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夢見の良い枕  作者: 劇鼠らてこ
前章
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43話 『帰り咲くのは幸か不幸か』

サブタイは直感的につけてますが、一応意味はあったりなかったり。

カタカナ系はほぼ意味ないと思いますん。

「よぉ、お二人さん。 今日はあんま長くいられなそうだな?」

「ん……そうですのね。 少し眠るのが遅すぎましたの」

「でも大事な事だったでしょう? なら、少しくらい眠るのが遅くなったっていいのよぉ」


 ログハウス。 涼しい風が頬を撫で、ざわめく樹木が耳を癒す。

 紅茶を飲み続ける枕とそれを抱くエリザ。 上から見ても口がどうなっているのかはわからないようだ。 

 その対面に座って組んだ手に顎を置いているセシリア。 


「良い風ね……。 ここがアドラシコーズ霊峰なの?」

「だと思うぜ。 ランキュニアーの婆さんがここで猫にミルクやってたからな。 猫は婆さんのペットって感じじゃなかったが」

「でも、なぜランキュニアー様の隠れ家が枕さんの中にあるのでしょうか? 枕さんとどういう関係が?」


 紅茶を飲む枕をぎゅっと抱きしめてみるエリザ。 ぐえっという声と共にティーカップが傾き紅茶が零れかけるが、ふっと紅茶とティーカップが消える。 再度同じ場所に顕れたティーカップと紅茶は水平になっていて、枕の耳部分がしっかりとそれを持っていた。

 この空間における紅茶の出し入れをマスターしているようだ。


「まぁフツーに考えりゃ(おれ)を創ったのがランキュニアーの婆さんってトコだろうな。 今日ペイティが情報収集に行ってたはずだが、なんか聴いてねーの?」

「あぁ、それを言いたかったのねぇ。 今日は眠いからって押し切っちゃったわぁ」

「えぇ……」


 今度は紅茶を飲むタイミングを見計らって枕の口となる部分目掛けて指を突っ込むエリザ。 公爵令嬢としては果てしなくはしたない行為であると思うのだが、幸か不幸かここには咎める者がいない。 セシリアはバレなきゃOKというスタンスであるためか、ニコニコと行く末を見守っている。

 はたして、エリザの指は――


「しかし、俺を創ったのがランキュニアーの婆さんだとして……そもそも何のために創ったんだ? ってか、どういう用途の枕だったんだろうな?」

「安眠枕……では? 実際私は枕さんで眠るようになってからとても体調が良いですの」

「ただの安眠枕なら外部の柔らかさだけでいいと思うわねぇ。 こんな空間必要ないわぁ」


 喋りつづける枕。 エリザの指は普通に枕を凹ませるに終わり、その内部へと入っていく事は無かった。

 ただ、その感触が気に入ったらしいエリザはぷにぷにと枕を触り続ける。


「んじゃやっぱ何か目的があっての事だよな。 つっても俺にできるのは記憶を見せる事と会話する事くらいなんだが……俺が知らない機能とかあるのか?」

「えと……そもそもこの場所(ログハウス)って、枕さんが思い描いた場所……というわけではないんですのよね?」

「ん。 基本的にエリザ嬢が居るときだけこの場所(ログハウス)になるな。 ユリアが始めて来た時なんかは荒野だったし、エリザ嬢がいない時は真っ暗の空間だ」

「ふぅん……? エリザが起点になっている、と? でもランキュニアー様とエリザに何か接点あったかしらぁ?」


 恐らく口であろう場所をぷにぷにとされているにも拘らず紅茶を飲み続ける枕。 勿論エリザの指が濡れる事はないし、紅茶が零れると言う事もない。 上から見下ろすエリザの視界には確かにその水嵩を減らしていく紅茶が見えるのに、枕に接触した瞬間に紅茶は見えなくなるのだ。

 エリザはもう少しよく見ようと枕をぎゅうと抱きしめる。 勿論そんなことをすれば、ネグリジェしか纏っていないエリザの果実が枕に押し付けられる。


 羨ましい限りだ。


「いえ……お母様のお客様として来ていた時以外、お話もしていませんの……。 あ、いえ、一度だけロザリアの……その、友人として紹介されましたの」

「あぁ、ロザリア・クロス=クロイツ=クロワ=クローチェ=クロチフィッソとランキュニアー様は友人関係だったわねぇ。 ランキュニアー様はシルバーアイズ様とは師弟関係らしいのだけれど……」

「あー、シルバーアイズもランキュニアーの婆さんに『お師匠様』って言ってたぜ。 ん? って事はシルバーアイズよりロザリアの方が魔法使いとしては上だったりするのか?」

「さぁ……? それと関係があるかはわからないけれど……今日、シルバーアイズ様と会って来たわ。 記憶を見せるには……」

「思い出すだけでいいですの」


 ブゥン、という音がしてスクリーンが中空に上がる。 同時にログハウスやアドラシコーズ霊峰の風景は靄のように消え去り、いつも通りの真っ暗な空間に戻っていた。


 記憶が再生される。










『――お待たせしてすまなかった、ローレイエル公爵夫人。 王国抱えの魔法使い、シャイニングスター・シルバーアイズだ。 一応久方ぶりではあるのだが、覚えているだろうか』

『えぇ。 私がシオンの名を継ぐ前に……一度だけ、お会いしましたね。 お久しぶりです、シルバーアイズ様』

『流石過去最高のシオン、と言ったところかな? 2歳の頃の記憶を覚えているとは……それなら、硬い口調は無くていいだろうか』

『えぇ。 どうぞ砕けてくださいな。 こちらから呼び出してしまったのだし……初代アンチュイ・シオンの名が無ければ多忙を抑えられなかったでしょう?』

『ははは……。 違う……と言いたいが、その通りだ。 王族の方々以外……一部の重役連中は私を消音装置か何かだと勘違いしているようでね。 毎日引っ張りだこ、というわけさ』

『うふふ、私の所にも周ってきますよ。 シルバーアイズ様は断れない性格だ、って』

『……それは、手厳しいな……』


 NOと言えない日本人。 わかります。 

 ニホン人? ですの?

 聞いた事の無い人種ねぇ。 でも、その言葉……何か知っているのかしらぁ?

 確定事項じゃないからなんとも言えねぇ。 それより、なんでこんな話し方なんだよセシリア母ちゃん。


『さぁ、時間も限られている事だし……本題に入りましょう?』

『あぁ、そうだな。 と言っても私は魔法に関する事を聞きたい、とだけ聴かされてきたものでね……本題と言われてもピンとは来ないんだが』

『あら……しっかりと伝えて欲しい、って兵士さんにお願いしたのにねぇ。 まぁいいわ。 今日は聞きたい事とお願い……いえ、依頼が会ってきたの。 まだギルドの登録消してないんでしょう? シオン商会からの指名依頼よ』

『おっと……それは黒歴史、ごほん。 聞いての通り見ての通り私は多忙でね。 長期依頼は受ける事が出来ないが……どんな内容かな?』


 余所行きの話し方くらい持ってるわよぉ。 こんなだらけた喋り方、家族やディニテ達の前でしかしないわぁ。

 そーなんか。 

 興味ないならなんで聞いたんですの……?


『いくつかあるのだけれど……まずは聞きたい事を済ませてしまいましょうか。 バンボラ・ライカップとリーヤン・ライカップについて。 あの2人が傀儡というのは、本当かしら?』


 ぶっこんだーッ!? 

 単刀直入が単純明快な解決方法なのは、古来から決まっている事でしょう?

 ? 何の話……ですの?

 あ、エリザ嬢は見てないんだったか……。


『おや……それは直感(シオン)に由来する情報かな? 生憎だが、私はその情報を有して――』

『あなたがリロイ様と話していたでしょう? シルバーアイズ様がくれた記憶の中で』

『……私が記憶を渡したのはペイティ・オレイユだったはずだが……? どのようにしてソレを見た? 返答次第では、少々手荒な事になりかねないぞ』


 こえーな! つか、もしここでシルバーアイズがセシリア母ちゃんに手を出したら……。

 アトゥー率いるローレイエル家、シオン商会全戦力、ついでにディニテ辺りがクーデターを起こすかもしれないわねぇ。 私だって私の価値くらい理解してるわよぉ。

 ……もしかして、私の場合でも……ですの?

 勿論よぉ。


『聞きたい事の2つ目がソレなの。 シルバーアイズ様、夢で記憶を見る事ができるマジックアイテムを知らないかしら? 私はソレでこの情報を得たのだけれど……』

『何? ……マジックアイテムか。 すまない、私はマジックアイテムに関しては門外漢でね。 現存するエルフで、マジックアイテムを製作できるのはお師匠様……シャフト・ランキュニアー様だけなのだ』

『そう……。 それは困ったわね』

『そのマジックアイテムというのを見せてもらうことは可能か? もし一度貸して頂けるのであれば、お師匠様に見せてくると言う事も出来るが……』


 ぐぇ!? なに!?

 あ、すみませんつい……。 取られると思うと、抱きしめてしまって……。

 ふふ……。


『それは無理かしらねぇ。 仮にも大事な娘の寝具。 相談しておいてなんですけれど、男性に渡すわけにはいかないわぁ』

『いや、その通りだ。 婚約者の居る娘さんの寝具を渡してほしいなど……少し【デリカシー】に、おっと、配慮に欠けていました』


 ん? なんで言い直したんだ?

 なんて言ったんですの? 聞こえませんでしたの。

 え? 配慮が聞こえなかったか? それとも【デリカシー】?


『それで、バンボラとリーヤンの事なのだけれど……』

『……済みません、最上級機密事項にあたるので……魔法による口封じを受けた上でなら、話す事も可能です』

『魔法。 ……魔法、ねぇ?』


 ……やっぱり聞き取れませんの。 マエルド語ではないんですの?

 あー、ユリアとかペイティにも言われたなぁ。 ってことは、英語は全部聞き取れないって事か?

 ふむ……あなただけ……いえ、シルバーアイズ様とあなただけが知っている言語がある、ということでいいかしらぁ?

 あとランキュニアーの婆さんもだな。


『なら、他の聞きたい事を言ってからソレ、かけてもらおうかしら。 その後に答えを貰える?』

『わかりました。 では、どうぞ』


 しかし、口封じした所で(オレ)の存在的に意味ないんじゃないだろうか。

 枕さんがランキュニアー様がお作りになられたマジックアイテムだとするなら、そのお弟子さんのシルバーアイズ様の魔法は負けてしまう……という事ですの?

 魔法というのが何なのかよくわからないから、はっきりとは言えないわねぇ……。


『2つ目が、フランツ殿下の事。 フランツ殿下は現在、何者かの「【サイレント】」……何かしら?』

『すみません、先日私とリロイ様の会話を盗み聞きしていた存在がいたので……保険です。 口封じではなく、消音の魔法になります』

『……ふぅん? ま、続けるわ。 フランツ殿下が現在何者かの魔法に抗っている。 しかし、シルバーアイズ様もリロイ様も何者かはわかっているけれど、その手段がわからない……。 その何者か、が誰なのか。 わかってはいるけれど、王族と王族抱えの魔法使いの裏付けが欲しいわ。 私達は魔法と言う物がよくわかっていないから』

『……いやはや』


 フランツが!? ど、どういう事ですの!?

 あー、前に聞かれそびれたんだよな。 簡単に言うとフランツが操られてるっぽいって話。

 フランツ……そんな……。


『最後に、あなた達エルフの事かしら。 我がローレイエル公爵家が侍女、ペイティ・オレイユ含め、王国内に思いの外いるらしいエルフ……あなた達は、何か隠し事をしているんじゃないかしら? 何も知らないエルフもいるようだけれど、長くを生きているあなたやランキュニアー様のようなエルフは……何者?』

『……流石、と言っておきましょうか』


 あとフレイって侍女もエルフらしいし、ドゥスとメルクマルクもオレイユ家に仕えてたっぽいからエルフかもしれねーよな。 シャルルー家も同じだし。

 ペイティが自身をエルフだと知らなかった理由は何故ですの? 

 現オレイユ家は保守派だからじゃないかしらぁ? 貴族じゃないとはいえ、昔はそれなりに力を持っていたようだし。


『そして、依頼したい事はただ1つよ』

『ほう?』



『フランツ殿下の心を……御救いください。 私の大事な娘の婚約者を、彼の者の魔の手から御救いください。 シャイニングスター・シルバーアイズ様』


『……NOとは言えない日本人、か……』


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