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ダンジョンズガーディアン  作者: イチアナゴニトロ
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27話

 部屋に戻る前、紅角虎にダンジョンの迷宮、ゴーレム以外誰もいない場所で真の名を明かされた。それはとても発音できるようなものではなく、聞かされても頭が認識できない。


 しかし紅角虎の口にした真の名は俺の魂に入り込み、彼女は俺に絶対に逆らえない事実だけは言葉にしなくても理解できた。あぁ、こりゃ悪魔が名前を大事にする訳だ。


「本当に良かったのか? 真の名を預けて、眷属にしてもらえればまだ自由だったろうに」


「預けてからそんな事言うな。今更妹に仕えるなんて出来やしないんだよ、主人に信用されてない眷属なんて惨めなもんだ。分かってると思うが黄泉姫は悪魔としてかなり甘い部類だ、それは分かるな?」


 何故こいつは絶対服従の癖に偉そうなんだろうか? 別に良いけどさ。


「黄泉姫は甘いからお前たち眷属は素直に従う。命令される事に特に不満を抱かないだろ? 気遣ってくれるからな、あぁ素晴らしい理想の主君だ。だが普通の悪魔の眷属への扱いを見ると、やらかした相手の眷属になるなんて絶対に選択できない。どんな扱いか聞いてくれるなよ? 良い気分が台無しになる事請け合いだぞ?」


「そうか、まぁ俺も別に苦しめたいわけじゃない、ある程度は自由にしろ。ただ勝手に血を吸ったり、勝手に予算を使ったり、勝手に部屋の物を私物化しないように、後は……」


「ちょっとぉ! ダーリン自由にしろって言っておいて誓約多くない?」


「誰がダーリンだボケ! やらかした事を考えれば当たり前だ」


「ちょっとくらい精気頂戴よ、こんな身体じゃ楽しめないでしょ? ダーリンの役に立つから血を吸わせてよぉ」


「後だ後、暫くは部屋で大人しくしてろ。小遣いくらいやるから」


 こんな会話を交わし、部屋に連れて帰る。一応メルに事情を説明すると、子供好きらしいメルは妙に張り切って紅角虎の世話を焼きだした。ソイツ本来はこのダンジョンの誰よりも年上なんだが、弱体化でメンタルも肉体相応だから別に良いか。


 連れ去られる紅角虎を見送り。やれやれ、慌ただしかったがやっと落ち着ける。おっと、慌ただしかったから遅れたけど、一応影狐に作戦成功の連絡を送らないと。


 連絡を受けた影狐は即座に他の配下を連れて砦から脱出。明日の朝には勇者が襲ってきそうで怖かったらしい。すまん、もうちょっと早く連絡するべきだったな。


 黄金の鏡を奪う確立をあげるため、敵戦力の分散が必要だったとはいえ大分大掛かりな作戦だった。危ない場面は多かったがこうして無事に終わるとやり遂げたって気分になるな、これが達成感というものか。


 中々悪くない、それどころか良い気分。前世含めて味わえなかったものだから。どうするべきか?


 打ち上げの飲み会とか? 悪魔だから関係ないとはいえ、解散してすぐにクロたちの部屋を訪ねて飲みに誘うのもタイミング悪いし、まぁ明日朝議の時になんか提案してみるか。


 映画とかで見たハードボイルドに一人静かにグラスを傾けるとか? 部屋の中は愛玩用の猫だらけで雰囲気もへったくれもねぇ! でも寝るのもなにか勿体ない気もするので、ここは外で飲んでみるか。


 メルに風呂に入れられなんか悲鳴と一緒に、助けを求める声が聞こえるが無視し、地表の城へ。なんとなく雰囲気重視で城の中で一番高い場所、物見塔の屋根に飛び乗る。


 上を見上げると地球のそれとは比較にならない、宝石のように輝く星空。酒なんて今まで飲んだことないが、ちょっと高めのワインを買って、爪でコルクを抜いたらそのままラッパ飲み……。


「う、う~ん。大仕事の後の一杯は最高だとか、よく言われてたけど悪魔になると違うのか?」


「ふふっ、飲み方は自由であるが、それはあまりに風情が無かろう」


 機嫌よさげな声に振り向くと、なんか俺と同じ銘柄の瓶を片手に持ったお館様が、黙って隣に腰かける。


「黄金の鏡は魔界に送った。今頃大騒ぎであろうな、お父様の焦った顔を初めて見たぞ、お前にも見せてやるべきだった惜しい事をしたな。ふふっ思い出すだけで愉快痛快。つい柄にもなく飲んだことも無い酒を買ってしまったくらいにな」


 お館様がグラスを出すので、見よう見まねで酒を注ぐ。お返しにお館様は手に持った全く同じ銘柄のワインを、グラスに注ぎ俺に手渡してくれる。


「こういう時はなんと言うべきか、分身が入手した情報によれば……星空の煌めきすら霞む君の美貌に乾杯?」


「お館様、それは男が女に言うセリフではないでしょうか?」


「うむ、何か変だとは思っておった。紅雪鬼、お前が乾杯のセリフ考えよ」


「そんな気取らなくて良いんですよ。では……今日の勝利を祝って乾杯」


「うむ、今日は大勝利だ、めでたいから乾杯だ」


 ガラスの触れ合う響き、お互いに自然な笑みを浮かべながら一気に飲み干したワインは、最初に飲んだ一口目より遥かに美味しかった。


「……ところで、お前たち眷属は愛称で呼び合ってるであろう? それで我の前では通り名だ。何か不公平ではないか?」


「自分が生まれた日に、主従のケジメがどうとか言ってませんでしたか?」


「羨ましくなったんだから仕方あるまい。うむ! 今日の褒美として我を愛称で呼ぶ権利を与えるぞ。勿論、黒天姫にも蒼鏡姫にもな! お姉様は駄目だが」


「ではヨミ様と呼ばせていただいても?」


「うむ! なんなら姉上と呼んでも良いのだぞ?」


「それだと仮にも姉君と呼んでた紅角虎を連想してしまうので、ここは一つヨミ様で」


 うん? 相変わらず機嫌の良さそうな笑顔だけどなんか妙なプレッシャー? い、いや気のせいだよな?


「ふふふ、今からでもお姉様を手討ちに……」


「あの、ヨミ様?」


「な、何でもないぞ。我もお前の事をセツと呼ぶからな。ほら、注いでやるからもっと飲むのだ」


 生まれて初めての達成感と、自然なお館様、もといヨミ様の笑顔につられ夜が明けるまで飲み続けた。なおヨミ様は俺の数倍は飲んでたくせに朝議の時まったく普通だったけど、俺は魔界製の酒に潰れ祝宴を開く話にまったく参加できないでいた。


「ふふふ、酔ってフラフラのセツは可愛かったぞ」


「クスクス、私も見たかったですわヨミ様」


「魔界産だと悪魔でも二日酔いになるみたいですし、転移門でお酒は調達しましょう、ヨミ様の好みはワインで良かったですか?」


「うむ、酒を飲んだのは昨夜が初めてなのだ。色々試してみるとしよう。クロもカガミも今夜は楽しむぞ。天界からの干渉不可の約束は取り付けたから安心するのだ。お父様は忙しく階層が増えるのはしばらく待つことになったから、それまでは英気を養おうぞ」


 楽しそうに祝宴の話し合いを進める女性陣。俺は頭痛と吐き気にそれどころではなかった。

ちょっと短いですが、これにて一章完結

二章は区切りの良い所まで完成したら、まとめて投稿しようと思います。

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