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爆走! 玉座ドリフト・プリンセス ~巻き添えにされた男子高校生、地上最速の王女とランデブー!~ 【玉座レース編】  作者: 正座回転ドリフト王子
第2章 玉座グランプリ

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2 ドワッフル族の集落

 ヒロシとドピン子は、カトレアのふるさとであるドワッフル族の集落を訪れていた。

 ベルティーナの玉座(現在:キャンピング仕様)をレース用に改造してもらうためだ。


 ドワッフルたちは、武器や防具、各種アイテムを製造する技術者集団である。

 カトレアのすすめで、この集落にやってきたのだ。


 深い森の中を進むと、ヒロシたちを鉄製の大きな扉が出迎える。

 32ケタの番号をそろえるタイプの錠前が、扉の口を固く閉ざしている。まさに鉄壁。


「こっちが入口です」


 カトレアがリュックから金づちを取り出すと、ひとなぐりして錠前を破壊した。


「壊して大丈夫なのか?」

「カギはハッタリなので問題ないです。毎回こわして入るタイプなので」


 言いながら、カトレアが重そうな鉄扉を軽々と開け放つ。


「いや、ちょっと待て。錠前は誰がかけるんだ?」


 外側から施錠した人はどうすんだ?

 どうやって中に入るんだよ……。

 そんな疑問がヒロシの脳裏をよぎる。


「なんだ。カトレアか。また錠前をぶち壊しやがって……」

「毎回壊して入るタイプなんじゃ?」

「んなわけあるか!」

「ですよね~」


 ヒロシがカトレアに視線を向ける。

 国宝級の半笑いで。


 遠い目をしたカトレアが、「暗証番号、1ケタもおぼえてないんで……」と言い放った。


 それもそうだな。

 32ケタなんて、俺も記憶出来る自信がない……。

 ヒロシがぼやく。


「んで、そっちのオマエは死ね!」


 ダルマ体型のドワッフルな男が、ヒロシを睨む。

 お約束とばかりに、ド直球を投げ込んでくる。


「お父さん、ヤメて……。ヒロシお兄さんは、いいカモなんだから」

「ところで、カトレアのオヤジさん。変顔で俺を和ませようとしているんですか?」

「元からこんな顔だ、てめえ3回くらいブチ殺すぞ! 死ね!」


 カトレアのオヤジさんが、べんらんめぇ口調で語りかけてくる。

 東京の下町を思い出す。日本に生息する江戸っ子でも、そんな話し方をする人には、滅多におめにかかれないだろう。


 高い確立で、語尾に“死ね!”がついてくる。毒はあるが、猛毒ではなさそうだ。

 口と顔は悪いが、きっと良い人に違いない。

 異世界で遭遇する職人は、ガンコおやじと相場が決まっている。

 イメージ通りのオッサンの登場で、ヒロシの顔から自然と笑みがこぼれる。


「てめぇ、娘に手ぇだしたら秒でブチ殺すぞ! 死ね!」


 大振りのハンマー投げそうな勢いで、カトレアの父親らしきドワッフルが悪態をついてくる。

 禿頭なのに、胸毛はボーボーという、いかにも職人といった雰囲気だ。


 だがしかし、オッサンの裸エプロンは勘弁してほしいと、ヒロシは思う。


「筋肉ロリ少女に手は出しませんよ。カワイイ顔してますが、首から下は、ほぼ筋肉だし」

「んで、そっちのピンクの化けモンは、いますぐ壁を直しやがれ!」


 いつの間にか、ベルティーナがヒロシの隣にいた。

 ヒロシらが到着する前に、壁の一部を破壊して、ドワッフルの集落に侵入していたのだ。


 カトレアの親父さんの指さすほうへ、ヒロシが顔を向ける。

 『大』の字に空いた、壁の大穴がヒロシに目に飛び込んできた。

 両手足を大きく広げたベルティーナが、壁を突き破ったらしい。


 ベルティーナの額に書かれた『プリングルスvsチップスター』については、誰も突っ込まなかった。


「ねえ、ドピン子。ドアって知ってる?」

「頭を押し付けて突き破るアレのことかしら? 一度も手で開けたことはないのだけれど」

「おい! おめぇが開けた壁の大穴に詰め込むぞ」

「お父さん。王族にむかって失礼なこと言わないで」


 カトレアは、顔を青くしながらドピン子を恐る恐る見やった。


「しるかっ! んなもん関係あるか! 王族だか、ひょうきん族だか知らねぇよ。用がねえなら、さっさと帰れ!」

「ちなみに、壁の厚さは?」


 目を輝かせたヒロシが、カトレアの父親の方を向く。


「50センチってところじゃねか?」

「新記録だぞ、ドピン子」


 ベルティーナが壊してきた床や壁の厚みは、素材を問わず最高で30センチ。

 石頭王女が、破壊の新記録を打ち出した瞬間だった。


「そうなの? 自己ベスト更新?」


 よくわかっていない様子のベルティーナが、小首を傾げている。

 王女の辞書に『ドア』という文字は載っていない。

 ドアの類は開けずに壊す! が普通と、ベルティーナは思っているらしい。


「いや、もはや“事故”だろ……」


 カトレアの父親が、半笑いで突っ込んでくる。


「あらあら、まあまあ……カトレアがお客さんを連れて来るなんてめずらしいわね」


 カトレアの母親のようだ。

 年齢は不詳だが、少し若くすればカトレアにソックリだ。

 若いころは、美形だったに違いない。


「カトレア……母親に似てよかったな」

「てめぇ、ぶち殺すぞ」

「だって、ほら。ハゲ散らかしるのに胸毛だけがボーボーって、バランス悪すぎですよ。ありあまる胸毛を頭に植毛したほうがいいと、俺は思っていますけどね」

「作業の邪魔だ。用がすんだら、さっさと消えろ!」


 ヒロシは作業場から追い出されてしまった。


「あの様子じゃ、玉座の改造してくれそうにないな」

「人間嫌いですからね……でも、気に入られたら、速攻で手のひら返しますよ」

「そう願いたいが……難しそうだ」

「ということで、私は食材の調達に森へ行ってきます」

「どういうこと? ひとりで行くのか? 護衛するけど?」

「慣れてるんで大丈夫です」

「俺は、ハミデール国王からモンスターの護衛を任されている」

「私はモンスター扱いか! ってか、ピーチ姫のお守りをしたほうが……モンスターの安全のために」

「だよねぇ~」

「お兄さん、なぜに笑顔?」


                 ★


 その日の夕方ちかく。


 割り当てられた部屋(馬小屋)でヒロシがヨロイの手入れをしている時だった。


 ベルティーナが、裸エプロンという出で立ちで訪ねてきた。

 ヒロシが引くほど微妙な格好だった。


「夜食でもどうかと思って」

「メニューは?」

「カレーよっ! ヒロシの居た世界でカレーが嫌いな人なんて存在しないと聴いたわ」


 言いながら、ベルティーナは何故か額からマヨネーズをひねり出している。


「まさか、脳ミソじゃないよな……」


 そんなことより、ドピン子王女は額の『プリングルスvsチップスター』に気づいてないのか?


「安心なさい。正真正銘“ベルネーズ”よ!」


 ベルティーナ+マヨネーズのことらしい。


「ちょっと、記憶が飛ぶくらいで、まったく問題ないわ!」

「問題だらけだろ……」


 練習の甲斐あって、ベルティーナは調味料の類が出せるようになったらしい。

 ベルティーナの頭の大事な部分が溶けだしているのではないかと、ヒロシは試食を拒否している。


「ひとついいか? エプロンのことなんだが――」

「裸エプロンというのかしら? 殿方はこういう格好が好きだと聞いたのだけれど」


 ベルティーナは、エプロンの絵をカラダに描いている。

 王女を前から見ると素っ裸。

 背後からであれば、確かに裸エプロンだ。


 下のプリンセスが全部見えてるんだよ……。

 さすがのヒロシでも目のやり場に困る。


 気絶させて服でも着せようかと悩んでいた時だ。

 扉をノックする音が、馬小屋に響く。

 運悪く、カトレアの母親が訪ねてきたのだ。


 カオスな状況をどう説明したものか。

 このままでは誤解を招きそうだ。

 考える前にカラダが動く。

 ヒロシは咄嗟にベルティーナの尻をケリ飛ばし、山と積まれた牧草の中に突っ込んだ。


「あらあら、まあまあ」


 牧草の山に上半身を突っ込み、尻をまる出しにしたベルティーナを見やる。


「お邪魔だったかしら?」


 寝息を立てるベルティーナの尻を、カトレアの母親が二度見する。


「そんなんじゃありません。腐ってますけど、曲がりなりにも王女なんで」

「分かってますとも。それはいいですが、ヒロシさん、王女さまの扱いがぞんざい過ぎではありませんか?」

「コイツはこれくらいしないと懲りないんで」


 王女には別の部屋が用意されていた。

 ベルティーナが隙をねらってヒロシに夜這いをかけようとしたのだ。

 ヒロシに玉砕された変態王女のパンツに、ヒロシの足跡がついている。


「それにしても、個性的な寝相ですね」


 よほど疲れていたのだろう。

 反対側から顔を出した変態王女は、両腕をピンと伸ばし、スヤスヤと眠りこけている。


「カツオ出汁!」


 和風の夢でもみているのだろうか。

 ベルティーナが寝言を叫ぶ。


「変態の出汁は置いておくとして、何か御用があったんじゃ?」

「そうでした。カトレア(うちの娘)を見ませんでしたか?」


 カトレアの母親が、神妙な面持ちでヒロシを見やった。


 昼間の姿とは異なり、筋肉質なカラダから、華奢な容姿に変わっている。

 ドワッフル属がバキバキな筋肉を保持できるのは、日の出から日没まで。

 日の沈む時間が刻々と迫っている。


「森のなかで危ない目に遭っていないか心配で……。主人は床についてしまって。朝まで起きないと思うのです……」

「探しに行きますよ」


 牧草に頭を突っ込んでいたベティーナの目が覚めたようだ。


「おはなしは聞かせてもらったわ。ドヘンタイ族は、太陽がアレしたときにアレになるね?」


 額のホクロからベルネーズ(マヨネーズ)を垂らしながら、近づいてくる。


「ぜんぜん分かってねぇじゃん……」


 取り敢えず、森へ行ってみるか。

 ベティーナは置いていくとしよう……。

 モンスターが心配だ。


 ヒロシはベルティーナをぶっ倒す方法を考えつつ、カトレア捜索の準備を開始する。


「ドワッフル属がバキバキな筋肉を保持できるのは、日没までなので__」


 神妙な面持ちで、カトレアの母親が口を開いた。


「わかったわ。その“イチモツ”までに、“カトちゃんペっ(カトレア)”を張り倒せばいいのね?」


 ベティーナ王女は、いろいろと分かっていないらしい。

 屈託のない笑顔を、ヒロシに向ける。


「王女さま……あのね……」


 カトレアの母親が、イチモツの意味をベルティーナに説明している。


 顔面から火を噴射したベルティーナが、ヒザを抱えてうずくまった。


 ヒロシが話しかけても、ベルティーナからの返事はない。

 どうやら、ピンクの屍になったらしい。


「王女の討伐、完了です。ご協力感謝します!」


 さて、森へ行ってみるか。

 冒険っぽくて、なんかいいな。

 久しぶりに、やばいモンスターの狩りができそうだ。


 1週間ぶんの食料を携えて、ヒロシが防壁の扉を勢いよく開け放った__。


「良し……帰るか……」


 カトレアが地面に刺さっていた。


 カトレアの収穫、完了。


 ヒロシの大冒険、これにて終了……。


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