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ダンジョンズガーディアン  作者: イチアナゴニトロ
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23話

 部屋に戻ると影狐がメルと食事をしていた、耳が良いはずなのに俺にも気付かないほど真剣な様子で、少し見てると、どうやらマナー教室の真っ最中のようだ。


「影狐、仕事だぞ」


「ぴゃっ! こここコレは失礼をいたしました」


 尻尾の毛を逆立たせ瞬時に床に座って頭を下げてこられると、なにやら俺が悪い事をしたような気になって来る。


「メルも……ついてこい」


 先ほどの会議で決まった作戦を二人に伝える。悪いと思うがマナー教室は後にしてくれ。


「暫くダンジョンの外で過ごして貰う。外に出るついでだ親に言いたい事があるなら伝えるが?」


「特には有りません……多分お姉様かツグミさんなら心配してても私の事は……」


 王宮の事情は知らないが、レオンの『出来損ない』発言もあるし、帰りたい素振りを一切見せないあたり根の深い事情がありそうだ。


 夜までに砦を二つ落とさないといけないから、急がないとな。


 メルと影狐、それと配下を数名連れて、アルファストの拠点へ。そこから配下にメルを担がせて、人目につかないように隠れながら火鼠の被害がまだ燻ってる砦へ急ぐ。


「先ずはこの砦を落とす、食料を焼いたら次の砦に向かうからここで待ってろ」


 メルたちを砦の外で待機させ。単身で駆ける。王宮のそれよりも高い城壁をもつ砦だが、物資を搬入する出入り口を無理やり破って侵入し城壁内部全域に紅い雪を降らせると、兵士たちから奪ったらしい精気が俺に流れ込んでくる。


 食糧庫に向かう途中で聞き覚えのある音が聞こえ空を見ると、真っ赤な煙が立ち上り、上空で盛大に赤い煙幕が広がる。花火みたいだけど多分異常事態が生きた狼煙か。魔法の通信ができなくなるのは知られてるからその対策だな。


 何人かの兵士が俺に向かってくるが相手にする暇は無い、跳躍してやり過ごし一気に食糧庫へ。


 石造りの倉庫には大勢の兵士が待ち構えていたが、今度は屋根に飛び乗る。弓で射かけられたが俺にダメージを与えるほどでもない。


 倉庫の屋根に魔法で大穴を開けて、油を注ぎ火鼠を召喚する。倉庫は複数あるので全部同じように。そして穴から噴き出す黒煙に何があったのか察したらしい兵たちは急いで消火を始めるが、魔法が使えないのと極低温で思ったほど作業が進まない。


 混乱を尻目に砦を脱出し影狐たちを連れて最寄りの砦へ。この砦は早い段階で火鼠が木材を優先的に狙うのに気付いたそうだが、その代償に火災の爪痕はかなり深い。


 焼け落ちた砦の門を守る兵士たちを配下たちに蹴散らさせて門を潜る。先程の狼煙を見たのか準備を整えていたが、固まってるなら丁度良い、広い範囲に氷の礫を放ち部隊を半壊させる。


 指揮官らしい騎士が斬りかかってきたのを躱し、連撃を仕掛けてきたのを素手で払いながら話しかける。


「おい、伝言を引き受けるのなら、部下たちに攻撃しないように命じるがどうだ?」


 氷の礫でダメージを受けた兵士たちの傍には、連れてきた配下たちが武器を持って立っている。


「ぐっ! 伝言とはなんだ!」


「王城に赴きこう伝えろ『勇者を連れて来い、怖気づくようなら今まで保護していたメルリーシャ姫の命はない』とな」


 わざとらしく後ろ手で手を縛られたメルの姿を見せると、一旦距離を取る。


「悪魔め!」


「事実を言葉にしたところで何も変わらんぞ? 俺はお前の部下共に特に興味はないが、俺の配下は言葉通りの意味で血に飢えているぞ?」


「部下全員ここから退去するのを見逃せ」


「さっきも言ったが興味はない。さっさと行け、伝言は忘れるなよ? 俺はこの砦にいるから勇者を連れて来いとな」


 騎士はまだ軽傷の兵士になにやら指示を出し、暫くすると留守番らしい兵士たちは怪我人を担いで砦を出て行った。


「隠れている者がいないか洗え。それと監視用の魔術の痕跡を見逃すな」


 配下全員に魔力の痕跡を察知する魔法道具を買い与え、安全が一応確認された後作戦通りに、俺そっくりに化けた影狐が転移のカギを使い俺とメルはダンジョンに戻る。



   ~~~~~



「こちらは作戦通りだ、そっちはどうだ?」


「順調です、キヨタケもタクミも確認しました。タクミの反撃がたまに……おっと! 青空に私の黒い翼は目立つのか段々精度が上がってきました」


 勇者タクミ、正確には彩賀匠(サイガタクミ)の固有魔法は自分が使ったことのある道具を魔力で創ることができる。時間制限もあり質量によっては疲労で倒れたりするらしい。


 それだけなら便利な能力で済むのだが、問題はこの彩賀の出身世界にあった。彼の生まれ育った日本は長く続く世界大戦の真っただ中であり、彼は13歳から徴兵されていたのだ。


 ここまではいい、いや軍経験のある勇者ってだけで厄介だが。一番の問題は彼の使ったことのある道具には、とにかく素人でも使いやすいように最適化された日本製の兵器も含まれる。しかもかなり扱い慣れてるのだ。聞けば彼は国営武器製造メーカーの、重役一族で最新兵器とかのテスト運用をしてたらしい。


 カガミからそれぞれの出身世界の違いを聞いたから分かったことで、クロの説明だと鍛冶屋の一族で武器とか魔力で創れるとしか分からなかったから助かった。コレだと精々拳銃くらいとしか考えなかったからな。


「多分だが体温や電磁波……まぁとにかく高性能の索敵能力を備えてると思うから、囮をばらまいてみろ」


「よく分からませんが……きゃっ! なんでこの距離で金属の礫がこんな威力! と、とにかくカラスの魔物でも呼び出します」


「ほどほどで戻ってこいよ」


「了解いたしました。タクミとキヨタケが対処せざるを得ないように、アルファスト軍を弱体化させてから帰還いたしまにょわぁぁぁぁ!」


 念話が途切れる直前に悲鳴が聞こえた気がしたが、クロの名誉の為黙っておくか。


 ダンジョンに戻り最下層で待っていたお館様とカガミが、えらい禍々しくも妙に露出度の高い鎧に身を包んでいた。生まれつき悪魔なお館様は似合ってるが、カガミは何というか鎧に着せられてる感じがするな。単に悪の女幹部コスっぽい鎧に恥ずかしがってるだけみたいだが。


「お館様! ご、ご提案がございます……我々眷属一同の連帯を高めるため、お揃いの鎧とかどうでしょう? 紅雪鬼さんみたいなかっこいい鎧憧れちゃいます! 角も生えてますし」


 そんなに恥ずかしいか、お館様もカガミもスタイルが良いから目の保養にはなるんだが。


「ふむ、蒼鏡姫がそう言うのであれば買いなおすのも吝かではないが……我はこっちの方がかっこいいと思うのだが」


 自分で選んだらしい鎧が不評でちょっと拗ねてる。この鎧のレプリカでも別に悪くはないが、レプリカ買うくらいなら今着てる痴女鎧の方が強いのは間違いない。


 しばしあーでもない、こーでもないと、鎧について話し合った結果。帰ってきたクロに判断を委ねることになり……。


「勇者たちの固有能力は強力ですもの、防御力を重視するべきですわ」


 なんら抵抗なく痴女っぽい鎧を着るクロ。モデル体型なので何を着てもそれなりに似合うな。カガミが恨めしそうに見るが、諦めたのか大人しく痴女鎧を着る。マントとか羽織りたがってるけど、お揃いなのを喜んでるお館様の手前言い出しにくそうだ。まぁ俺はお館様の味方だからフォローはしない、目の保養だし。


「クロは抵抗なく着たけど、この鎧、露出あるけどいいのか?」


「夏の夜会用のドレスなんてもっときわどいドレスがありますわよ?」


 そういやアルファストって高温多湿な国だったか。


 女性陣がお揃いの鎧を纏った頃に、悪魔討伐の軍を王自らが旗頭となり出陣したと連絡が入った。

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