3.リリデス消沈
翌日も血塗れの化物、もといリリデスはやってきた。
ギルドマスターは個人的遠征任務とやらに赴いていた。要は逃げた。
「シルティくん、当分の間このギルドを……そしてリリデスくんのこと、任せましたよ」
そう言った彼の目は澄み切っていた。
私は彼のことが少し嫌いになった。
「皆さん今日もいい天気ですね……! あ、武具のお手入れでもしましょうか!? それ磨きますよ!」
邪教の信奉者は健気に動き回り、皆に声をかけていく。
しかし誰も目を合わせない。言葉も返さない。無視、よくて生返事。
決して構ってはいけないということは皆理解していた。彼女の居場所は、もうないのだから。
「シ、シルティさんはお困りごととかないですかね!? 私なんでもしますよ!」
「……いえ、特に」
「そ、そうですか……あっ、何か依頼とか……! 討伐とかでしたらご一緒できますので! いつでも!」
他に回すような下請けの仕事などなく、あっても彼女に回すなどありえず。
そもそも関わり合いになってはいけないと、ひたすら無視を決め込む。
「……あ、あっ、お掃除とかしてましょうかね! お掃除……ゴミ出しとか……!」
「……」
「あ、あの……。…………。」
――数時間粘るも相手にされないことを知るや、意気消沈しながら彼女は帰っていった。
受け入れてもらえない現実に肩を落とす彼女は少し……いや、かなり不憫であった。
微かな罪悪感と胸の痛みを覚えながらも、彼女の今までを思い返し、これでいいのだと言い聞かせた。
これでいいのだ。我々のため、彼女のためでもあるのだと。どうにか、諦めて欲しいと。
そう言い聞かせつつも、去っていく長身がやけに小さく見えた。