六人目:王妃専属女官セシリア
サトリーヌはようやく晩ごはん代わりの軽食をいただけることにテンションアップ!
最後にセシリアと、少し話をすることにしたが……?
※前回のエピソードの後書きにも書きましたが、今回のエピソードから、物語の謎や確信に迫っていく内容になっていますので、もう少し色々考察してみたいなという方はひとまずストップしてください。
今回と次回エピソードで、回答&完結となります。よろしくお願いします。
◯登場人物
サトリーヌ王妃
25歳。たこ焼き大好き。サスペンス大好きで好奇心旺盛。
セシリア
32歳。サトリーヌの専属女官。
カイン国王
30歳。異世界転移してきたサトリーヌの美貌とその才覚に惚れ、求婚し、めでたく正妻として迎えいれた。
ギルバート王弟
27歳。元々サトリーヌと婚約していたものの、他の女性にうつつを抜かしていたため、結局独り身。兄に多額の借金をしている
サーシャ
26歳。数年前に、ギルバートを誘惑し、サトリーヌとの婚約を破棄させた元凶。王城の炊事などを担当している侍女。
ロザミア
30歳。女性の王国騎士団長。カインの同級生であり、若き頃は良きライバルだった。
リディル
27歳。女性の王国魔術師団長。ギルバートの同級生。王国最強の魔力を誇る。
サトリーヌとセシリアは、始めに聞いていた秘宝を持ち出せる可能性のある者、およびその者と関わりの深い人物に一通り話を聞くことができた。
ただ、ひとつ腑に落ちないことがあった。
ふにふにふにふに。
ふにふにふにふに。
「フライドチキンまだかな〜!」
その手に持ってふにふにしてるたこ焼きって、いつ活躍するの!? あんたタイトル知ってる? たこ焼きを片手に事件を解決する、って書いてるよ! 大丈夫??
侍女がフライドチキンと、粒マスタードと、フライドポテトを持ってきてくれた。飲み物はジンジャーエールである。
「うわぁ〜!! ありがと〜! 揚げたて揚げたて!」
「たぶん、めちゃくちゃ熱いので、少し冷ましたほうがいいと思いますよ」
「うんうんっ、あつ〜〜っ!! ホンマに熱かったわ」
セシリアはやれやれといった顔でサトリーヌがチキンにかぶりつくのを眺めている。そして、少しだけ物思いにふける。
そういえば、サトリーヌが召喚されてから色々なことがあったな。
サトリーヌは召喚されたての時から、まぁまぁハチャメチャで。でも、なんだかそんなところが憎めなくて。そして、心優しく、自分だけのためでなく、誰かのために泣けるような女の子だった。
「ん? セッちゃんもチキン食べる?」
「いえ、私はまだお腹空いてないので大丈夫ですよ。それよりゆっくり食べながらでいいので、私とお話しましょうか」
「んぐ……うんうん、もう少しだけ待ってな。このデカいチキンがなかなか手強いんやわ……むぐっ」
チキンに負けたセシリア。まぁ、そこまで急がなくてもいいよね。
「では、食べながらでいいので、少しだけ私の話を聞いていてくださいね。今回の秘宝盗難騒ぎなのですが……」
サトリーヌはジンジャーエールをぐびぐび飲んでチキンを流し込んで一息ついた。
「ようやくお腹落ち着いたわ〜。あ、セッちゃん、ごめんやけども、ウチから先に言うてもええかな?」
セシリアは訝しげな顔をしたが、無言で頷く。
「王家の秘宝持ってるの、セッちゃんやろ?」
「えっ??」
サトリーヌちゃん、いきなりなんなの? それマジ? 手に持ったタコ焼きをにぎにぎしながらサトリーヌは語る。
「なんとなくやけどね、セッちゃんがウチにこの問題を持ち込んできた時から、分かってたような気がするねん。これはウチの勝手な推測なんやけど、今までこういう揉め事とか問題が起きた時。セッちゃんはウチに持ち込むどころか先に全部解決してくれてた。逆にウチから相談することも全部聞いてくれて、解決してくれた」
セシリアは否定も肯定もせず、ただサトリーヌの方を見る。
「やからっていうわけやないけど、今回ウチに持ち込むっていうことは、セッちゃんの手に負えないことか、もしくはセッちゃん自身が仕組んだことかどっちかかなーとは思っててん」
ポテトを一切れつまむサトリーヌ。
「私が仕組んだこと。それに私が秘宝を盗もうとする理由がないでしょう。サトリーヌ様はそんなに私のことが信用できませんか?」
「んー……とりあえずなんやけど。秘宝の内容を言うと、人心を読む能力。これやと聞いた時にウチは閃いてん。あとは少しずつみんなの話聞いててやけど、王家の血筋は秘宝には影響されない」
「はい、その通りですが。私が人の心を読めるようになったところで、私には何もできませんし、何をする動機もないですよ」
セシリアは落ち着いて話す。
「そやねん。それはセッちゃんが悪い理由で秘宝を持ち出した場合やんね?例えばなんやけど、秘宝を持ち出した理由が、誰かのためやった場合はどうやろか」
「誰かのため……とは?」
サトリーヌは、ゆっくり息を吸って……そして吐いた。
「自惚れんな、っちゅう話やけど……ウチのため、やろ?」
セシリアはサトリーヌの方をじっと見た。
そして……はぁっと溜め息をつく。
「食べ物のことばっか……」
「ん? 食べ物がどうしたん?」
「お人好しで、いつも笑顔で、人に妬まれようが、全然気にしなくて。それなのに、危なっかしくて」
セシリアはいきなり語りだす。
「でも、食べ物のことばっか考えてるのはなんなんです??」
セシリアは首にかけて、服の中に潜ませていた、小さな物を取り出してサトリーヌに見せた。
とても小さな宝石が嵌め込まれたネックレスだった。嵌め込まれた石は、赤色のような、緑色のような、角度を変えると色が変わるような、不思議な石だった。
「え? ウチそんなに食べ物のことばっかり考えてないんやけどな……てか、その石めちゃくちゃ綺麗やんね〜!」
「この宝石は、金緑石といって、光の種類によって色が変わる、不思議な宝石です。この宝石に人の心を読む魔力がこめられているそうです」
アレキサンドライトの石言葉は「秘めた想い」である。
「てか、契りとか大層に言ってた割に、サトリーヌ様、カイン陛下とはまだしてないんですね……?」
「セッちゃん、もう乙女にそんな直球聞くもんやないで〜。んとね、ウチ意外とそういうとこはちゃんとしてるんやから」
「いや、普段が隙だらけだから、そんなこと言われても信用できないでしょ?」
セシリアはもう普通にくだけた話し方になっている。
「そんな隙だらけなつもりないんやけどな〜。あ、カインちゃんと、そうなる時ってな。このベイルーン王国のみんなに、カインちゃんとウチを認めてもらった時なんかな、って思ってるんよ」
また、甘っちょろいことを。
「みんなに認めてもらうとか、そんな時来ると思いますか?」
「え?でもセッちゃん、そのためにみんなと話す機会を作ってくれたんやろ? だって自分が秘宝持ってんのに、みんな呼ぶ必要ないもんね〜」
そういえばそうだよね。自作自演の茶番なんて、する必要あったのかな?
「相変わらずサトリーヌ様は人が良すぎる。だから危なっかしいんですよ。人間はそこまでみんな善人ではないですよ」
「まぁそうやと思うけど……でも、逆に言うと、そんなにみんな悪人じゃあないやんね? ってウチは思ってるよ」
「今はまだいいです。でも、これからもっと。もっと嫌なことや、汚いこと。辛いことや苦しいこと。ホントはしたくないことや、見捨てなければいけないことも。もしかしたら経験することになるかもしれない」
サトリーヌはセシリアのことを見つめる。
「基本的には国王陛下が最終的な決断を下します。ですが、その横で貴方は、適切な助言や、時には厳しい意見を。ベイルーン王国全体を守るための、判断をしなければいけない時が来るかもしれない」
「セッちゃん……」
「サトリーヌ様のように……優しすぎる人に王妃は向いていないのです。今回の茶番はそれを証明するための茶番です」
サトリーヌは顔を俯けた。
秘宝を持ち出した黒幕は、セシリアだった。
だが、悪事を働こうとしたわけではないようではあるが……
セシリアの真意とは……?




