第六十一話 牙達の事情
セディルが妹と共に、イルメッタに初めて会ったのは七年前。
彼らを拾ったライガが、女の子は育てられないと言うので、彼女にセディナを引き取って貰う為に、クレイム伯爵家の治める街リュームスタットに赴いた時の事だった。
その時出会った彼女は、歳の頃三十代の半ばくらいに見える端正な顔立ちの美女であった。
それから七年が経ち、今の彼女は三十代の後半に見えるが、まだまだ十分な美女である。
その理由を、セディルはもう知っていた。
この世界では、何らかの職に就いた者は、その魂に『魔素』を蓄積させて『レベル』を上げる事が出来る。
レベルの上昇とは即ち、その者の絶対的な『存在力』の向上。
その影響によって、レベルを得た魂を宿した肉体も強化され、HPや能力値も上昇して、その者はより高次の存在へと昇華して行く。
それでも、殆どの人は『レベル10』までで、その生涯を終えるのが一般的であった。
そこまでは、あくまでも凡人の範疇。
しかし、より多くの魔素を魂に蓄積させ、レベル11以上にまで成長した者は、平凡を超えた『選ばれし者』と成る。
その影響の一端が、レベル11以上の者が得る『老化抑制』の効果だった。
レベルの上昇によって徐々に老化する速度が低下して行き、レベル15の『マスター』で半減、『ハイマスター』と呼ばれるレベル20に到れば、その者の肉体の老化は停止し、『不老長寿』を得る。
今年六十歳に成ったハイマスターのライガが、見た目三十歳の手前のまま変わらないのも、そのライガよりも五歳年下のマスタ-レベルのイルメッタが実年齢より若いのも、全てその影響であった。
そして、そのイルメッタ・カリビング夫人が、屋敷の応接室に集まった客人達の前にやって来た。
「イルメッタさん、まずはお礼を言わせて頂きます。今日までセディナを育てて頂いて、ありがとうございました」
セディナと対立を始めたエリーを宥めたセディルは、姿勢を正して彼女に妹の養育の礼を言った。
「ふふふ、私も女の子を育てるのは楽しかったわよ、セディル君。苦労したけれど、あなたがお願いした通り、セディナを『昔の私みたいな女の子』に育てる事が出来たと思うわ」
穏やかな笑みを浮かべたイルメッタが、何かをやり遂げた者の顔でそう言う。
「……昔の私……ですか。ちょっと……、意思疎通に擦れ違いがあったみたいですね……」
昔ではなく、今のイルメッタみたいな女の子に育つ事をセディナには期待した、とは口には出来ず、セディルは口元を引き攣らせた。
「イルメッタさんは、冒険者時代は前衛職の『人斬り』だったんですね?」
「ええ、そうよ。私も昔は、ちょっとやんちゃな女の子だったわね。夫に出会って、結婚して……、私も少し変わったかしら?」
イルメッタが、昔の自分と今の自分の比較を求めてライガを見る。
「……この世にあるもの、全てをぶった斬ってみたい、と言っていた女だぞ。変わったなんてものじゃない……」
そう言って、無表情で溜め息を吐くライガ。
彼にとっても、昔と今のイルメッタの変化は、天変地異の様に感じられているようだ。
「その夢は、セディナに託したわ。この子には、人斬りだった私の全ての剣技を教えてみたの。これからセディル君と一緒に冒険者に成るのなら、必ず役に立つ筈よ」
「勿論さっ! イルメッタさんの一番弟子は、このアタシなんだからっ!」
剣の師から期待され、鎧武者姿のセディナがフフンッとドヤ顔で胸を張る。
彼女もまたイルメッタを慕い、その弟子である事に誇りを抱いているらしい。
「結婚して、変わった……? イルメッタさんの旦那さんって、『聖者様』か何かなのかな……?」
「只の商人よ」
明後日の方向を向いて呟くセディルの独り言に、イルメッタがにこやかに付け加える。
出会いとは、人を変えるようだ。
「うーん、それじゃあ、やっぱり教育って大事なんですね、師匠」
「……俺は、お前を育てた覚えは無いぞ」
達観した表情でそう言うセディルに対し、ライガはその濡れ衣を否定した。
彼がセディルにしたのは、あくまでも忍者と冒険者に成る為の修行であって、それ以上ではない。
セディルは、ライガが出会った時からセディルであったのだ。
「ところで、面白い組み合わせの集団ね。フェルセイス、あなたがライガと一緒に居るのも驚いたけれど、何か心境の変化でもあったのかしら?」
セディナの前に彼女に預けられた女の子だったフェルセイスに、イルメッタはそう話し掛けた。
フェルセイスは無事に成人し、両親と同じ冒険者と成り、そして相応の実力者にまで上り詰めている。
「いいえ、変化など無いわ、イルメッタさん。こいつはやっぱり人生の落伍者で、最低の親のままよ」
冷たい美貌を父と同じ彫刻のような無表情にして、彼女はライガを軽蔑するようにそう言い放った。
セディルは師の顔を見る。
実の娘からそう言われても、彼の様子に変わりは無い。
只静かに目を閉じ、腕を組んで背を壁に預けている。
「そう……、それは残念ね」
本当に残念そうに、イルメッタは少し目を伏せた。
ライガの心を縛る過去の悲劇は、今でも清算されてはいないのだ。
「初めて見る人も居るけれど、彼女達もセディル君の関係者かしら?」
けれどそうした思いを脇に置き、イルメッタは客人の中に居る、見慣れぬ少女と婦人に視線を移した。
エリーとアンナである。
「はい、金髪の女の子はエリーといいます。僕のお嫁さんです。こちらの女性は、アンナさんといいます。彼女も、僕の側に居てくれる女の人です」
事情が事情ゆえ全ては話せないが、話せる事は語るべき相手に、セディルは彼女達の事をそう説明した。
「あら、結婚したのねセディル君。それは、おめでとう」
結婚という単語に、目尻を一瞬ピクリと反応させたイルメッタは、そのお相手だというエリーという少女の顔をジッと見つめながら、祝福の言葉を口にする。
訳も判らず顔を見つめられたエリーは、居心地悪そうに形の良い眉を顰めたが、そこは訓練された元プロのお嬢様。
完璧な所作で、屋敷の女主人相手に挨拶を返す。
「エリー・レイドですわ。この者が言った通り、今はこの者の妻……と成った女です。こちらの者は、アンナ。わたくしの家で働いていた者ですわ」
エリーに紹介され、アンナもペコリと頭を下げる。
「ふふふ、そう……、そんな事に成っているのね。相変わらずセディル君は、面白い子だわ」
何か、事情の一端を察した様子で、イルメッタは悪戯な笑みを浮かべる。
「私はこの屋敷を夫から預かっている、イルメッタ・カリビングよ。エリーお嬢さんとアンナさん、当家はあなた達を歓迎するわ。我がカリビング商会は、恩知らずではないもの」
そう意味深な一言を付け加えて、エリー達の事を歓待するイルメッタ。
(……これって、イルメッタさん気付いているよね。エリーが、クレイム伯爵の娘だって……)
その様子から、セディルは彼女の内心を察した。
カリビング商会は、ジーネボリス帝国とも交易の太いパイプを持っており、クレイム伯爵家とも取引き関係があったのだ。
直接の面識は無くとも、ある意味有名人でもあるエリーの容姿くらいは、把握していても不思議はない。
北の帝国で起こった皇帝殺害事件についても、この一月余りの時間で、既に大陸各地に情報が伝播している。
当然、それはイルメッタの耳にも届いているであろうし、その事件で唯一人行方不明になったクレイム家の令嬢が、ライガやセディルと共に此処に居る事についても、その事情を推測する事は出来る。
「全然、おめでたくないよっ! イルメッタさんっ!」
そんな考えをセディルが巡らせていると、怖ろしく頬を膨らませたセディナが異論をぶつけて来た。
「あらどうしたの、セディナ?」
「アニキがアタシじゃなくて、別の女と結婚してたんだっ! 話が違うよーっ!!」
そう叫んで、地団太を踏むセディナ。
「お兄ちゃんを取られちゃった事かしら。でも、あなたはこれから、彼と一緒に冒険者をするんでしょ? まだ逆転の機会はあるんじゃないの?」
これまでセディナを鍛えて奮い立たせる為に、散々使って来た兄への想いの利用を駆使して、イルメッタは少女を宥める。
「うううー……。そうか、そうだよね、まだアタシにも機会は、ある、か……」
育て親に説得され、素直な女の子セディナは、平静さを取り戻した。
「そうよ、その為には、不毛な喧嘩は止しましょう。お兄ちゃんの彼女達とも、上手く付き合って行くのよ」
そう締め括り、セディナの肩をポンと叩いて元気付けるイルメッタ。
その表情は、実に楽しそうであった。
(イルメッタさん……、調教の専門家か何かなのかな?)
獣使いのような鮮やかな妹の制御に、セディルは感心した。
おそらくこの七年間は、ずっとこの調子で、彼の妹はこのように育ってしまったのだろう、と想像出来てしまうのであった。
「さてと、これでセディル君達の再会の挨拶は済んだわね。それで実はもう一人、再会を望む人が来ているの。あなたとね、ライガ」
「俺に、会いたい奴だと?」
無表情を貫いていたライガの太い眉が、ピクリと動く。
先触れも無くこの屋敷にやって来た彼に、此処でそれを言い出すという事は、その相手とは先程までイルメッタが面会していたという『重要な客人』の事だろう。
この街でかつてのライガと面識のある重要人物となると、その存在は限られる。
「そうよ、あなたに会いたがっているのは、ヴァルデムなの」
そしてイルメッタが、ライガの予想した男の名を告げる。
「どういう奇跡なのか、ちょうど彼が私に会いに来て、つい今し方頼まれたところだったのよ。あなたに連絡を付けられないだろうか、とね」
「あいつがか……」
その名を聞き、眉間に皺を寄せて難しい顔をするライガ。
そんな師匠の様子に、セディルの好奇心は黙っていられなかった。
「ヴァルデムって、誰なんですか、イルメッタさん?」
ライガの個人的な昔話は、少しだけしか聞いていないセディルだが、その名に聞き覚えは無かった。
しかしその名を聞いて、フェルセイスとライトレイン、それとセディナというこの国の現地人達が、驚いたようにイルメッタの顔を見る。
「ヴァルデムは、三十年前までパーティを組んでいた、私やライガの昔の仲間よ。その頃は『魔術師』で、【叡智の牙】のヴァルデムと呼ばれていたわね」
「へー、イルメッタさんと同じ、師匠の昔の仲間ですか」
師のかつての仲間達。
その数は、ライガを除いて五人。
その内の二人が、今この街に存命なのだ。
「元々は大貴族の生まれなのだけれど、次男坊だったから若い頃は結構自由に生きていた人なの。家を飛び出して、私達と一緒に冒険者をするくらいにね」
話を聞く限り、貴族の中でもかなり破天荒な人物像が浮かび上がる。
貴族出身の者でも、道楽で冒険者をする者は、珍しいがいなくもない。
それでも、相応の大貴族の生まれでそれをやるとなると、かなり問題になった筈なのだ。
「だけれど、家督を継ぐ筈のお兄さんが亡くなって、急遽彼が家を継ぐ事に成ったの。それが三十年前、私達がパーティを解散する発端だったわね、ライガ」
「……ああ、そうだったな。だが、切っ掛けはそれだけじゃないだろう。お前の結婚もあったし、他の奴らも目指す先が違い始めた。……今思えば、あれが潮時だったんだ」
ライガは過去を回想し、その時の事を少しだけ思い出す。
あの時、六人中、四人が冒険者を引退した。
残ったのは、ライガとフェルセイスの亡き母ルナセイス。
それでも彼は、妻と二人で冒険者を続けたのだ。
彼女が死ぬ、その日まで。
「その人が師匠に会いたいと、イルメッタさんのところに来たんですね。その人、今は何をしているんですか?」
貴族の家を継いだという男が、ライガに何の用があるのか。
セディルは、師に代わってイルメッタに訊ねる。
「この国の宰相よ」
訊ねられたイルメッタが、さらりとその事実を来訪者達に告げた。
「「「えっ!?」」」
その異国からの来訪者、セディル、エリー、アンナが思わず声を出してしまう。
「ヴァ、ヴァルデムとは、ヴァルデム・オリオス公の事ですのっ!? ロルドニア王国の五大公爵家筆頭、オリオス公爵家の当主で、亡くなられた先王から直々に女王の補佐を頼まれたという名宰相のっ!?」
「おお、知っているんだ、エリー」
元伯爵令嬢であるエリーは、流石に隣国の宰相の名を知っていた。
先代王の右腕として、三年前からは新女王の補佐役として、彼の名声と実力は周辺の国々の社交界にも知られているのである。
そのような人物が、かつては冒険者をしていて、しかも自分の家の別荘の管理人の仲間だったと知り、彼女も驚きを隠せない。
「……師匠は、知っていましたよね? 昔の仲間がこの国の宰相だって事を」
「ああ」
横を向き、ぶっきらぼうな様子でライガは答える。
見るからにお偉いさんは苦手という師の態度に、セディルは二人がこの三十年間、一度も会っていないのだと気付いた。
パーティを解散し、冒険者から公爵に成ったかつての仲間とは、ライガも接点を見い出せなかったのだろう。
「ベルジア」
「はい、奥方様」
イルメッタの指示で、ベルジアが応接室の扉を開けた。
部屋の外で待機していたのであろう人物が、その扉の先に現れる。
それは、ゆったりとしたローブを纏った初老の男。
彼は厳格そうな顔立ちの中で目立つ、その深い知性を宿した瞳を、室内の全ての者達に向けて来る。
見知っている者、見知らぬ子供、そしてその視線が留まった相手、それは三十年振りに再会したかつての仲間の顔。
「紹介するわ、この方が我が国の宰相閣下、ヴァルデム・オリオス公爵様よ」
そう皆に告げるイルメッタの声も耳に入っていないかのように、ヴァルデムは只、ライガだけを見つめていた。
硬い沈黙の空気が、部屋に満ちる。
「俺に用があるらしいな、宰相閣下」
一同の沈黙を破って最初に口を開いたのは、ライガだった。
昔と変わらぬその砕けた口調に、宰相ヴァルデムの口元が僅かに綻ぶ。
「変わらんな、ライガ。ハイマスターに成ったとは聞いたが、見た目も雰囲気もそのままとは驚いたぞ……」
「お前は、老けたようだがな」
ライガもかつての仲間の顔を見る。
彼の顔には、苦労の多い人生を歩んで来た者に刻まれた、年輪のような皺が目立つ。
「お前と同じ事をしたからな」
「『転職』か?」
「そうだ。あの後、私はレベル15の魔術師から『賢者』に転職して、レベル1に戻った……」
ヴァルデムは、自身の身に課した新たな試練を話す。
一度何らかの職に就いた者でも、別の職に成り替わる事が出来る。
それを、『転職』という。
転職すれば元がどれ程高レベルであっても、そのレベルは1に戻り、能力値も劇的に低下する。
当然、高レベルの恩恵である、老化抑制も効果を失い、その加齢速度は通常に戻ってしまう。
実年齢はライガよりも一つ年上なだけのヴァルデムだが、今の彼は五十代の前半くらいに見える。
「思い切った事をしたものだな、ヴァルデム。マスターレベルを捨てるとは、馬鹿のやる事だぞ」
「お前もやった事だろう?」
「俺が転職したのは、十八歳の時だった。若さと勢いがあったのさ……」
転職は、職に就く者の一生を左右する重大な決断である。
それまで上げて来たレベルを全て捨て、より上位の職を目指して、己の可能性に賭けるのだ。
「転職してから三十年。職務の傍ら研鑽に励み、今はレベルも15に戻ったが、お前ほど時から切り離されてはいないな」
フッと笑って、ヴァルデムは自分の皺深い顔を撫でる。
そんな二人の遣り取りを、セディルは黙って聞いていた。
(三十年振りの再会……、片方は王国の宰相、もう片方は自宅警備員の職も失った流れ者……。でも……、この二人、今でも自分達の関係は対等なものだと、無意識でも問題無く受け入れているんだ……)
先程聞いた三十年前の『牙のパーティ』解散の話を、セディルは思い返す。
身分を極めたヴァルデムにライガは会いたくないのかとも思ったが、この様子を見る限り、その心配は杞憂の様だった。
(師匠と宰相閣下……、この二人、友達だったんだね……)
セディルは、それを確信する。
人付き合いの少ない師にも、亡きクレイム伯爵の他に友達と呼べる者がいたのだ。
「お前に会いたかったのは事実だ。どうしてもお前に頼みたい、『重大な仕事』が出来てしまったのでな。だが……、ジーネボリス帝国で起こった『例の事件』で、イルメッタもお前と連絡が取れなくなったと聞き、正直肝を冷やした」
ヴァルデムはそう言って、安堵の溜め息を漏らす。
重大な懸念に立ち向かう切り札の一つとして、ライガとの再会という微かな光明が見えて来たからだ。
「……そういう話なら、俺は出て行かせて貰うぞ。俺はもう、冒険者を辞めた男だ……」
『重大な仕事』。
その一言に、ライガは眉を顰める。
彼はそうした事に、もう関わりたくはないのだ。
だがそのライガの言葉を聞き、顔を険しくし、その紫色の瞳を嫌悪感で鋭く輝かせたのはフェルセイスだった。
「意気地無しめ……」
吐き捨てるように、父を侮蔑する娘。
「……イルメッタ、人払いを頼みたい。これは重要な案件だ。ライガと二人で話したい。彼女達や、関係の無いその子供達は下がらせてくれ」
今の時点では、部外者に知られてはならない話。
宰相として、ヴァルデムは情報の扱いを重視しなければならない立場にある。
そしてイルメッタも言っていたように、フェルセイスが一緒では、ライガを説得出来ないかも知れない、と今の二人を見て彼もそう思ったからだった。
しかし宰相からのその頼みに対し、イルメッタは思案気な顔をして一同を見回す。
いつの間にか、品の良い商家の奥方の顔の中に、人斬りの鋭さを秘めた瞳を取り戻して。
「ねえ、ヴァルデム。ある程度の事は、彼らにも一緒に聞いて貰ったらどうかしら? 私の勘だけれど、ライガだけでなく、今此処に集まっている『人材』はあなたにとっても、きっと有益な筈よ」
「何を言い出すのだ、君は? 私が今必要としているのは、冒険者のライガだ。一歩譲っても、フェルセイスとそのエルフの冒険者は事態の協力者だが、他国の女子供に聞かせて良い話ではないぞ」
奇妙な事を言い出すイルメッタに、宰相は怪訝な顔を見せて訊き返す。
今彼が必要としている者は、空前絶後の試練を乗り越えられるような屈強の冒険者である。
その条件を満たす者は、今彼の前には、ライガ、フェルセイス、ライトレインの三人しかいない。
間違っても、見慣れぬ女子供達にそれが成せる筈がない。
「ふふふ、それはどうかしら? ねえセディル君、あなたはもう職に就いたのよね?」
何か楽しい悪戯を思い付いたように、イルメッタがセディルにそう訊ねる。
「はい、イルメッタさん。僕は、師匠と同じ職に就きました。レベルは、まだ2ですけど」
そして訊ねられたセディルは、堂々とその事実を話す。
「ですってよ、ヴァルデム。良かったわね、あなたが求める者が、今此処に居るわ。それも……、『二人』も、ね」
「……な、何だと、それはどういう意味だ……?」
宰相ヴァルデムの額に汗が滲む。
高い知性を持つが故に、彼の知識と理性がその事実をありえない、と否定しているからだ。
彼のかつての仲間、ライガ・ツキカゲ。
『伝説の忍者』と同じ職に就く子供など、いる筈はない、と。




