欲しいもの
お待たせして申し訳ございません。ちょっと忙しくて時間取れず。土日頑張ります。
碧い髪を揺らし歩いてきた青年は金色の瞳を光らせながら国王の前まで歩み寄った。
「御前失礼いたします。成人の儀の最中にも関わらず突然申し訳ございません。」
「其方はクラウドだな?」
「はい。ナルシャ国王陛下、妃殿下。お久しぶりでごさいます。」
国王がまだ成人の儀を終了宣言していないため皆が国王達の言動に注目していた。セレナもその場におり、状況が理解できず混乱していた。
ー陛下とクラウド様はお知り合い?
「大きく聡明に成長したな。見違えたぞ。書簡を私に送ったのは其方か?・・・ここでは話せないな。場所を変えよう。」
「いいえ。皆様のお耳に入れたいことがごさいます。この場をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「・・・わかった。成人の儀はこれで終わりとする。」
セレナはこの舞台から降りなければと下がろうとするがクラウドが手を掴んだ。
「セレナ嬢はここにいて。」
「えっ?」
クラウドに手を掴まれセレナは降りられず話は進行されていく。
「これよりエルトニア帝国の使者より伝えたいことがあるそうだ。」
「私はエルトニア帝国、ウィリアム公爵家より参りました。クラウド・ウィリアムです。今宵の素晴らしい会の最中に突然申し訳ございません。」
恭しく頭を下げてから堂々とした風格で話を続ける。
「国王であるシンバ・ローム・エルトニアより書簡を預かってここに参りました。失礼ながら読ませていただきます。」
クラウド・ウィリアムが成人した暁にはエルトニア帝国の大公の称号を授ける。
大公には王に代わり政務や外交の判断を一任する。
「以上です。お時間いただきありがとうございます。
実は本日成人を迎え、私は大公の名を授かることになりました。現在はナルシャ王国に留学中ですが今後は皆様との交流を増やしていく所存です。どうぞ宜しくお願い致します。」
大公とはあまり聞き慣れない呼び名だ。国によって扱い方は異なるが国王の下、公爵より上に当たる爵位のはず。通常は王太子につけられる場合もあるぐらい高い位。
セレナは頭をフル回転にして自分の知識と今の状況を理解しようとしていた。
ークラウド様は一体何者なの?
「ウィリアム大公閣下とお呼びすれば良いのでしょうか?・・・いや、大公殿下か?」
セブルスも戸惑っていた。
大広間も軽く騒ぎになっていた。エルトニア帝国の国王はこんな若造に任せてどういうつもりなのか、もしや世襲交代か?いろんな憶測が飛び交っていた。
「クラウド!」
「あぁカイン。俺も今日から大人の仲間入りだ。一緒に酒が飲めるぞ。」
「何呑気なこと言ってんだ?!今はそれどころじゃないだろ!どういうつもりだ!説明しろ!」
「クラウド様・・・」
「セレナ嬢、大丈夫。心配はいらない。説明するから。」
穏やかに笑うクラウドの表情はいつもより晴れやかだ。
「皆のもの、静まれ。これで私は退がるが会を続けて楽しんでくれ。
クラウド、これから別室で話をしよう。書簡の説明も必要だ。」
国王が会場から退場し、その後ろを妃が続く。王子マルクスは会場にいるベルを見つけるとベルの元へ駆けつけるようだった。
「セレナはもう帰りなさい。今日はおめでとう。また家でお祝いしよう。」
「・・・はい。私はお先に失礼いたします。お父様にお祝いして頂けるのを楽しみにしております。」
ー気になるのに行けないのは当然のこと。お父様からの報告を待つしかない。
それにクラウド様も説明するって言ってくれたわ。
クラウド達の話の続きを聞けない不満を顔に出さないように微笑みながら帰ろうと体の向きを変えたとき、
「フォルン公爵、良ろしければセレナ嬢を馬車まで送る役目を私にさせていただけないでしょうか?」
「・・・あぁ、よろしくお願いいたします。セレナ、くれぐれも失礼のないように。」
「許可いただきありがとうございます。馬車まで無事お送りしましたらすぐ陛下の元へ向かいます。じゃあセレナ嬢、手をこちらに。」
セレナは退場の為に淑女の礼を取り、クラウドの左腕に手を添え、会場をあとにした。
王宮の長い廊下を2人で無言で歩いていた。衛兵も王が奥に退がったのでこの時間はまばらの様だ。
セレナは急に2人になったことで先程の騒ぎは忘れてクラウドと一緒にいる嬉しさで心が満たされていた。でも少しクラウドに物申したいと考えていた。
「1人でも帰れたのにありがとう。」
「お礼なんて必要ない。それに役得だ。今宵のセレナ嬢をエスコート出来てとても幸せだよ。いつもより艶やかで美しくて驚いた。来るつもりはなかったんだが来てよかった。」
「クラウド様こそ正装姿初めて見たからかっこよくて驚いちゃった。それに・・・」
「それに?」
「今日お誕生日ってなぜ教えてくれなかったの?びっくりしたわ。近々とはわかっていたのに私もうっかりしてて・・・クラウド様、お誕生日おめでとう。何かプレゼントを用意したかったわ。ごめんなさい。何か・・・欲しいものはある?」
隣を歩くいつもより魅力的な想い人が自分のために笑ってくれていると思うとそれまで保っていた感情が抑えられなくなりタガが外れてしまった。
クラウドはセレナを廊下の途中にある窓の影に導くとそっと顎を持ち口づけをした。
セレナは唇に何か温かいものが触れるのを感じた。それが何なのか咄嗟にはわからず、身体が硬直して動かない。
「俺がずっと欲しいのはセレナ、君だ。」
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