2.リリデス襲来
翌日。
リリデスのいないギルドは平和であった。
そう言いたかった。
「おはようございます皆さん、今日も平穏でありますように……」
普通によろしくやってきた。よろしくない。
ギルドマスターは興奮のあまり失神した。よろしくない。
よろしくなきよろしくの来訪により、我々はある重要問題に直面していることを悟った。
除名された者が意に介さずやってくるという問題である。
追放とはなんなのだろう。
彼女が巨大な槌を振り回す戦闘狂であることも、問題を大きくしていた。
そう、誰より強かった。「血塗れの化物」なるシンプルな通り名は伊達ではなかった。
女性ながら190cmを超える長身。膨大な魔力の全てを肉体強化に注ぎ込んでいる、まさに怪物。
美しきモンスターはいつものごとく、その教えを日課のように語る。
「死こそが最上の救い……。全ての生命に慈悲と救済を……」
邪教に違いなかった。
当たり前である。
「カルランの慈悲によって全てを救いたいだけなのです、皆さんのことも……!」
どうしたって邪教であった。
彼女の布教行為その他諸々により、多くの者がギルドを去っていった。古株すらも。
無法の戦闘力による貢献も帳消し、むしろ負債を抱えていると言わんばかりの始末。
「……リリデス、申し訳ありませんが、今日からあなたはギルドメンバーではありません」
「……除名されたことは分かっております。だからといって、自分の使命を投げ出す訳にはいきません」
「……使命とは?」
「無論一切の救済……皆様に慈悲と救いをば……! 私は決して諦めませんっ! 必ずや皆さんを現世の苦しみから救ってみせます!」
文脈上、皆殺し宣言であった。
たすけてほしい。




