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10


 謹慎をくらってから、漸く今日で一ヶ月が経ち一人での移動が可能となった。



 この一ヶ月の間は、側近が常に付き纏っていた。

 言い方は悪いが本当に付き纏われていたのだから仕様がないだろう。

 しかしながら、今日も変わらず今までと同じように日常はやってきた…。





「レベティアナお嬢様、朝食のお時間ですよ~」





 その原因はコイツ。護衛騎士ウィルナー・ベルシュタイン。

 お花畑を背負ってノックも無しに主人(ベティ)の部屋に入って来やg…来た、この薄らボk……護衛騎士。一応言っておくが、私と彼は異性である。主従関係でなくても家族でも、ノックくらいはするのが普通だと思っている私が、常識ではないのだろうかと思わされるほどにコイツは堂々として入ってくる。

 そんなことよりも、私の一人空間はどうなった?と考えざるを得ない。謹慎期間は昨日でもって終了した。なのに、何故に今日も来るのか。疑問しか浮かばなかった。


 いや、それよりも今はこのお馬k…護衛騎士の教育を──!!






「ルナ!!」

「はい、何ですか??」






 このお惚けは今に始まったことでは無いにしろ、今のストレスボルテージはマックスな私に対しての挑戦とみなした。そして二人の間で(彼にはそのつもりはないが…)高らかにゴングが鳴り響く。

 試合開始の合図である。






「何ですか、ではないです!何度も何度も言ってますけど、ノックも無しになんで入ってくるんですか!!?」

「え…って今更じゃないですか??これくらい慣れてください!!非常事態です。」







 この素っ頓狂な事を言い出した護衛騎士に心の中で殴りにかかった。

 ベティは、呆気にとられてから直ぐに復活すると彼をキッと睨み上げた。






「全然、意味がわかりません!」






 …全くもってその通りである。

 その時、ベティの傍に控えていた侍女もその意見にはおおいに賛同したであろう。






「そもそも、非常事態の意味はわかっていらっしゃいますか?!」

「非常事態…事変の起こった状態、又はその危機に瀕した状態。ですね…それは愚問というものでは?」

「……わかって、いるんじゃありませんか…ッッ」

「はい、入団時に騎士の一般常識として教えられます!」






──だったら、どうして、使い方を間違えるんだッッ!!?


 喉元までせり上がってきた言葉を、ベティは音にすることをなけなしの理性で押しとどめることに成功した。

 彼は、次兄とは同期として学院に入り卒業後も同じように騎士団へと入団したので古くからの知り合いではあった。しかし始めの頃こそ紳士的な彼ではあったはずなのだが、どこで何を落としてしまったのやらベティと接しているうちに現在の様な頓珍漢になってしまった。

 はっとして気づいてしまった。


──私と、接してから…?? …え、嘘……。


 彼女は、また呆然と立ち尽くしてしまった。

 先ほどとは全く違う理由からではあったが。





 いつもならば、こうした彼の奇行はもう一人の側近である侍女のアーネリスが制裁を下す。それも穏便かつ俊敏に。それを成す人物が今は不在なので、完全に沈下する気配を見せないでいる。

 しかし今日はどうやら助け舟があちらからお出ましいただけたらしい。ベティが途方にくれる顔して現実逃避を試みようとしたら、自室の扉を叩く人物があった。


 侍女が対応して部屋へと入ってきたのは、忙しい筈の次兄グレイシスだった。

 彼は入ってくるなり早々に事態を把握してベティの傍に移動するとウィルナーから彼女を隠すように背に庇い、彼を正面から見据えた。






「ウィルナー貴様また私の妹を困らせているようだな。この役立たずめ…」






 瞬時に温度の下がった室内に、ベティが次兄の後ろで少し身体をびくりと揺らす。

 その時グレイシスは、ベティにはおおよそ向けたことがない、まるで親の敵を見るような冷徹な光が宿る瞳をウィルナーに向けていた。それはそれは恐ろしい冷気を纏って。



 誰に対してもどんな状況でも、ベティの前で微笑みを絶やさない彼が唯一表情を凍らせるのは、幼い頃から何かと言っては喧嘩三昧だった彼らの破滅的な性格の不一致が招いたことなのか、或いは違う理由なのか。

 その真相は、本人たち以外は知らぬ領域なのだとベティは焦燥に浸るのだった…。


















10:了

また、次兄グレイシス登場となりました。

何か雲行きが怪しい。


さて、ここでお兄ちゃんと護衛騎士のいざこざが発覚します。そして、その原因も──!!?


次回へ…

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