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永遠に咲く花を君と。  作者: ChaCha


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研究が進まない

冒険者ギルドは、今日も人で溢れていた。


依頼書の紙の擦れる音。

金属鎧の鳴る音。

いつも通りの光景なのに、俺の意識は少しだけ浮ついている。


「古代遺跡への護衛依頼をお願いします」


カウンターに立ち、要件を告げる。


「前衛が欲しい。できれば、盾役です」


受付は慣れた様子で頷いた。


「承知しました。条件が合う方が見つかり次第、ご連絡しますね」


そう。

俺たちは戦闘魔術師と治癒魔術師。


火力と回復は足りている。

だが、前線で受け止める役がいない。


「護衛依頼じゃなくて、パーティ募集にしたら?」


隣から、気軽な声。


「パーティだと、古代遺跡以外のクエストにも行く必要が出るだろ」


「……あー! なるほどね」


納得したように、彼女は頷く。


「俺たちは、古代遺跡にしか潜らない」


それが目的だ。

研究のため、帰るため。


背後から、低い声がかかった。


「生きてるな」


振り返ると、ギルド長が立っていた。


「……死ぬ気は、元からないです」


そう返しながら、無意識に隣を見る。


彼女と目が合う。


ギルド長の視線も、同じ場所に向いた。


「幸運に感謝するんだな」


言葉の意味は、はっきりしていた。


……分かってる。

俺は、恵まれている。


「古代遺跡踏破、興味ないんですか?」


彼女が、屈託なく問いかける。


ギルド長は、鼻で笑った。


「元神殿がダンジョン化したからといって、お宝がわんさか湧くと思うか?」


……まあ、そうだ。


「信仰が無くなったわけじゃない。だが、新しい神殿はもう建てられている」


古代遺跡――かつての神殿。


「時と共に埋もれるのは、当たり前だ」


放置されて、三百年は経っているらしい。


「……まあ、わざとダンジョン化するように、上は放置したんだろうがな」


思わず、眉をひそめた。


(そうなのか……?)


魔物が湧けば、素材になる。

ダンジョンコアが残れば、魔素は巡回する。


壊さない限り、利益は出続ける。


「ぼちぼち頑張れよ。死なない程度にな」


ひらひらと手を振り、ギルド長は去っていった。


「……だから、ダンジョンを長年踏破しない国があるのね」


「そうだな。俺も、裏側を知って驚いてる」


護衛依頼を出し終え、帰り道。


自然と、本屋へ足が向く。


新しい理論。

未知の術式。


「君が大量に買ってくれるからね。取り寄せたい本があれば、優先するよ」


「助かります。では、これと……これも」


礼を言い、ふと隣を見る。


彼女は、料理のレシピ本を手に取っていた。


……家庭的だ。


それだけで、胸の奥がきゅっとする。


拠点に戻り、夕食を済ませる。

食後、ランプを灯し、机に向かった。


魔術書を広げ、紙に術式を書き連ねる。


理論。

仮説。

構想。


(……本当に、使えるのか?)


自分で書いていて、首を傾げるようなものばかりだ。


時間干渉。

位相のズレ。

魔力の循環。


どれも、決定打に欠ける。


「……研究が、進まない」


思わず、声が漏れた。


遺跡の大広間。

あの魔術陣を、直接見なければ。


「……現物を見ないと、検討もつかないな」


紙の上の線を、指でなぞる。


焦りが、じわじわと胸に溜まっていく。


――帰るために。


そのはずなのに。


気づけば、

今日も遺跡に行けていない自分がいた。


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