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無口で清楚なコーニャお嬢様、実は落語の話になるとグイグイくる  作者: 春風亭吉好
俺はコーニャお嬢様に、Vtuber体験をさせる
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第44話 生徒会長の北袋天、ある提案をする

【落語を好きになったキッカケはなんですか?】


『えっと……私のお祖父さま……お祖父ちゃんが落語を好きだったんです。お祖父ちゃんの部屋で聞いているうちに段々と好きになりました』


【週にどれくらい落語を聞くんですか?】


『CDやネットでは毎日聞いています。実は生で見る事ができたのは最近なんです』


【1番好きな落語家は?】


『なんと言っても梅歌《ばいか》師匠です!』


【ももちゃんの師匠だー】


『そうなんです、ももちゃんの師匠でお父さん。梅歌師匠を最初に見たのはインターネットでした。それからずっとCDやネットで見ていたんですが最近生で見る事ができたんです』


【生で見た梅歌師匠はどうでしたか?】


『すっ……ごく良かったです。江戸時代にタイムスリップした様な感覚になりました』


 コーニャがコメントの質問に次々と答えていく。コツを掴んだ様でいい感じにやり取りができている。


【自分では落語をしないんですか?】


 これは思わぬ質問が来た。落語を好きな人が必ず自分でやりたいと思うわけではない。ましてやコーニャは控えめな性格だ。人前でやりたいとは思わない筈だがどう答えるだろうか。


『私は……落語は見ているだけで幸せなんです。自分でやるよりやっている人を見るのが好きです。ただ……』


 少しコーニャが言い淀んだ。何か思うところがあるのか。


『ただ……こうして落語の魅力を、落語がどんなに素晴らしいかを伝える事はしていきたいです。配信でも……それ以外でも』


【おー、いいね】

【私も友達に落語を布教しています】

【これからも落語の魅力を教えてください】


 コーニャの返答に好印象のコメントがつく。配信以外というのは学校の様なリアルでもという事だろう。

 いま落語研究会は俺とコーニャとねねちゃんだけだ。それだけでも楽しいだろうが、コーニャはもっと多くの人に落語の魅力を伝えたいのだろう。

 この配信をきっかけにリアルでも布教できたらいいな。


『あ、それではそろそろお時間です。皆様ご視聴ありがとうございました』


【おつおつ〜】

【また見ます!】

【お疲れッス】

【888888】


 最終的に視聴者は30人前後で安定していた。充分な数だろう。別にトップVtuberを目指しているわけじゃない。コーニャが話の練習をできて、いくらかの人が耳を傾けてくれたらそれでいい。


 ○


 ピロン♪


 配信後に一息付いているとコーニャからメールが届いた。


『今日は見てくれてありがとうございました。どうでしたか?』


「良かったよ、落ち着いて話せていたじゃないか……と」


 ピロン♪


『上戸くんやねねちゃんが見ていてくれたお陰です。お母様も家で見ていました。お陰で楽しく話せました。また明日学校で』


「また明日……と」


 そう、配信は今日だけじゃない。これからも定期的に続けるつもりだ。それだけでなくリアルでも布教できる方法を考えないとな。


 ピロン♪


「ん、またメール。コーニャかな……生徒会長?」


『先程の配信は素晴らしかったですわね。ところで落語研究会の部長の貴方にお話があります。放課後に生徒会室へ来てくださいませ』


 メールは生徒会長からだった。明日生徒会室へ来いという事だがなんの話だろう。

 生徒会長は本人への態度とは裏腹にコーニャの味方だ。悪い話ではない筈。

 最近は俺が生徒会長に落語の知識を指南している。その話だろうか。


 ○○○


「良かった……ですわね!」


 生徒会室へ行くなり満面の笑みの生徒会長こと北袋天《きたぶくろそら》。彼女は表面上はコーニャに冷たいが実は隠れコーニャファン。いわゆるツンデレなのだ。

 コーニャと落語の話をしたいがために俺から落語の知識を学んでいる。

 初心者だろうとコーニャは喜んで話してくれると思うが、ある程度対等の立場で話したいのだろう。

 プライドが高いと言うか、素直になれないと言うか。


「まぁ、落ち着いて話せていたよな。それで、今日呼び出したのはなんだ? また落語に関して聞きたい事があるのか?」

「それもありますが……こちらを」

「ん? これは……?」


 生徒会長が一枚の紙を差し出した。そこには『部活動発表会に関して』と書いてある。


「部活動発表会か、あったなそんなの」

「そう、各部活が秋に新規部員を追加募集するためにアピールする場です」

「去年は部活に入るつもりなかったから余興と思って見ていたなー」


 部活動発表会。途中参加だと実力差が出てしまう運動部というよりは、部員の少ない文化部が追加で新入部員を集める為にアピールするために作られた施策だ。

 特に文化部は説明されないと得体の知れない部活も多いしいい事だ。今年は部活動に関わっているから尚更そう思う。


「これに俺達が出ろと?」

「そうです。特にコーニャさんは配信以外でも落語を多くの方に布教したいみたいですし、いい機会ではないでしょうか? もちろん参加は各部活の自由ですわ」

「なるほど……」


 生徒会長は昨日の配信を見てコーニャの為に勧めてくれているんだろう。ツンとしてるけど本当にコーニャ思いの人だ。


「ありがとう。コーニャ達に聞いてみるよ」


 部活動発表会。コーニャの希望である落語の布教としていい機会だ。きっとやりたがるだろう。

 後はどういう形でやるかだな。まずは部室へ行ってコーニャやねねちゃんに話をしてみよう。

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