に不味い顕現の仕方をしてる可能性が高いかな……
――ジン、『竜』って――」
おまけにぃお肉にお魚も焼けるぅ。
おくさーん、しってるでしょぉう?
ぽんつゆ――
ごすっ
「――何時までも遊んでないで、聞け、恋愛力0。『竜』って言われて、何思い浮かべます?」
「――人の目玉サミングしといて、いきなり質問に移るなよ――」
『竜』、『竜』ねえ――
「宝の簒奪者で守護者、とか?」
「ファフニールですね。でも、ここに宝は無いと思いますよ?」
「あと、アレ――根をかじってる」
「ニーズホッグが出張るには、いささか浅過ぎませんか?」
……当たりが付いてるのに、聞くなよこいつ……
「――お前がわざわざ降りて来たって事は、『ろくでもないモノ』なんだろ?」
「――実物見ないとはっきり言えないですけどねぇ……例の、『召喚ガチャ』産かと」
……冷えた目で見るなって、俺のせいじゃないって。
「――まあそれよりも、イゾウさんよ」
「あんだ?」
「何でそんなに鼻が利いてないんだ? そんなん居たら、下りる前に気がつくだろ」
お前さん、あの時はあの異常物体を匂いで追尾しましたよね?
「――……」
「……――いや、あの、言われてみれば、見たいな反応すんな」
「――まあ、それは冗談だがよ――鼻の調子の善い悪いってのも有るんだが――
……前に出たアレに、最初気が付かなかったのと、同じ理由な気がしてな」
「――『いきなり、匂いが強くなった』、とか?」
「分ってんじゃねえか――ってまあ、お前も潜ってたみたいだから、言いたい事は分かるとは思ったがよ。
それが――アレの『現れ方』の問題なのか、それともこの『迷宮』の何かの具あ――」
――ギェエエエエエエアアアアアアアアアア!!!!
「――おし、やっぱ帰ろう。鼻の調子が多分悪い、えらい近いトコまで来ちまってた――」
「まままま――」
「ちらっとだけだから!! 別に戦わないから!!」
「そういう『先』がどうの言ってる奴は真っ先に――」
「下ネタで返す程嫌がらなくても――」
――何処だ――友よ、何処に居る――
――ママ――怖いよ、アム――
――姉様――帰って来たよ――何処――
「――ダメだこれ、俺も逃げる」
「――は!? え、ジンまで!?」
「言ってる事が何かやばすぎる。『竜語』習得してても、会話できる自信ねえ」
「いや、何時の間に覚えた、竜言語――」
草時代にだよ、あの頃『竜裔人』もたまに歩いてたからな。
――其処か? 友よ、今往くぞ――
「やべ、見つかった――」
「お、おいおい、待て待て、こっち来るのか!?」
「いや、本当に調子悪く――
――あ、今更手遅れだけど、こいつ相当ヤバイ――」
「お前もじゃん、やっと『見えた』のかデータ? なんだ、これ――」
ドォン――ドォン――
まるで落雷か何かの様な音を響かせながら、ダンジョンの床を震わせ、それは来る。
「――『復号』に時間が掛かる筈ですよ、『断片化』が酷い――
おまけに個体名もバグっててどう呼べばいいのか分かんないですけど――『称号』が――」
――人の子か――いや? 少し違うか――
――まあ、何でもよい――
「――『縺れ集う嘆きの翼』――」
そう呟いたアウルに俺は何も言い返せなかった。
――ドォォォン!!
壁を突き破って姿を覗かせた、それは――
知る人にはおなじみの――まあ、某ゲームのプレイヤーにだが――
――おなじみの、『彼』の頭部――『銀』とも『紫』とも表される、『竜』の首――
「――『グゥエイン』、じゃん――」
『非実在』の筈の存在の、圧倒的な『存在感』に――
――何とも言えない感情が込み上げて来るのだった。




