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無口で清楚なコーニャお嬢様、実は落語の話になるとグイグイくる  作者: 春風亭吉好
俺はコーニャお嬢様に、寄席体験をさせたい
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幕間その5 続・コーニャお嬢様、かく想いし

 私は神宿かんじゅく・コーニャ・鷹桜たかお。現在高校2年生。神宿グループ社長であるお父様とフランス人で元女優のお母様との間に生まれた1人娘。

 そして今は落語研究会の部員でもある。


 子供の頃から習い事は沢山したけれど、時間があまりなかったので部活動は初めてだ。

 私がお祖父様の影響で子供の頃からずっと好きだった『落語』。その落語についてお話しする部活である落語研究会。


 私1人ではできなかった事を、最近お友達になった上戸くんがやってくれた。生徒会長の天ちゃんと話をつけて、顧問も部室も見つけてくれて。上戸くんにはお世話になりっぱなしだ。


 それに私がする落語のお話をいつもちゃんと聞いてくれる。子供の頃から好きな事となると夢中になって話してしまう私。

 それで友達から嫌がられてしまう事があったけれど、上戸くんは嫌な顔一つせず聞いてくれる。


「お嬢様、お嬢様!」

「は……セバスちゃん……?」


 考え事をしながら歩いていたけれど、メイドのセバスちゃんに声をかけられて我に帰る。

 いつも車で迎えに来ると言うけれど、他の生徒で車の送り迎えをしてもらっている人は殆どいない。だから私も歩いて移動する。今もセバスちゃんと二人で歩いている。


「もう一度確認しますが、上戸様の部屋では何を?」

「えっと……落語の話をして……チャーハンを作ってもらって……食べただけ」

「……それだけですね?」

「うん……」


 セバスちゃんがしきりに聞いてくる。心配をしてくれているのはわかる。

 でも私は上戸くんを全面的に信頼している。だからお部屋に誘われた時も迷わず行かせてもらった。


 もちろん知らない人に着いて行ったら怖い目にあったり、知り合いでも怖い人に変わってしまう事があるのはなんとなくわかっている。

 それでもこれまでのお付き合いで上戸くんは私の嫌がる事はしないと信じている。


「でもお嬢様、男は怖いものなのですよ」

「上戸くんは……怖くないよ……」

「それでも男女で2人きりになると変わるものなのです。他に誰もいない部屋で2人きり、手と手が触れる、見つめ合う、胸がドキドキして頭の中が真っ白になる。それは何も男女だけの話ではえりません。男と男でも。むしろそちらの方がより昂まる。そう手と手が触れたらその先は2人だけの蜜色の世界に!」

「セバスちゃん……なんの話?」

「ハッ! 失礼しました!」


 セバスちゃんは最近独り言で変な事を言う様になった。男と男がどうたら……? 男の子と男の子が仲良くしてて何がおかしいのだろうか。

 お友達に男とか女とか関係ない。上戸くんとも仲良くなれたし、ねねちゃんも後輩だけど友達の様なものだ。最近はちゃんとお話できてないけど天ちゃんだって。ももちゃんとも友達になれるかな……。


 そういえばお友達のお部屋に行く事は初めてだったかもしれない。

 上戸くんと2人でドキドキ……。ドキドキしていたのだろうか。


 私は落語が大好きだ。梅歌ばいか師匠やほかの師匠たちの、それこそ今日のももちゃんの落語もそう。素敵な落語を聞いていると目の前に新しい世界が広がって胸がドキドキする。


 そのドキドキを誰かに伝えたい。子供の時の事が怖くて、普段は人と話すのが苦手だけれども。胸に溜めた好きな事への想いを誰かに聞いてほしい。


 上戸くんはそんな私の話を聞いてくれる。私のドキドキを受け止めてくれる。私のしたい事をお手伝いしてくれる。本当に素敵なお友達だ。


 ……少し上戸くんに甘え過ぎているかもしれない。このままじゃダメだ。上戸くんが私のためにしてくれた様に、いつか私も上戸くんへお返しをしたい。


「上戸くんは……優しいね……」

「え、上戸様ですか? ま、まぁ確かに彼のお陰でお嬢様も最近楽しそうですし……」

「私……楽しそう?」

「ええ、以前より笑顔が増えました」

「そう……」

「それでも、男性との接触は節度をもってですね。そもそも―」


 セバスちゃんの話を聞きながら改めて思う。私は最近楽しい。上手く笑顔を作れない私だけど、親しい人が気付く位には笑えているんだろう。


 そのキッカケをくれたのは上戸くん。私が彼をどう思っているかは……わからない。

 でもこれからもずっと仲良くしてくれたらと思う。


 いつか彼にお返しできる日まで、できたらそれからも……。

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