第十話 夢と少女と旅日記
L.E.1012年、6月5日。
朝。
目を覚ました。
夢は見なかった。
「……」
少し。
残念だと思った。
そのことに。
自分で驚いた。
◇
「ネルさん!」
「はいはい」
「取れました!」
「何が?」
「指輪!」
右手を見る。
薬指。
何もない。
「あ」
昨日。
女神様へ。
ウェイクリングを返した。
事件が終わった以上。
もう。
持っている理由はない。
「……」
「寂しいです?」
「まさか」
指。
軽い。
「やっとですよ」
最初は。
この指輪を外すために。
夢魔退治へ。
付き合った。
「せいせいしました」
「本当に?」
「本当です」
嘘ではない。
ただ。
右手を見る癖は。
しばらく。
抜けそうにない。
◇
私。
エメラルドさん。
サンデーさん。
サファイアさん。
四人で。
朝食を食べた。
いつもなら。
ローラさんと。
ルビーさんも。
いた。
「……」
空いた席を。
今日は。
ちゃんと見た。
それから。
パンを食べた。
◇
「それじゃあ」
サンデーさんが。
荷物を背負う。
「私たちも行きます」
「旅芸人に戻るんですね」
「はい」
「今度」
私は言う。
「ちゃんと芸を見せてください」
「……」
サンデーさん。
少し。
目を丸くした。
「顔じゃなくて」
「……はい」
「『美少女芸人』でもなくて」
私を見る。
「芸を?」
「ええ」
「……絶対ですよ」
「お金取る?」
「当然です!」
「値切れます?」
「値切らないでください!」
笑う。
「じゃ」
手。
出す。
「また」
「はい」
握る。
「また」
◇
「サンデー!」
「分かってるよ」
「知らない人について行かない!」
「子供じゃないよ!」
「十二歳は子供でしょう!」
「ネルさん」
「はい?」
「サファイアどうにかしてください」
「無理です」
「即答!?」
「そういうものは」
サファイアさんを見る。
「本人が自分で何とかするしかないでしょう」
「ちょっと待ちなさいよ!?」
「ではお元気で」
「話を終わらせるな!」
最後まで。
騒がしかった。
◇
エメラルドさんと。
二人。
残った。
「……」
「……」
「何です?」
「いや」
「食べ歩き?」
「違います」
「じゃあ何です?」
「ちょっと」
行きたい場所がある。
◇
ハンターギルド。
正直。
もう。
用はない。
夢魔事件。
終わった。
私たちと。
ギルド。
契約もない。
それでも。
最後に。
一度だけ。
見ておきたかった。
「うおおおおおお!」
見なくてもよかったかもしれない。
「ナイトメアを倒したのは俺だ!」
「嘘を吐け!」
「この牙を見ろ!」
「俺は爪を持っているぞ!」
「こっちは毛だ!」
「……」
ギルド前。
大騒ぎ。
「ネルさん」
「はい」
「何です、あれ」
「自称英雄」
「英雄?」
「たぶん」
昨日。
ナイトメアが倒れた。
それと同時に。
世界中のエターナルドリーマーが。
次々と目を覚ました。
当然。
誰かが。
原因を倒した。
そう。
考えられる。
でも。
夢の世界から。
証拠は。
持ち帰れない。
「なので」
私は言う。
「作り放題です」
「証拠を?」
「はい」
角。
爪。
毛。
牙。
そもそも。
ナイトメアさんが。
普段は。
少年の姿だったと。
知らない人たち。
「何か」
エメラルドさんが。
呆れている。
「私たち」
「はい」
「あんなに大変な思いをしたのに」
「はい」
「あの人たち」
「はい」
「何もしてないですよね?」
「でしょうね」
「腹立ちません?」
「少し」
でも。
「勝手にすればいいですよ」
「え?」
「本当に倒した人間は」
知っている。
私。
エメラルドさん。
サンデーさん。
サファイアさん。
女神様。
そして。
ローラさん。
ルビーさん。
ロレッタさん。
アイトさん。
ミンティアさん。
ほか。
この事件で。
何かを選んだ。
たくさんの人。
「一人で倒したわけじゃないですし」
「……」
「誰が英雄かなんて」
正直。
どうでも――。
「ネルさん?」
声。
男。
「……?」
振り返る。
「やっぱり」
知っている。
「アイトさん」
◇
「探したよ」
「私を?」
「ああ」
「借金の取り立てじゃないですよね」
「何でだよ」
「私、誰かに貸したかなと思って」
「貸す側なんだ」
「当然です」
「ネルさん!」
「冗談です」
アイトさん。
以前より。
少し。
痩せているように見えた。
でも。
顔色は。
悪くない。
「話がある」
「はい」
「夢の」
少し。
笑う。
「話なんだ」
◇
今朝。
アイトさんは。
夢を見た。
妹の部屋。
そこに。
一人。
少女。
ベッドへ。
座っていた。
◇
「ニム?」
◇
少女は。
首を振った。
◇
「違うよ」
◇
笑う。
◇
「私はミンティア」
◇
夢魔。
ミンティア。
◇
「……」
私は。
何も言わず。
続きを聞いた。
◇
『生きてたのか?』
『分からない』
『分からない?』
『ナイトメア様に否定されて』
身体。
壊れた。
夢。
消えた。
『ずっと』
暗いところ。
漂っていた。
『でも』
突然。
また。
アイトさんの。
夢へ。
来られた。
『多分』
最後。
『お別れを言いに来たんだと思う』
◇
『嫌だ』
◇
アイトさんは。
言った。
◇
『最後じゃない』
◇
『でも』
『また来いよ』
『……』
『夢なんだろ?』
◇
少し。
笑う。
◇
『だったら』
いつでも。
『会いに来ればいい』
◇
『でも』
◇
『俺はもう』
夢に。
閉じ籠もらない。
◇
『ニムの分まで』
生きる。
◇
『お前の分まで、とは言わない』
◇
ミンティアさん。
少し。
驚いた。
◇
『だって』
◇
『お前は』
まだ。
『生きてるかもしれないんだろ?』
◇
『……』
◇
『なら』
自分の分は。
『自分で生きろ』
◇
『……お兄ちゃん』
◇
『また来い』
◇
『うん』
◇
『今度は』
妹のふり。
しなくていい。
◇
『ミンティアとして』
◇
『……うん』
◇
『またね』
◇
そこで。
目が覚めた。
◇
「ただの夢だったのかもしれない」
アイトさんが。
言う。
「……」
「俺が」
もう一度。
会いたい。
そう思ったから。
「自分で作った夢」
「そうかもしれません」
私は。
答える。
「でも」
少し。
笑う。
「違うかもしれません」
「……」
「それでいいんじゃないです?」
「……ああ」
アイトさんも。
笑った。
◇
ミンティアさんが。
本当に。
生きているか。
分からない。
◇
でも。
昨日。
私は。
分からないことを。
分からないまま。
受け入れてもいい。
そう思った。
◇
「また」
アイトさん。
言う。
「会えるかな」
「さあ」
「そこは嘘でも、会えるって言ってくれよ」
「商人は信用が大事なので」
「昨日まで嘘吐きまくってたじゃないか」
「よく覚えてますね」
「忘れるか」
笑う。
◇
別れる。
◇
歩き出して。
私は。
一度だけ。
後ろを見る。
◇
アイトさんも。
こちらを見ていた。
◇
手を振る。
◇
今度は。
ちゃんと。
前へ向く。
◇
L.E.1012年、6月11日。
◇
エメラルドさんとの。
最後の日。
◇
「おはやうございまふ……」
「何です、その顔」
「寝不足でふ……」
「何で?」
「別に……」
「今日でお別れだから眠れなかった?」
「ち、違います!」
「はいはい」
「ネルさんこそ!」
「私はぐっすりでしたよ」
嘘。
◇
朝食。
パン。
スープ。
卵。
エメラルドさんには。
パンの耳。
「私、ネズミじゃないですよ」
「知ってます」
「もっといいところください」
「真ん中?」
「はい」
「高いです」
「同じパンでしょう!?」
笑う。
◇
宿。
出る。
◇
私は。
隣町へ。
エメラルドさんは。
天界へ。
◇
町の門まで。
一緒に。
歩いた。
◇
何も。
話さなかった。
◇
一ヶ月。
ずっと。
うるさかったのに。
◇
今日だけ。
静か。
◇
「……」
◇
言いたいこと。
山ほど。
あった。
◇
指輪。
落とすな。
◇
人の袋で。
寝るな。
◇
勝手に。
人助けへ。
巻き込むな。
◇
情報。
ちゃんと。
先に説明しろ。
◇
それから。
◇
ありがとう。
◇
言えない。
◇
門。
◇
馬小屋。
◇
パトちゃん。
◇
跨る。
◇
「……もう」
口から。
出る。
「お別れですね」
「……」
エメラルドさん。
泣きそう。
「何です、その顔」
「……」
「世界の終わりじゃないでしょう」
「……」
「事件は」
終わった。
「めでたい」
お別れ。
「私も」
笑う。
「せいせいします」
「……」
「毎日毎日」
この。
「うるさい妖精の声を」
聞かなくて。
「済むんですから」
◇
声が。
震えた。
◇
「あれ」
◇
涙。
◇
「……おかしいな」
◇
拭う。
◇
「ネルさん」
「見ないでください」
「でも」
「見ないで」
◇
強い人間。
でいたかった。
◇
昔から。
◇
泣いたって。
何も。
変わらない。
◇
お金があれば。
何とかなる。
◇
誰にも。
頼らない。
◇
私は。
冷たい人間。
◇
そう。
思っていた。
◇
でも。
「……」
泣く。
◇
止まらない。
◇
「私」
笑う。
「こんなに泣き虫でしたっけ」
「知りませんよ」
エメラルドさんも。
泣いている。
「私」
ネルさんと会って。
「一ヶ月しか」
経ってないですから。
「……そうでしたね」
◇
ずっと。
一緒だったような。
気がする。
◇
「ネルさん」
「はい?」
「あと」
少し。
「一緒にいちゃ」
「駄目です」
「即答!?」
「駄目」
◇
それ以上。
一緒にいたら。
◇
本当に。
行けなくなる。
◇
「門までって」
決めた。
「……」
「自分で」
決めたんでしょう。
「……はい」
「なら」
守る。
◇
「でも」
私は。
言う。
「エメラルドさんが動けないなら」
「……」
「私が行きます」
「え?」
「ここにいてください」
「……」
「私の背中が」
見えなくなるまで。
「ずっと」
そこに。
「いていいです」
「……」
「私は」
振り向かない。
◇
パトちゃん。
歩く。
◇
一歩。
◇
二歩。
◇
「ネルさん」
◇
聞こえる。
◇
振り返らない。
◇
前。
◇
また。
一歩。
◇
「ネルさん!」
◇
泣き声。
◇
聞こえる。
◇
でも。
進む。
◇
「ネルさぁああああああああん!」
◇
うるさい。
◇
「絶対!」
◇
うるさい。
◇
「また会いますからねええええええ!」
◇
馬鹿。
◇
「絶対ですからぁあああああああ!」
◇
本当に。
馬鹿。
◇
振り返りたくなる。
◇
だから。
代わりに。
◇
右手。
上げた。
◇
背中を。
向けたまま。
◇
大きく。
◇
手を振った。
◇
返事。
◇
「はい!」
◇
聞こえた。
◇
それで。
十分。
◇
これは。
別れではない。
◇
次に。
会うまで。
◇
少しだけ。
離れるだけ。
◇
◇
◇
――さて。
◇
ここで。
一つ。
◇
今まで。
隠していたことがある。
◇
というより。
◇
ここまで読んだ方なら。
そろそろ。
変だと思っていたかもしれない。
◇
「第1話では」
◇
「第3話で」
◇
「第7話のとき」
◇
私は。
これまで。
何度も。
そんな書き方をした。
◇
変ですよね。
◇
だって。
事件が起きていた当時。
◇
私は。
自分の人生が。
◇
全十話で。
終わるなんて。
◇
知るはずがない。
◇
まして。
ローラさん視点。
サンデーさん視点。
◇
私が。
その場にいなかった。
出来事まで。
◇
どうして。
こうして。
書けるのか。
◇
答えは。
簡単。
◇
あなたが今まで読んでいた文章は、私が事件の最中につけていた日記そのものではありません。
◇
日記を。
元に。
◇
事件が。
すべて終わったあと。
◇
私が。
書き直したものです。
◇
L.E.1012年、7月18日。
◇
こんにちは。
◇
美少女旅商人。
ネル・パースです。
◇
ここまで。
全十話。
◇
読んでくださって。
ありがとうございました。
◇
現在。
私は。
とある宿屋で。
ノートパソコンを開きながら。
この文章の。
最終確認をしています。
◇
画面。
◇
『夢と少女と旅日記』
第十話 夢と少女と旅日記
公開予約
◇
「……同じタイトル」
最終話。
作品タイトル。
同じ。
「まあ」
いいでしょう。
◇
今回。
ネットで。
公開するにあたり。
◇
昔から。
旅の途中で。
書いていた日記。
◇
事件中の。
メモ。
◇
エメラルドさん。
サンデーさん。
サファイアさんから。
聞いた話。
◇
ローラさんが。
残していた。
手帳。
通信記録。
◇
そのほか。
事件関係者の。
証言。
◇
全部。
集めた。
◇
もちろん。
会話を。
一言一句。
覚えているわけではない。
◇
だから。
意味を変えない範囲で。
再構成した。
◇
私が。
その場にいなかった部分。
◇
たとえば。
ローラさんが。
私を休ませて。
一人で広場へ向かったとき。
◇
あの人が。
本当に。
何を考えていたのか。
◇
私には。
永遠に。
分からない。
◇
だから。
残された記録と。
あの人を知る人たちの話を。
組み合わせて。
◇
多分。
こうだったのだろう。
◇
そういう形で。
書いた。
◇
つまり。
◇
これは。
日記であり。
◇
証言であり。
◇
記録であり。
◇
少しだけ。
物語でもある。
◇
そして。
◇
話数を。
付けたのも。
◇
私です。
◇
「第一話」
◇
あの。
道端で。
指輪を拾った日。
◇
「第二話」
◇
ティアナさんと。
メシティカさん。
◇
「第三話」
◇
ロレッタさん。
◇
そう。
一つずつ。
◇
あとから。
分けた。
◇
なので。
◇
途中で私が、
「第3話でロレッタさんが」
◇
などと。
平然と。
書いていたのも。
◇
別に。
未来予知ではありません。
◇
ただの。
編集です。
◇
騙された方。
◇
申し訳ありません。
◇
……まあ。
◇
別に。
重要な嘘でもないでしょう。
◇
それより。
◇
何故。
こんなものを。
わざわざ。
ネットへ。
公開するのか。
◇
そちらの方が。
重要。
◇
理由。
一つ目。
◇
世間には。
未だに。
◇
ナイトメアを倒したのは自分だ。
◇
そう。
名乗っている人が。
たくさんいる。
◇
あれから。
各国が。
調査を始め。
◇
かなりの人は。
嘘だと。
判明した。
◇
当然。
◇
本物は。
私たちなのだから。
◇
先日。
私と。
サンデーさんは。
◇
ヴァルバラッド国。
アレクサンダー王へ。
◇
事件の。
一部始終を。
説明した。
◇
女神様側からも。
確認が取れたらしく。
◇
少なくとも。
私たちが。
事件解決へ関与したこと。
◇
そして。
これから公開する記録が。
大筋において。
事実であること。
◇
国から。
保証をもらった。
◇
だから。
◇
書く。
◇
誰が。
倒したか。
◇
という。
手柄のためではない。
◇
むしろ。
私一人が。
倒したみたいに。
書かれたら。
困る。
◇
私だけでは。
何も。
できなかった。
◇
エメラルドさん。
◇
サンデーさん。
◇
サファイアさん。
◇
女神様。
◇
そして。
◇
ローラさん。
◇
ルビーさん。
◇
二人は。
もう。
◇
「私も戦いました」
◇
そう。
言えない。
◇
だから。
◇
私が。
書く。
◇
少なくとも。
彼女たちが。
◇
何も。
しなかったことに。
されないように。
◇
誰かの。
嘘の武勇伝の。
脇へ。
追いやられないように。
◇
ローラ・モーガン。
◇
ルビー。
◇
確かに。
そこに。
いた。
◇
戦った。
◇
笑った。
◇
生きた。
◇
そのことを。
残す。
◇
それが。
この文章を。
公開する。
◇
一つ目の。
理由。
◇
そして。
◇
二つ目。
◇
「……」
◇
これは。
別に。
世間には。
言わなくても。
いい。
◇
でも。
◇
最後まで。
読んでくれた人には。
◇
少しくらい。
話しても。
いいでしょう。
◇
私は。
◇
忘れたくない。
◇
ケビンさんの。
ドラゴン。
◇
ティアナさんの。
お城。
◇
ロレッタさんとの。
レース。
◇
ローラさんの。
魔法。
◇
サンデーさんの。
能面。
◇
アイトさんと。
ミンティアさん。
◇
エメラルドさんの。
頭突き。
◇
女神様の。
右アッパー。
◇
最後の二つは。
忘れたくても。
忘れられない気もする。
◇
それでも。
◇
全部。
◇
書いておきたい。
◇
人間は。
忘れる。
◇
だから。
書く。
◇
私は。
旅商人。
◇
これから。
また。
旅をする。
◇
町。
変わる。
◇
人。
変わる。
◇
景色。
変わる。
◇
そのうち。
◇
今回のことも。
昔話に。
なる。
◇
それでいい。
◇
でも。
◇
なかったことには。
したくない。
◇
だから。
◇
旅の途中で。
書いていた。
日記を。
◇
物語に。
した。
◇
タイトル。
◇
最初は。
◇
『エターナルドリーマー事件記録』
◇
に。
しようと思った。
◇
「……堅い」
◇
却下。
◇
『美少女旅商人ネル・パースの華麗なる夢魔討伐記』
◇
「……」
◇
悪くない。
◇
でも。
サンデーさんに。
見せたら。
◇
『ネルさんしか出てこないみたいです』
◇
と言われた。
◇
失礼な。
◇
事実。
その通り。
◇
それで。
◇
最終的に。
◇
『夢と少女と旅日記』
◇
に。
した。
◇
夢。
◇
説明。
不要。
◇
今回の。
事件。
そのもの。
◇
旅日記。
◇
これも。
そのまま。
◇
私が。
旅の途中で。
書き続けた。
日記。
◇
では。
◇
少女。
◇
「……」
◇
これだけは。
少し。
恥ずかしい。
◇
多分。
◇
私。
◇
なのだと思う。
◇
昔から。
◇
私は。
自分のことを。
◇
強い人間だと。
思っていた。
◇
正確には。
◇
そう。
思うことに。
していた。
◇
お金。
好き。
◇
人。
信用しない。
◇
泣かない。
◇
誰にも。
頼らない。
◇
そういう。
人間。
◇
だと。
◇
でも。
◇
泣いた。
◇
怖かった。
◇
誰かに。
助けられた。
◇
誰かを。
失った。
◇
誰かと。
離れたくないと。
思った。
◇
それでも。
◇
前へ。
進んだ。
◇
たぶん。
◇
強いとか。
弱いとか。
◇
そんな話では。
なかった。
◇
私は。
◇
最初から。
◇
ただの。
十七歳の。
◇
少女だった。
◇
それで。
◇
よかったらしい。
◇
だから。
◇
夢と。
◇
少女と。
◇
旅日記。
◇
これで。
いい。
◇
さて。
◇
最後に。
一つだけ。
◇
事件が終わって。
しばらく経った。
◇
ある夜。
◇
私は。
夢を見た。
◇
珍しい。
◇
両親が。
死んでから。
◇
ほとんど。
夢というものを。
覚えていなかった。
◇
でも。
◇
その日は。
少しだけ。
覚えている。
◇
家。
◇
昔の。
家。
◇
父。
◇
母。
◇
私。
◇
三人。
◇
食卓。
◇
何を。
食べていたのか。
覚えていない。
◇
何を。
話したのかも。
◇
覚えていない。
◇
ただ。
◇
父が。
笑っていた。
◇
母も。
◇
私も。
◇
昔みたいに。
◇
それだけ。
◇
朝。
◇
目を開けた。
◇
父はいない。
◇
母も。
いない。
◇
私は。
◇
一人。
◇
宿屋。
◇
天井。
◇
現実。
◇
「……」
◇
悲しい。
◇
少し。
◇
でも。
◇
戻りたいとは。
思わなかった。
◇
夢の中へ。
◇
もう一度。
◇
眠って。
◇
あの家へ。
◇
ずっと。
◇
そうは。
思わなかった。
◇
ただ。
◇
「いい夢だったな」
◇
そう。
思った。
◇
それだけ。
◇
夢は。
◇
現実ではない。
◇
だから。
◇
現実の代わりには。
ならない。
◇
でも。
◇
現実ではないから。
◇
価値がない。
◇
わけでもない。
◇
夢の中で。
父と母に。
会った。
◇
あれが。
本物の二人だった。
◇
とは。
思わない。
◇
母の。
最後の言葉の。
答えを。
◇
教えてもらった。
わけでもない。
◇
父の。
最後の気持ちも。
◇
分からないまま。
◇
それでいい。
◇
夢は。
◇
答えを。
くれるために。
◇
見るものでは。
ないのかもしれない。
◇
過去を。
消すためでもない。
◇
現実から。
逃げるためでもない。
◇
時々。
◇
立ち止まって。
◇
忘れていたものを。
◇
拾って。
◇
また。
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目を覚ますため。
◇
そういう。
夢も。
◇
あるのかもしれない。
◇
「……」
◇
公開。
◇
ボタン。
◇
クリック。
◇
『夢と少女と旅日記』
全十話 公開完了
◇
これで。
◇
終わり。
◇
いや。
◇
正確には。
◇
この話が。
終わるだけ。
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私の旅は。
◇
明日も。
続く。
◇
この文章を。
最後まで。
読んでくださった。
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あなたへ。
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夢を見ることを。
怖がらなくても。
いい。
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でも。
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ちゃんと。
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朝になったら。
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目を覚ましてください。
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私も。
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そうします。
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それでは。
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皆様。
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良い夢を。
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美少女旅商人。
ネル・パースより。
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P.S.
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商売のご依頼につきましては。
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下記リンクの。
連絡先より。
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随時。
受け付けております。
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……物語は終わっても。
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商売は。
終わりませんので。




