〈クローデット伯爵家客間にて①〉
クローデット伯爵家当主代理であるベルナルドは困惑した表情を浮かべていた。
女伯爵であった妻は数年前に他界した。跡取りであった息子夫婦はもっと昔に事故で亡くなっており、今はたった一人残された孫娘を大切に育てている。
その可愛い孫娘キャロラインの様子が最近おかしいので心配していたところ、これまた意外な人物が話があると訪ねてきたのだ。
この国の第四王子アーサー。キャロラインの幼馴染であり恋人でもある。
ただでさえ最近になって亡き妻について調べ回っている者がいると聞いて確認してみればそれが良く知る第四王子で驚いていたところに、この急な来訪である。
「どうして、今になって探偵の真似事のようなことを始められたのですかアーサー殿下?」
「実は、少し前にキャロにプロポーズをしたのだが……」
紅茶を口に含む前で良かった。危うく不敬になるところだった。
「断られてしまったのだ」
「そんな馬鹿な!!!」
結局不敬を働いてしまったが気にしてはいられない。
親代わりとしてはかなり複雑だが、目に入れても痛くない可愛い可愛い孫娘はアーサーのことを大変慕っているのだ。
アーサーにデートに誘われた日は何日も前から張り切って準備をしていたし、誕生日をはじめとした記念日のプレゼントはどれも大切に保管しては嬉しそうに眺めている。それに、今の時代は身分差が昔ほど重視されなくなっている為、王子が伯爵家に婿入りすることも別に問題にならない。キャロラインがプロポーズを断る理由など一つもないはずだ。
「何かの間違いではないでしょうか? 祖父の私が言うのもなんですがあの子は本当に殿下のことを好いているのです。プロポーズを断る理由なんて……」
「まったくもってその通り。正直、私自身断られるとは思ってもみなかった。キャロの為なら婿入りでもなんでもするつもりだったのに……しかし、詳しく話を聞けばどうやらキャロがプロポーズを断ったのは彼女自身に不安があるからなようなのだ」
「そんな……キャロラインの不安とはいったい?」
「それは私からお話しますわお爺様」
声の方を見れば、今まさに話題に上がっていた愛する孫娘がいた。
キャロラインはここ最近見せていた沈んだ表情を浮かべたまま、ぽつりぽつりと話始めた。




