眠る公女、護る砦たち
お待たせしました。読んでいただきありがとうございます^_^
ドタドタドタ!!バタン!!!
「セ、セレナお嬢様?!」
「…マリー、ただいま。」
礼儀作法にうるさい世話役のマリーがノックもなく勢いよくドアを開けたかと思えば血相を変えて走り寄り、ソファに座るセレナをしっかり抱きしめた。部屋に入室する際のノックも無かったことからマリーはそれどころではなく、心配をかけてしまったようだ。理由は何となく読めた。
「倒れたと聞き、心配していたんですよ!今夜は屋敷に戻らないと聞いて落ち着かなくて隣のお部屋を整理をしていたらこちらから物音がして…でも顔色はまだ悪いですね。」
セレナの顔を覗き込むとおでこや頬を触り体温を確かめた。
「もう大丈夫。心配かけてごめんなさい。」
「とにかく早くお休みになる用意をしましょう。それと先生をお呼びして…」
「必要ないわ。先生には王宮で診ていただいたもの。」
セレナが静かに微笑むとマリーも観念しておとなしく休む支度をすることにした。
「ではすぐにお着替えを…」
「自分でやるからそこに置いてて。それよりもみんなに私が戻ったことを伝えてちょうだい。あと誰か訪ねて来ても通さないで。」
「そうですね。畏まりました。では無理のない程度に身支度してくださいませね。」
マリーは節度を守った早足で部屋を退室すると急いで執事長や他へ知らせに回った。
「はぁぁ…」ぽすっ
ーーとりあえず帰って来れてよかったわ。でもアルとあんな別れ方をしたし次に会った時はどんな顔したら…明日また迎えに来たらどうしよう。王子だし、逆らえないわ。
アルフォンスの気持ちに気づいた今でもやっぱり幼馴染で弟的存在としか見れないのにどう接していくべきか戸惑い悩んでいた。このまま陛下の独断で婚約者と発表されれば従うしかなく、クラウドへ自分の気持ちを伝えられないかもしれないと不安になった。
ーーさっきの白い光は魔法だったのかしら?それにこの部屋に転移した魔法も何故急に使えたの?
今日はずっと眠っていたはずなのにソファのクッションに倒れ込み考え事をしているといつの間にか睡魔が襲ってくるのだった。
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フォルン公爵邸書斎
「セレナが部屋に戻っている??」
セブルスは王宮で執務中に衛兵よりセレナが倒れたので症状を診るために今夜は王宮で預かると連絡がきたので心配で面会しようと医務室へ向かったが姿はなく、会わせろと抗議した。そんな宰相を止められるのは国王しかいない。ガイは直ちに帰宅命令を出し、セブルスは急ぎの書類と共に衛兵達に運び出され今はここで仕事に追われていた。屋敷の前には王宮騎士団が立っており、王宮に戻らないよう見張っているようだ。ガイは何を企んでいるんだ?と考えていた最中、セレナが屋敷に戻っていると一報が入った。
「はい。たった今、マリーから報告がありました。お部屋に急に現れたと。今はお休みになられているようです。」
「馬車は?」
「いえ。」
「どうやって帰って来たんだ?魔法か?」
「でもお嬢様は使えないはずでは…?」
「カインをすぐ呼べ。」
「直ちに!」
執事長は走って書斎を出て行く。セブルスも居ても立っても居られず、セレナの部屋へ向かった。ノックをすると少ししてからマリーがドアを静かに開け、隙間から覗いた。
「旦那様?セレナお嬢様はソファでお休みになられたようで…」
「ソファ?ダメじゃないか。」
セブルスは部屋に入りソファですやすやと眠っている愛娘をそっと覗き見てからベッドまで運んだ。
「顔色が青いな。体調が悪くて倒れたのは本当だったのか。」
「えっ?」
「こちらの話だ。とりあえず今夜は何があるかわからないから部屋のドアの前とバルコニーに護衛をつけろ。側にはマリーがいてくれ。」
「畏まりました。命に代えましてもお護りいたします。」
セブルスはガイがセレナを王宮に足留めするために仮病を使ったかもしれないと疑っていたが実際に顔色が悪く、事実だったことにショックを受けた。心配な表情で布団を掛けて娘の頭を撫でた。
「旦那様、後は私にお任せくださいませ。こんなことになった原因を早く突き止めて頂かなければ…不安で休まりませんわ。」
マリーはセブルスより歳が2つ上と近く、両親がフォルン公爵家で仕えていた事情から幼い時から侍従関係でもあり、遊び相手でもあった。だからマリーから多少は"お願い"は言える間柄だ。
「あぁ、その通りだな。後は任せた。明日は学校も休ませよう。外出を控えた方が良さそうだ。」
「畏まりました。仰せのままに。」
セブルスはマリーが深く頭を下げている横を通り、急いで書斎に戻った。これからやることが山積みだと頭痛がした。
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明朝
「おはようございます。アルフォンス王子殿下。お越し頂いたところ申し訳ございませんが娘はあいにく体調が優れませんので本日はお目にかかれません。」
少し寒い馬車停めで早朝からずっと立ち、やっと来た客人を出迎えた屋敷の主人は娘の不調を伝え、頭を下げた。客人に足労を掛けまいと馬車から降りさせず挨拶したところだ。
「おはようごさいます。寒いのに出迎えありがとうございます。セレナはまだ具合が悪いんですね。心配だ。宰相、セレナの顔を見てから学校へ向かいたい。部屋へ案内してくれないか?」
「申し訳ございません。もし殿下に何かあれば国の一大事、故にお通し出来かねます。どうぞいってらっしゃいませ。」
目線はそのまま、胸を張り、毅然とした態度で言葉に思いを乗せて伝える。
「…そこまで言うなら仕方ない。また来る。」
「寛大な心、痛み入ります。」
主人は左胸に右手を当て、頭を下げ見送る。客人はそれを見ず、御者に指示を出し、窓を閉めた。
馬車はロータリーを1周すると門を出て学校の方角へ馬を進めた。
主人は馬車が次の角を曲がるまで頭を下げ続け、やっと頭を上げることができた。
ーー昨朝も迎えに来たと執事長から聞いていたが今日も、とは。油断できん。
機嫌の悪い主人は鋭い眼で門前にいる男達をとらえていた。
「そこの衛兵達!!」
「?!?!」ビクッッっ!!!!
「さ、宰相殿!おはようございます!」
「今朝は冷えるな。夜通し疲れただろう?中で温まりなさい。」
屈強な男達へ次の瞬間には笑顔を振り撒き手招きする。王宮では見たことのない顔面に衛兵達は身震いがした。
「い、いいえ。任務中ですので結構です。」
「宰相命令だ。ついて来なさい。」
この国の宰相の命令とはいえ王宮騎士団の衛兵達の主人は国王だ。命令に背いても罰せられないが怖気付いてしまった衛兵達は監視すべきターゲットの側にいるのだから問題ないと判断してついて行く。
「くっくっくっ。さすが父上。ではこっそり行って参りますよっと。」
カインは密書を持って馬に跨り、衛兵の眼を盗んで公爵邸から抜け出し颯爽と駆け出した。
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学校前
ーー宰相が警戒していたらセレナには会い辛い。厄介だ。
ガチャ…
アルフォンスは今朝も何事もなくセレナを迎えに行ったが会えずどうすべきか考えながら馬車から降りようとしていた。
「おはようございます♡アルフォンス殿下。」
「…?」
いつもの馬車停めのロータリーとは空気が違う。普段は大勢から迎えを受けるが今朝はたった1人。口元を押さえながら降り立った。
「これは珍しい顔だね。」
「これまでお出迎えできず申し訳ございませんでしたわ。でも本日からは毎日この私がお待ちしておりますわ。」
「…なんの冗談だ?ハードン嬢」
アルフォンスは首を傾げ、冷たい目でベルを睨んだ。




