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兎と猫  作者: 藤原 智
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三十二話 また、行くのか……。

 私は、リンク達の仇を絶対に討つと心に誓った。

 猫は、何者なのか調べたりしたけど、さっぱり検索にヒットしない。

 猫を殺す方法は、必ず何かあるはずだ、そう言い聞かすしか、自分の心に余裕がないのを理解している。


 私は、リンク、華菜、直哉が私の家に遊びに来た設定で妄想などして現実逃避する。

 そうでもしないと、現実に押し潰されそうだった。

 メモをずっと眺め皆の事を思い出していた。何回電話をしたかわからない。

 電話が繋がるのを期待すればするほど、落胆も大きかった。


 ベッドに横になって枕に顔を埋めて、泣いていた。

 毎日、泣いている気がする。

 自分の精神がおかしくなっている。多分。

 病院に行こうかと考える。


「やあ」


 ビクッ。


 体が無意識に反応する。

 ベッドにうつ伏せになったまま、顔だけ声の方を向け、幻聴だと祈りながら少しだけ目を開けると、うっすらと猫がテーブルの上に座っている輪郭が…。

 

 その姿を確認すると、心が重く、深く沈んでいく様な感覚を味わった。

 

 横には、ガラス玉が置いてある。

 自分で選んだ事だったけど、行きたくない。

 私は、枕に顔を埋めて、そんな事を考えるが、猫は、話しを進めた。


「今回はさ、説明をちゃんとしないとね」


 当たり前だ。お前はいつも大事な事を後回しにする。


「前回と、同じなんだけど、少しだけ設定を変更してさ、君に都合よく世界が動くようにしてあるからさ。パパッとクリアしてきてよ。僕は、ワクワクが止まらなくてさ。もう直ぐに行くかい?」

「都合よく?どういう風に?」


 コイツは、絶対に言う。「行けば分かるさ」と。


「ま、行けば分かるさ」


 私は、頭を上げて、猫に向かい「どこがちゃんとだ?そこを説明しろ!」と叫んだ時には、見覚えのある場所で寝転がっていた。


 始まりの館。


 くそ!くそ!くそ!


 心の中で叫びながら、床を叩く。


「き、君、大丈夫か?」


 一人の男性が話し掛けてきた。

 突然現れて、寝転がって床を叩いていれば、心配されてもおかしくないかと、思った。

 少し笑った。

 

 立ち上がって、男性に話し掛けた。


「大丈夫です。あなたは、ここに来てどのくらい経ちましたか?」


 男性は、笑顔を作り答える。


「八ヶ月くらいかな?見たところ、君、来たばかりかな?」

「いえ、大丈夫」


 何が大丈夫なんだ?と思うと、おかしくて笑う。


「もう大丈夫なんで」


 そう言うと、名前登録に向かう。

 男性は、呆気に取られた顔をしていた。


 私は、名前を


 詩兎・ウタウサギ


 と、付けた。


 そして、クラン登録で新規登録した。


 クラン名は、


 かなり。


 頭の上に、かなり。と表示されると、涙が溢れ出てきた。

 その場にいた、皆が私の行動を見ていた。


 突然泣き出したのを見て、さっきの男性が何か言っていたが、私の耳には入らなかった。


 そのまま、館を後にすると。


 あの場所に向かった。


 いつも皆で騒いでいた、蜘蛛の場所へ。

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