12 名前
「……………」
『……………』
「………………」
じーっと見つめられ続け早十数分。
体中が穴だらけな気がしてならない…
「飼うのであれば…名前はどうするんだい?」
事の発端はおじさんが言ったこの言葉。
そうか、名前かぁ〜
前世の記憶があるとはいえ、それはあまりにも断片的で、正直自分の名前を私は思い出せない。
まぁもう猫だし、前世にこだわってるわけでもないし、新しい名前を与えられるのはむしろ喜ばしいことだろう。
「………………考える」
子供は一言そう言って、じーっと私を見つめ出した。
どんな名前にしてくれるのかと、ワクワクしながら私も見つめ返した。
―…が、名前を決めるのはなかなか難しいらしい。
さっきからうんうん唸ってばかりで、子供は決められないようだ。
………私だったら毛色からシロとか付けてるな、絶対。
………………名付けられる側からしたらうれしくないね、うん。
…と、うーんとうなり続ける子供の後ろで、ドサドサァと本の山の一つが崩れ落ちた。
そのうちの一冊が子供の背中に激突する。
「…………っっ…!!」
痛みに悶絶しているが、ふと何か目についたのか、子供は本の表表紙をゆったりとなぞった。
「…セーレ」
一瞬、何のことか分からなかった。
「セーレ にする!」
セーレ…それが私の名前…
な、なんか清廉潔白な感じじゃないか!?
私名前負けしそう………なんて考えつつ…
『ありがとうっ!!』
嬉しい気持ちが溢れ出てしょうがないねっ!




