1.プロローグ
王国中が歓喜に包まれていた。
長く待ち望まれた王女が誕生したのである。
王は盛大な祝宴を開き、国中の貴族と妖精たちを招いた。
玉座の間には、祝福の言葉が次々と響く。
「私はこの子に――『コウコウムショウカ』の祝福を授けましょう。」
第一の妖精が杖を掲げると、黄金の光が王女を包んだ。
王も王妃も、居並ぶ貴族たちも惜しみない拍手を送る。
続いて第二の妖精が微笑む。
「私はこの子に――『ショニンキュウサンジュウマンエン』の祝福を授けましょう。」
歓声はさらに大きくなる。
これほど豊かな未来を約束された王女は、王国の希望そのものだった。
――その時だ。
大広間の扉が、ひとりでに軋みを上げて開く。
冷たい風が吹き込み、祝福の音楽が止んだ。
黒衣の女が、静かに玉座へ歩み寄る。
「……カラボス。」
誰かがその名を口にした瞬間、会場の空気は凍りついた。
招待状を受け取れなかった魔女。
祝宴から締め出された女。
誰もが彼女を睨みつける。
しかしカラボスは怒鳴ることも、笑うこともなかった。
ただ、生まれたばかりの王女を見つめ、小さく息をつく。
「美しい祝福だ。」
その声には皮肉よりも、どこか諦めが滲んでいた。
「ならば私は、この子に呪いを授けよう。」
大広間から悲鳴が上がる。
カラボスは静かに杖を掲げ、厳かに告げた。
「その名は――『ショウガクキン・ポリコレ・キュウヨテンビキ』。」
大広間全体を黒い瘴気が漂う。
カラボスは黒いマントを翻し、静かに大広間を去っていった。
重苦しい沈黙。
誰もが言葉を失い、ただ生まれたばかりの王女を見つめていた。
やがて、最後の妖精が静かに一歩前へ進み出る。
その表情には、これまでの穏やかな笑みはなかった。
「私の力では、カラボスの強力な呪いを完全に防ぐことはできません。」
玉座の間に緊張が走る。
妖精は王女へ杖を向け、優しく微笑んだ。
「しかし、『イクジシエンキン』の祝福を授けましょう。これで呪いを少しは緩和できるはずです。」
杖の先から柔らかな光があふれ、生まれたばかりの王女を包み込む。
王も王妃も、居並ぶ貴族たちも、ようやく安堵の息を漏らした。
こうして王女は、三つの祝福と呪いを受けて、この世に迎えられたのである。




