『クローデット伯爵家令嬢キャロライン』
きっかけはお婆様の遺品を整理していた時のことでした。
お婆様が当時の貴族令嬢としてはありえなくくらい奔放な方だったということは噂で聞いておりました。その影響で異母姉が家出をなさったと言うことも。
ただ、それらは私が生まれるはるか以前の出来事。お爺様とお婆様は早くに両親を事故で亡くした私を親代わりになって育ててくださいました。
厳しくも優しいお婆様が異母姉とは言え家族を追い出すとは到底信じられませんでした……お婆様の遺品の中から例の異母姉と思われる方の日記を見つけるまでは。
随分と古い日記帳で、裏にはお婆様の異母姉であるケイト様のお名前が書かれておりました。
それを見つけて始めは少しほっとしたんです。やっぱりお婆様は異母姉のことを気遣っていたのでしょうと。そうでなければ、こんな古い日記などわざわざ残しておいたりはしないはずですから。
それで……ケイト様がどんな方だったのか気になって、つい日記を読んでしまったんです。
……日記にはケイトさまの長年の苦悩と悲しみ、そして、異母妹であるお婆様への思いが書き綴られていました。
周囲の期待に応えなければならないと言うプレッシャー。
周囲の善意に押し殺されて、外見から趣味嗜好まで縛られたまま理想の貴族令嬢として振舞い続けなければならないことへの絶望。
それに対して自由に振舞うことを許される異母妹への嫉妬と羨望と……憎しみ。
……。
……ですが、私が最も衝撃を受けたのは日記の内容ではありません。
最も衝撃的だったのは、その日記の筆跡がお婆様のものとそっくりだったことです!
ケイト様はお婆様に父親や婚約者であったお爺様の愛情を奪われ、絶望して失踪したと聞いておりました。ですが、日記を見て私はふと別の可能性に気づいてしまったのです。
昔、カーレン様とケイト様の両方を見たことがあると言う者がおっしゃっておりました。
お二人は化粧の仕方が全く異なる上、浮かべる表情も違うので一見すると似ていないように思えるけれど、よく見れば姉妹なだけあって顔はとても似通っていたと。
でしたら、ケイト様が妹に成り代わることは可能ではなかったでは無いでしょうか。
ケイト様がお婆様だったのであれば、日記の筆跡のことも、貴族としての教育を受けていなかったはずのカーレン様が家に迎えられてから僅か数年で当主として家を切り盛り出来るようになっていたことにも説明がつきます。
その場合、本物のカーレン様はどこに行ってしまわれたのでしょう。
本人が貴族社会に馴染めず、同意の上で成り代わり姿を消したのであればまだ良いのです。ですが、そうでなかった場合、最も確実なのは……




