第42話 コーニャお嬢様、お母様と会食する
「さぁ、食べてチョウダイ」
「は、はい。いただきます」
「いただきます……」
セバスさんの運転する車に送られ高級そうなホテルのレストランへやってきた。
テーブルでは俺とコーニャが並んで座り、対面側にコーニャのお母さんであるソーニャさんが座っている。セバスさんは車で待っているようだ。
移動中の車の中で俺がソーニャさんにひたすら質問責めにされていた。
「ご両親はどんなシゴトをシテルノ?」「スキなタベモノは?」「オベンキョはデキるノ?」など取り止めもない事ばかりだが。
コーニャと久しぶりに会った様だが殆ど俺とばかり話していた。
「ああ、キンチョウしないで。カジュアルなレストランだからマナーもキビシクないわ。いつも通りタベテちょうだい。それでウエトくんは」
「はい。あ、あの!」
「アラ、ゴメンナサイ。ワタシばっかり喋っちゃっテ。コーニャちゃんにオトモダチできたっていうのがウレシクて」
「ああ、そうだったんですね」
そうか、ずっと引っ込み思案だったコーニャ。そんなコーニャが最近仲良くしている俺だから色々興味を持ってくれたのか。
というかコーニャは俺の事をどう伝えていたのだろうか。ソーニャさんの反応的に悪くは言っていないだろうが……。
すると今まで話に割り込めずにいたコーニャが口を開いた。
「あ、あの、お母様……」
「ナニ? コーニャちゃん」
「いつ……お帰りになったんですか?」
「アア、ゴメンナサイ。驚かせたくてヒミツにしてたのヨ。ケサ帰ってきたのヨ。シゴトが落ち着いて1週間はこっちにいられるワ」
「まぁ、そうなんですね!」
コーニャの顔がパァッと明るくなる。なかなか仕事で帰ってこられない母親と1週間でも一緒にいられるのは嬉しいだろう。逆に我が家は殆ど一緒だからその寂しさは共有できないが。
「あ、そうだコーニャちゃん。ぶいちゅーばー? あれ見たワヨ」
「え……セバスちゃんに聞いたの? まだヒミツだったのに……」
「とても上手にお話できていたジャない。これもウエトくんのオカゲかしら?」
「そ、そうなんです! 上戸くんがいつも助けてくれて……」
また急に俺の話題になってコーニャ、そしてソーニャさんがこちらを見る。なんだか気恥ずかしい。
「ゴメンナサイね、ワタシもパパも仕事でほとんど家に帰れないカラ。コーニャちゃんには寂しい思いをさせていたケド、今はウエトくんみたいなステキなボーイフレンドもいて安心ダワ」
「ボーイフレンドって俺がですか? ええっと、まぁ、はい、友達です」
「お、お母様……」
急に言われてテンパってしまう俺と、照れるコーニャ。そう、俺達は友達なのだ。そういう意味でボーイフレンドというのは間違いではない。
「大人しかったコーニャちゃんが前向きになったみたいだし。ウエトくんのオカゲよ。merci mille fois!」
「ええと、メルシーはありがとう、ですよね。いえ、こちらこそ楽しくさせていただいてます」
「あと1週間はニホンにいるけどその後またフランスへ行かなきゃナノ。でもぶいちゅーばーを続けるナラ向こうでもコーニャちゃんがゲンキってわかるワネ。だからちゃんとやってね」
「お母様……はい……!」
それから美味しい料理を食べながら3人で談笑した。学校での様子はどうだとか、落語についての質問とか。
ソーニャさんは日本は好きだけれど落語までは詳しくないみたいだ。コーニャのお祖父さん、つまりソーニャさんのお義父さんが好きなのは認識していたみたいだけれど。
「あの……ちょっと……お花を摘みに……」
「アラ、イッテラッシャイ」
お花を摘みにってリアルで初めて聞いたぞ。コーニャが席を立ってソーニャさんと2人になる。流石にちょっと気不味い。
「ねぇ、ウエトくん」
「は、はい」
「コーニャの事は、どう思ってるのカシラ?」
「え、えーと……急に言われても」
2人になった途端に直球の質問。そりゃ年頃の娘が男と仲良くしていたらそう思うだろう。俺がコーニャをどう思っているか……。
「大切な……友達です」
「アラ? スキじゃナイ? それとも他にスキなコがいるのカシラ?」
「えっと、好きな子というか……。昔好きだった子がいて、それがおれ……僕のずっと憧れというか。コーニャはその子と似てるから確かに意識はしています。でも今はただ応援したいっていうか……」
そう、それが今の俺の精一杯の答えだ。コーニャを憎からず思っている。でも忘れられないあの子もいる。時折重なる2人の面影。だけど今は友達としてコーニャを応援したい。それだけだ。
「フフッ。思っていた通りのステキなコ。アナタにだったらすぐにでもコーニャちゃんのオムコさんにしたいワ」
「そ、そんな、俺なんて……」
「別にグループをツゲなんて言わないワヨ。優秀な部下もイルシ。コーニャちゃんにも、オムコさんにも、好きな事をやって、楽しく生きてもらえたらイイノ」
「ソーニャさん……」
「ハイ、コーニャちゃんが帰ってきたからこの話はオシマイね」
「え?」
振り向くとそこにはお手洗いから帰ってきたコーニャがいた。俺の少し驚いた表情を見てキョトンとしている。そのまま席についたコーニャ。
「上戸くん……お母様となんのお話をしてたんですか……?」
「えっと、素敵なお母様だなって」
はぐらかす様に言った俺を見て、ソーニャさんが俺だけにわかるようにウインクをした。




