103. 捜索③
ダンセット遺跡の地下で、テレサ達の無事な姿を発見して心の中の杖が取れて安心したのも束の間で、目の前の状況をどうすれば最善かを試案していた。
まずは魔物の注意をこちらに向けさせよう!
「ラン~魔物に水魔法を放て!・・ロキ~こちら側におびき寄せるように誘導しろ!」
ランの水魔法はSランクの魔物には致命傷にはならないが、注意を引くには十分威力はある。
すぐに向きを変えこちら側に気付き、毒のある吐息を吐きながら近づいて来た。
「毒のある息に注意しながら距離を取るように!」
ロキがヒットアンドウェイの攻撃で、テレサ達から確実に魔物を遠ざける。
ロキの攻撃方法を見ながら、クロも真似ている。
「タカにラン~テレサさん達と合流して!・・レイナ様はこの液体を飲んで下さい!」
アイテムバックから取り出した紫色の液体瓶をレイナに渡し、自分も飲み干す。
「コウ様~この液体は?」
「一時的に毒耐性を高める解毒剤です。」
本来~毒を事前に防ぐ予防薬は一般的には無い。
解毒薬は体内に毒が入って中毒症状を治療する為、主に毒消し草で薬を作るが、予防で飲んでいても効果は無いし、魔法による状態異常を治すキュアも治療は出来ても予防には効果が無い。
今回の中身は毒耐性スキルを一時的に高めて、毒を無効化または軽減する事を目的に作った試作品だ。
工房で解毒ポーションを作っていた時に、万能薬は作れないのかとシノに尋ねた所、錬金術のレベルが低いのと材料の入手が困難と言われたので、今のレベルで万能薬の代わりになるかもしれないと作った薬が、今回の毒に特化したポーションだ。
「レイナ様~毒の無効化は確実ではないので、吐息は浴びない様に注意して下さい!」
「勿論ですわ~でも・・コウ様が作られたポーションであれば効果は確かだと信じていますわ!」
レイナは一気に走り出し、バジリスクの尻尾である蛇の頭に切りかかる。
蛇の攻撃を盾で防ぎながら巧みにかわし、一瞬の隙を付いて首を切り落とす。
魔物の悲鳴と共に、レイナに向かって毒の息を吐く!
レイナに吐息が降りかかったが、レイナの動きは止まる事なく魔物から距離を取る事に成功した。
「レイナ様!毒は大丈夫ですか?」
「解毒剤のお陰で問題ありませんわ!」
レイナに毒が降りかかった時は焦ったが、解毒ポーションは効いたようで安心した。
尻尾である蛇の攻撃が無くなった事で、後ろからの攻撃が容易に出来るようになった。
レイナが作ったチャンスを無駄には出来ない!
テレサの事も心配だ!・・ここは一気に攻める!
「ファイアーボール!」
従魔達が戦い易い様に、魔物の顔面目掛けて魔法を続けて放つ。
魔法攻撃の威力は小さいが、魔物の注意を散乱するには十分だろう!
従魔達の攻撃はじわじわと効いてきているが流石はSランクの魔物だ!反対に鋭い爪の攻撃で従魔達の傷の方が増えてきている。
持久戦では分が悪い!
「シノ~手伝ってくれるか!」
念話で告げると、俺の後方で戦況をじっと見ていたシノが、剣を構え闇魔力の毒を付与しながら魔物に向かって走り出した。
バシリスクはシノの気配に気付いて、毒ブレスを吐きながら爪で襲い掛かった。
毒ブレスを浴びながらもそのまま突進して、爪を切り落とし尚且つ体に大きな傷を負わせた。
シノは元々毒耐性を持っているので自分より格下の毒に侵される事は無く、反対に剣に付与したシノの毒が相手を侵す。
バシリスクは悲鳴を上げながら逃げるように背を向け、テレサ達が隠れている岩場に突き進んだ!
「まずい!」
思わず声が出たが、テレサ達と合流したランとタカが立ち塞がっていた。
「ウォーターバレット」「アースウォール」
ランの水魔法攻撃で怯んだ後、タカの土壁で魔物の進行を防いだ。
バシリスクは土壁にぶつかると、その場に倒れ込む。
その瞬間、その場に居た従魔達と一緒にレイナとココは一斉に飛び掛かった。
シノは自分の役目は終わったかのようにユックリと俺の元に戻ってくる。
勝負はついた様だ!
バシリスクの息は途絶え、動かなくなった。
「バシリスクを倒しましたわ!」「倒したよ!」「ウォーン」
レイナとココが雄たけびの様な声を出し、従魔達も一緒に吠えている!
「皆~大丈夫?」
声を掛けながら全員の姿を確認し、テレサの元に向かった。
「コウさん~・・・助けに来てくれてありがとうございます。」
蚊のような声で喋るテレサの体はボロボロで、バシリスクの吐息を浴びたであろう容姿で意識がなくなりかけていた。
「早く~テレサさんにキュアとヒールの魔法を掛けて!」
俺の言葉にタカが両方の魔法を続けて掛ける。
彼女の魔法を見てレイナとココは感心している様子だが、シノは少し困った表情をした。
「魔法が効いているのかしら?意識が戻らないわ!」
タカが自分の魔法に疑問を持ったが、シノがすぐに答えた。
「毒は消え、傷も体力も回復しています。多分~気を張っていたのか、安心したんでしょう!」
「暫く休ませておこう!・・他の冒険者は?」
「エルフの男女2人は気を失っているわ~!多分魔力切れだと思いますわ!」
「こちらで気を失って倒れているのは、人族の男の子だよ!」
レイナとココが怪我の程度を確認する。
3人共タカが魔法で治療をする。
彼女の治療を見ていたレイナがつぶやく。
「彼女の魔法は私の回復魔法と比べ物にならない程強力ですわ!」
その言葉を聞いた俺は、すかさず口を挟んだ。
「彼女は僧侶ですよ~回復の専門職ですからレイナ様と比べられませんよ!」
「それはそうですけど~私が知っている僧侶よりも聖女の魔法に近いと思われますわ!」
「そんな事は無いですよ!普通の僧侶で少しばかり魔力が強いだけですよ!」
「レイナさん~タカさんの魔力が凄いのは私達のパーティーにとって、心強い事だから良いことだよ!」
ココが笑顔でレイナに話す。
ココの言葉にレイナも納得した様子である。
2人共俺の魔法を間地かで見ていたせいで、タカやランの魔法威力は当たり前で一般の威力ではない事に気付いていない様子だ~多分感覚がマヒしているんだろう!
「攻撃魔法に回復魔法もある事は、パーティーとしてはとても心強いですわ!私もコウ様の為に思いっきり戦えますわ!」
「バシリスクを倒せたのは、レイナ様の活躍があってこそです。」
「そうだよ!尻尾の蛇の攻撃で近づけなかったから、尻尾を切り落としてくれたお陰で倒せたと言っても過言じゃないよ!」
俺とココの誉め言葉に、思いっ切り照れるレイナ。
「照れますわ~倒せたのは全員のお陰ですわ!・・コウ様の解毒薬に、ココさん達の攻撃とシノさんの一撃、万が一想定外の事が起こってもランちゃんの攻撃魔法に、怪我をしてもタカさんの回復魔法で治せるという安心感がある事で、自分の仕事に専念できましたわ!」
「これが、私ら【黄金の大地】パーティーの力だね!」
レイナもココも上機嫌だ!
しかし、EランクのパーティーがSランクの魔物を倒した事は普通では考えられないだろう!
「コウ様~私達のパーティーの力はDランクに匹敵するのではないでしょうか?」
レイナはランクにこだわる傾向にある。
単独パーティーがSランクの魔物を倒すには、Aランク以上でなければ無理な話だ。
シノのレベルが高すぎて、感覚がマヒしてるかも知れないが、それだけではない感じを覚えた。
「レイナ様~今回のバシリクスは何か変です。本来は簡単に倒せる魔物では無いと思います。」
俺は以前見たバシリスクとは違う違和感を感じていた。




