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夢見の良い枕  作者: 劇鼠らてこ
前章
35/59

34話 『家族会議』

完全会話回かな


『む、来たか……座ってくれ』

『遅くなりましたの』

『さて……始めましょうか。 家族会議を』

『いや、話題は家族に関する事では……あるか』


 よくお許しが出たな。

 びっくりしましたの。 まさかお母様の方から許可をくださるなんて……。

 枕の事知ってたりしてな。


『まぁお前たちも分かっているとは思うが、ライカップ家についてだ。 そして、恐らくの元凶……ジェシカ・ライカップについてだな』

『あなた。 まず私の方から話すわ。 ここ数か月、シオン商会で何が起きていたのかを』

『頼む』


 まさか……。

 お母様なら……その可能性も……。

 無いとは言い切れないから怖い……か? 別に知られてても困る事でもないよな。


『ここ数か月の話なのだけれど、商品と帳簿が合わないことが多々あったのよ。 最初は誰かがちょろまかしている可能性も考えたんだけど、どうもそうじゃないらしい、誰かに盗まれているって事がわかったわ』

『丸一日見張りをつけてみたら、とある類の商品……香水や香木、髪櫛だけがフッと宙に溶けるように消えたとの報告が上がったわ。 完全に閉めきっていたにもかかわらずね。

 だから私達は、その商品の行く末を探した。 それは拍子抜けするほど簡単に判明したわ。

 それがライカップ家。 そして、私はその家の当主であるバンボラ・ライカップが盗みを働ける性格じゃないのを知っているわ。 そうよね、あなた』

『うむ。 正義感こそ強いが小心者のあいつに、盗みを働く等ということは無理だろう』

『つまり、下手人はライカップ夫人リーヤンか、娘のジェシカ・ライカップなわけ。 私達はリーヤン・ライカップは無いと判断したわ』

『それは……どうしてですの?』

『あの女はヒステリックで化粧好きで有名だったんだけど、とある日を境にめっきり社交界にでなくなったどころか、お得意様の化粧品も買わなくなったのよ。 まるで、別人になったみたいにね』


 シルバーアイズが言ってたのと同じだな。 リーヤンってのは人間じゃないとか言ってたぞ。

 人間じゃない……ですの?

 魔物ってことか? それともエルフか?


『つまり、リーヤン・ライカップが手を引いている可能性は低いわ。 そして残るジェシカ・ライカップだけれど……これは簡単に、証拠が見つかった。

 ジェシカ・ライカップの荷物の中に盗まれた髪櫛やら香水やらが入っていたのよ。 なにも隠さずにね。 バレないとでも思っているのかしら』

『盗難被害は日を追うごとに増えてね? でもシオン商会の商品倉庫からライカップ家までを追ったっていう明確な証拠がないから、中々手を出せずにいたんだけれど……昨日を境に、ぴったりと止んだのよ。 もう必要が無いとばかりにね』


 んー……なんか違和感あるんだよなぁ……。

 何がですの?

 

『それで、一応他の部下に見張りをさせて小休憩をもらった、ってわけ。 徹夜続きだったから疲れたわ』

『それはいかんぞ、セシリア。 身体を大切にしろ』

『ふふ、家族を残して倒れるほど柔じゃないつもりだけれど……もうちょっと気を付けるわ』


 例えばさ、盗難に関しては変に巧妙っていうか……絶対に見つからないようにやってるだろ? なのに、それを使用するのはバレバレ……。

 行動が噛みあってない、ってか? 確かにジェシカ・ライカップはそんなに警戒していないように見えるな……。 いじめ現場も簡単に見える場所でやってるし、尾行にも気が付いていない……?

 スクアイラは撒かれてましたの。


『じゃあ次はミカルス。 話してくれるわよね?』

『……まぁ、団長と話してきたのなら大丈夫でしょう……。 わかりました。

 僕が今日騎士団を早めに切り上げる事が出来たのは、魔物がいなくなったからです。

 昨日からばったりと報告例がなくなり、全騎士団員がその影を見なくなっています。 まるで偵察はもう必要ないとでも言うかのように』

『騎士団も、か……』


 例えば、あの猫。 なんかすり抜けるみたいな事できただろ? それがあの猫の魔法だとして……ジェシカ・ライカップにそれをかけて、スクアイラを撒いたとか。

 なるほど……。 途中まで尾行(つけ)る事が出来たのは、その魔法がかけられる前だったから、か。

 でもその猫もジェシカさんの使い魔って話でしたの。


『も、というと……軍もですか?』

『あぁ。 本来であれば今日は休暇返上で見張りに着く予定だったのだが……昨日からばったりと途絶えてな。 休暇を過ごす事が出来たというわけだ』

『昨日……?』


 つまり、ジェシカ・ライカップと使い魔は違う思考で動いてる、ってことか?

 の、可能性が高いな。 付け入る隙はそこか?

 なんで付け入るとかいう話が出てくるんですの……?


『昨日だ、エリザ。 昨日何か学園で無かったか?』

『特には……。 あ、でもミルトさんとお話しした時に……何かがこちらを覗いていましたの。 その事は今日シャルルー様とのお話合いで……』

『使い魔だった、という奴だな。 そのあたりが決め手と見るべきか』

『その話は知らないわね……どういう事かしら?』


 おぉ、セシリア母ちゃんでも知らない話があるんだな。

 なんでも知っていたら怖いですの……。

 昨日ってーと……シルバーアイズ様の記憶も昨日のモンなんじゃねーのか?

 だな。 記憶の連続性も確認した。


『……他言無用だ。 シャルルー家にはエルフの血が流れているらしい。 ミルトさんが学園と屋敷で、ディニテも街であの魔物が誰かの使い魔だったと確認している』

『……それは流石に驚きね……。 でも、私の気配を毎回察知できるのはそういう理由かしら』

『団長が……エルフ……?』

『薄まっていて魔法は使えないそうだ。 感知だけできるらしい』

『……あ、あと……ペイティにもエルフの血が』

『へ?』


 あれ、ソレ持って帰ったのか。

 咄嗟に出てしまったんですの。 

 いやぁびっくりしたぜ。


『……どういう事だ、ペイティ。 そんな報告は聞いていないが……』

『へ、あ、いや……すみません、私も初耳で……』

『エリザだけが知っているのかしらぁ? エリザ、その話はどこで聞いたの?』

『えーと……夢の……中? シルバーアイズ様が……あれ?』


 しかし断片的だな。 俺の事は完璧に忘れているようだし。

 枕さんがシルバーアイズ様が言っていた、って言ったのを覚えてたんですのね。

 

『……オレイユ家に確認する必要がありそうね。 それに、シルバーアイズ様か……』

『あ、その……シルバーアイズ様になら、昨日会いましたけれど……』

『何? どこで会ったんだ?』

『えぇっと……その、スラム街で……』


 あ、ランキュニアーの婆さんって追われる身なんだっけ? 逃げたから。

 あー、だから言い淀んでたのか。 


『スラム街? 何故そんなところに行ったんだ』 

『――アトゥー様。 私が指示しました。 シャフト・ランキュニアー様に会ってきなさいと』

『ちょ……』


 あー、これあたしやっちゃった感じか?

 追われる身である元王国魔法使いの身元を軍団長と騎士団副長、情報を操る商会長にバラしたようなもんだな!

 そう言われると大変な気がしますの。


『ランキュニアー様……そんな所におられたのか……』

『はい。 断片的な情報ですが、群青と白色の体色を持つ猫がランキュニアー様と関わりがあるかもしれないと判明したので、伺わせました』

『……その情報はどこで?』

『夢です。 しかし、信頼性のあるものと断じています』


 おお、きっぱりと。

 いや言うしかねーだろ? つか、だからこそセシリア様は私が寝るのを許してくれたんだと思うぜ?

 納得しましたの。


『夢、か……。 それで、何か情報を得られたのか?』

『はい。 私と帰ってきたペイティが、全く同じ夢を見ました。 内容は後で報告書にまとめます。 要約すると、王宮に魔物が侵入した、という物でした』

『魔法という奴か。 ミカルス、王宮に魔物が侵入したという情報は入っているのか?』

『そこまで明確なものはまだ。 ですが、昨日の昼ごろ厳戒令が一時敷かれました。 恐らくそれかと』

『……信憑性も高そうだ』


 ちなみに俺の事は。

 覚えてなかったよ。 誰かが居た事すら覚えてねェ。 あの空間に一緒にいたってより、あの映像をただ夢で見た感じだ。 

 枕さんの事は忘れているというより最初から記憶にない、という感じですの。


『他に何か情報は無かったか?』

『夢では、リロイ様とシルバーアイズ様が話し合いをしている所、魔物がそれを盗み聞いていたと。 そしてその魔物が群青と白色をした猫であると。 さらに、郊外に出た所その猫の魔物が巨大な虎か何かの魔物になったということがわかりました』

『要約しすぎだろう……。 その辺はルーノに似ているなぁ。

 まぁいい。 つまり、エリザとミルトさんの密会。 リロイ様とシルバーアイズ様の密会があってから、魔物の目撃例や盗難が消えたという事になるな』

『そこで必要な情報を得て、偵察や盗難を辞めたと考えれば辻褄は合うわね?』


 エリザ嬢とミルト嬢って何喋ってたっけ?

 魔法に関してミルトさんに聞いたのと……ミルトさんがその猫を使い魔だと見抜いた事ですの。

 リロイ様とシルバーアイズ様は何話してたのか知らないんだよな……。

 それならライカップ家の事と、フランツの事だったぞ。


『問題は何を得たか、だが……』

『すみません、リロイ様とシルバーアイズ様の密会の内容までは分かりませんでした』

『そうか……』


 フランツの事、ですの?

 あぁ。 何かフランツが正気じゃないとか、フランツが今やってる行動はフランツの意思によるものじゃないとか、そんな話だったな。 リロイのおっさんが自分は何もしてやれないって嘆いてたぞ。

 国王をおっさんてお前……。


『夢で情報を、ねぇ……。 私もそんな夢みてみたいわぁ』

『私も……最近夢から情報を得る、ですの』

『……害のあるものじゃないんだね?』

『いえ、どこか安心できるような……』

『問題は、どういう条件でその情報を見る事が出来る夢になるかだな。 それが分かれば色々と解決しそうなんだが』


 あ、すみませんそういう機能の枕じゃないです。

 なんか情報を引き出せる枕だと思われてるよな。

 私達のいう事だけ聞けば、そう思われても仕方がないですの。


『これ以上の情報交換は意味が無さそうねぇ。 そろそろ解散かしらぁ?』

『だな。 明日は各自……エリザはできるだけジェシカ・ライカップに関わらない様にしてくれ。 何があるかわからん』

『騎士団の方でももう少し調査してみます。 あと、団長にも』

『あの、その……在学中に手を出さないようにお願いしましたけれど……もしもの場合は、気にしないで欲しいですの』

『あぁ。 わかっている』

『それじゃあお開きにしましょう。 私も寝させてもらうわ』




『あ、それと……最近ユリアちゃんはエリザと一緒に寝ているみたいだし、今日も寝ていいわよ』


 そんで、今に至ると。

 そういう事だ。

 ですの。


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