第98話 飛び入り!ミスターコン
「さぁ、今年も始まりました! 文化祭恒例、ミスター四季折コンテスト!」
校庭にマイクの電子音が響く。まずは、司会進行役である放送部の部長が自己紹介をし、続いて解説役として呼ばれた眼鏡の生徒会長が挨拶を行った。
軽いオープニングトークの後、手筈通りにオレ達の出番が来る。
「……では、まずは特別審査員として、我が校が誇る可憐な姫君方をご紹介致します!」
わっと歓声に迎えられ、例のランドマーク衣装を纏った棗先輩とオレが、それぞれの護衛人にエスコートされる形で袖からステージへと上がった。
観客席には、見渡す限りの人、人、人。それも普段は居ない一般参加者の存在により、老若男女とりどりの顔触れとなっている。
体育祭や納涼祭で順調に場数を踏んできてはいるものの、やっぱり大勢の人々に注目されることには未だに慣れない。オレは背中に変な汗を掻きつつ、必死に笑顔を貼り付けては、精々優雅に見えるように手を振り、紹介に応えた。
すると突然、司会者がマイクをこちらに向けて、
「高校からの外部受験組のハル姫は今年が初めてのミスターコンですよね! どうですか? 感触は?」
「えっ!? えっと……」
そんな質問されるとか、聞いてないぞ!
慌てて言葉を絞り出す。
「なんていうか、その……姫選抜会の時のことを思い出すといいますか……こんな豪華な特設ステージはなかったですけど」
「ああ、そうですよね! 姫選抜会は言うなればミスターコンならぬミスコンですからね! でしたら、今年の姫に選ばれたハル姫はミス四季折ということになりますね!」
「あ、アハハ……」
余計な称号を増やすなって!
「そして、このステージ! 驚いたでしょう? 姫選抜会では朝礼台がステージ代わりでしたもんね。今回は文化祭ということで、ステージ発表を行う複数団体の為に、期間限定でこのような大掛かりな舞台が組まれているのです。一般の方々にはご覧頂けませんが、本日の後夜祭では姫君方もここでライブステージを行う予定ですよね! そちらも楽しみにしております!」
「あ、ありがとうございます……」
「本当、ボク達のウルトラ可愛いライブを観られないなんて、一般人は可哀想~。でもま、最高のライブにしてあげるから、在校生の下僕共は鼻の下伸ばして待ってろよ!」
棗先輩の手馴れた煽り文句で、一気に会場のボルテージが上がった。
ともかく、予定外のトークは何とか乗り切れたらしい。ステージ脇に用意されていた特別審査員席に棗先輩と並んで腰を下ろすと、司会者が「それでは、そろそろ出場者の方々をお呼びしましょう」と話題を変えた。
「では、陽様、御前失礼致します」
ここで、御影さんがオレの後ろからスッと退く。
「巌隆寺さん、陽様を頼みましたよ」
声掛けに巌隆寺さんが無言で頷き返すのを見届けて、御影さんは袖に戻っていった。
「応募者の中から厳選された十名を出場者とし、更にそこから予選の写真投票を勝ち抜いた上位五名のみが本日の本選に立てる訳ですが……なんと、今年は大番狂わせ! 人気上位の三名がそれぞれの事情により欠場という大変な事態となってしまいました」
どよめく会場。
成程……五人中三人も居なかったら、確かにコンテストは成り立たなかっただろう。だから、運営サイドはあんなに必死だったのか。落選者を繰り上げ合格としても盛り上がらないだろうしな。
ていうか、参加者少なっ! 姫選抜会の時はオレ合わせて三十六人居たよな? 姫に選ばれた方が特典が良いからか……それとも、厳選前はもっと居たのか?
そんなことを考えている内にも、司会者の話は進んでいく。
「そこで今回は特例として、運営が選りすぐった学園内の話題のイケメン達を特別シード枠としてご招待致しました! ――紹介致します! エントリーナンバー1、東雲 暁良くん!」
バッと司会者の指し示した先、舞台袖から東雲が入場してきた。緊張しているのだろうか、普段よりも一層表情が固いというか、眉間のシワが深まっていて三割増くらい強面度が増している。
「えっ……確かにイケメンだけど……」
「何か……恐くない?」
不機嫌そうに見える彼の様子に、観客席からは一部困惑の声が上がった。すかさず、司会者がフォローを入れる。
「おやおや、東雲くん、緊張しているようですねー! 東雲くんはこの秋転校してきたばかりの学園のニューフェイス! 転校当初は諸々不穏な噂もあったようですが、今回の文化祭では実行委員として積極的にクラスに貢献し、また彼の作るオムライスは絶品と名高く、自由時間ではハル姫を喧騒から守る騎士のような姿が注目の的となり、ただいま人気急上昇中です! 果たして、今回どのような活躍ぶりを見せてくれるのでしょうか!? 東雲くん、意気込みは如何ですか?」
「いや……別に」
マイクを突きつけられて、東雲は苦み走ったように顔を歪めた。――ああ、強面度が更に増していく。
東雲、リラックス! リラックス!
心の中で応援しながら前のめりに拳を握っていると、それが通じたのか、東雲はチラリとこちらを見た。途端、ふっと彼の表情が緩む。
「人気とか要らねーから、見てて欲しい相手にだけ見てもらえれば……それでいい」
ざわりと、客席が湧いた。
「きゃー! 何今の!? 一瞬、すごい優しい顔したよね!?」
「ギャップ、えぐぅううい!!」
「え、何? 好きな人居るの!? えー、一途!」
盛り上がる客席を他所に、視線を受けたオレは思わずドキリとしてしまった。
いや、何動揺してるんだ、オレ……オレには、御影さんが居るだろ!
内心、葛藤していると、会場に興奮の波が引いた頃合を見計らって、司会者は次の呼び出しに移った。
「続いて、エントリーナンバー2、御影 冬夜さんです!」
颯爽と舞台袖から姿を表したのは、一旦捌けていた御影さんだった。
「えっ、あの人って……」
「さっき姫のエスコートしてなかった?」
「嬉しー! あの人も出るんだ!」
「あたし、あの人にチェキ撮ってもらったー!」
女性陣の黄色い声が高まっていく。負けじと司会者が声を張る。
「ご存知の通り、御影さんはハル姫の美し過ぎる護衛人として、また此度の文化祭では一年二組の〈女装メイド喫茶〉唯一の執事として、女性客からの圧倒的な支持を得ております! 生徒ではありませんが、学園関係者として我々の要請に応じて頂き、今回は特別参加となりました! いや~、本当に美しいですね! 芸術家の生み出した彫刻のようです!」
「お褒めくださり、光栄に存じます。私などには勿体の無い機会でございますが、主たる陽様の関わる舞台を少しでも盛況へと導くご協力を致したく、参加を表明致しました。此度は、お見苦しいことのないように努めて参りますので、どうかよろしくお願い致します」
つらつらと述べた後、一礼を挟み、姿勢を戻すや御影さんは艶やかに顔を綻ばせた。咲き零れる椿の花の如く秀麗な笑顔に、周囲から、ほぅ……と感嘆の息が漏れる。何人か、貧血を起こしたようにその場にバタバタと倒れた。
その後、こちらを窺うように流してきた彼の視線を受けて、半ば唖然と見つめていたオレは思わず固唾を飲んだ。
――そう、結局、御影さんもミスターコンに飛び入り参加することになったのだった。
あれだけ拒否していたくせに、一体どういう風の吹き回しか。東雲が参加するとなったら、掌を返したように前言撤回したのだ。
――東雲への対抗心?
御影さんは、同じ舞台に立つ東雲に視線を送るや、にっこりと背筋が空寒くなるような笑みを刻んだ。対する東雲は、不快そうに眉間のシワを増やして睨め付ける。二人の間に見えない火花が散っているような気がして、オレは肝を潰した。
――どうなるんだ、コレ……。
さぁ、始まりましたね、ミスターコン!
ついでに、世間様のGW!( ゜ཫ ゜)ゴフッ
例によってサービス業の夜薙には休みなどなく、むしろ地獄の繁盛期到来にございます!
もしかしたら、来週辺り体力的に死んでいて更新逃すかもしれません……( ̄▽ ̄;)
ただでさえ更新亀なので、出来るだけサボりたくないけれど、果たして……。
書けたら、褒めてやってください( )




