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夢見の良い枕  作者: 劇鼠らてこ
前章
30/59

29話 『集い始める意図達』

サブタイ思いつかなくなったんでナンバリングと普通のサブタイにします。


枕ネタはもう無理なんです勘弁してちょうだい!

「にゃっ」


 おぐふっ!?

 夢の中で飛び降りた猫は、それに体が連動したのか俺を蹴り飛ばしてエリザ嬢のベッドから降りた。 凄まじい脚力だ。

 

「……にゃ?」


 猫は思ったより高さが無かった事に気付いたのか、キョロキョロと周りを見回している。

 そして俺を視界に収めると、納得したように頷いてからベランダの方へ向かう。


 そのまま扉をすり抜けて、猫はどこかへ行ってしまった。









 さて、先程見た夢を思い返してみよう。

 見た通りの事を言うのならば、酷くやつれたフランツがいて、その原因は悪夢だというもの。

 気付きそうなもんだが、ジェシカ・ライカップに枕を貰ってから悪夢を見始めている。

 つまり、あの枕に原因があるという事。

 そして、もしかしたら現在のフランツは洗脳染みた事をされているのではないかと言う事だ。


 見た通りを信じるなら、だが。

 忘れてはならないのは、あの猫がジェシカ・ライカップ側――つまり敵側だと言う事。

 シルバーアイズの寄越したプレゼントボックスのような例もある。 つまり、偽の記憶を造るなりしてこちらを懐柔しようとしている可能性があるのだ。

 もっともその場合、これを指示したのも魔法染みた行いをやってのけているのもフランツ、ということになるだろうが。

 ジェシカ・ライカップには、俺達がフランツに好意を持って嬉しい理由がないだろうから。 むしろ逆に、嫌わせるだろう。


 今記憶を見せたのが意図的な行動であるのならば、全ての元凶はフランツ。

 今記憶を見せたのが猫の気まぐれな行為ならば、全ての元凶はジェシカ・ライカップになる。


 しかしあの猫は使い魔、とかいうのなんだよな……。 創作物で使い魔といえば、契約者の意思を汲み取って動くようなものを思い浮かべる。 1個体というよりは術者の端末のようなモノ。


 そう考えると、ジェシカ・ライカップをも操って何かをしようとしているのがフランツ、という事になるのだが……。 何を? というか何のために?

 エリザ嬢との婚約を破棄するため……? だったら、こんな回りくどい方法をとらなくてもいいだろう。

 軍や騎士団を嗅ぎまわっているあたり、国の乗っ取りでも考えているのか? 王子が?


 そもそも、意図的に見せたのならば(オレ)の存在も知っているのか?


 うーん、どうにもフランツが原因だとは考えにくい。


 やっぱりジェシカ・ライカップが黒幕だよなぁ。

 シルバーアイズと王様の会話もヒントになりそうなんだよな……。


『バンボラとリーヤンには、やはり例の魔法がかかっているのか?』

『十中八九そうでしょう。 バンボラ様には欠片程の意識が見られましたが、リーヤン様はもう……。 アレは、既に人間では……』


 バンボラ・ライカップもリーヤン・ライカップもジェシカ・ライカップに何かされている? こう、操ったりする魔法かなんかで。

 んで、父ちゃんであるほうのバンボラ・ライカップは意識が辛うじて有って、母ちゃんのリーヤン・ライカップにはもう無いって事か?


 アレ、いま普通に考えてたけど、ジェシカ・ライカップも魔法を使えるのかな。

 魔法使いってエルフの血をひいてる必要があるんじゃないっけ。

 ライカップ家はエルフの家系……?


 うーん、情報が少ないな。


 とりあえずエリザ嬢の帰りと、ユリアやペイティが情報集めてくるのを待つしかないか……。

















 


 ぽふ、という音を立ててエリザは自分のベッドに顔から倒れた。

 非常に疲れた、という感じに手足を投げだし、右腕で枕を手繰り寄せようとする。

 だが。


「……ぬあ?」


 顔をベッドに押し付けているせいもあるのだが、くぐもった……到底淑女とは思えない疑問の声を上げるエリザ。 

 エリザは顔を伏せたまま右腕で枕を探すが、何故か右手は空を切る。

 もしや無くなってしまった――あまりにも依存しすぎて、お母様あたりに没収されたのではないかと思い、エリザはガバっと顔を上げた。


「あ……よかった……ありましたの……」


 その視界には枕。 何故か壁に張り付くようにしてもたれ掛っているが、何も変わらない自分の枕がそこにあった。

 その事実に心底安堵している自分に気が付き、何故か気恥ずかしくなるエリザ。

 今日の訪問は公式の場ではなかったとはいえ、あの女伯爵と正面向かって話すのは中々気力を持っていかれるのだ。 もう心の安定剤と言っても過言ではない温かみを持つ枕に触れ、気が抜けるのは仕方のない事であった。


 そのまま、エリザは眠りに就いた。
















『シャルルー家に行くのは何時(いつ)ぶりだったか』

『えーっと……確か学園に入る前……ですの』


 おー……これ馬車の中?

 ですの。 シャルルー家は王城を挟んでローレイエル家の反対側にありますの。


『そうか……もうそんなに経つのか。 時が過ぎるのは速いな……』

『そうですの? 私は……そうは感じませんの』


 そうなの?

 はいですの。 色々あったという事も大きいですが……現実の私は覚えていないとはいえ、枕さんに出会う前とは倍の時間を過ごしているのがあると思いますの。


『お前はそれでいい。 若いうちに停滞を感じる必要はないからな』

『お父様は、日々が楽しくありませんの?』

『……どうだろうな……。 毎日同じことがおこるというわけではない。 むしろ最近は色々と手のかかる事ばかりだ。 だが……確かに若い頃と比べれば、つまらないと思う様になったのかもしれんな……』


 ……。

 お父様は今のお仕事が楽しくないのでしょうか……。

 いや、多分そういう事じゃあないと思うけど……。


『若い頃、ですの? そういえばディニテ様とお父様は幼馴染でしたか?』

『うむ。 ディニテとは、幼い頃から共に高め合って来たライバルのようなものだ』

『でも、シャルルー家とローレイエル家はかなり離れてますの。 どのような経緯で幼馴染になったんですの?』


 幼馴染ってなるものなのか?

 え……、私とユリアがそうですし……。

 あー、そうかエリザ嬢は普通じゃなかったな……。


『なんという事はないさ。 40年……もう少し後だったか、王国内に魔物が入り込む事件があったのだ。 学園で習ったりはしなかったか?』

『38年前の事件ですのね。 わかりますの。 でも深くは語られませんでしたの』

『うむ。 その事件の真相というのがな、魔物を倒したのは当時の騎士団でも軍でも無く、たまたまその場に居合わせた6歳の少年と4歳の少女だった、というものだ』


 そんな事件があったのか。

 えぇ。 大きな鳥の魔物が壁を超え、侵入してきたそうですの。


『まさか……』

『そうだ。 それが私と、ディニテだったというわけだ。 そこから始まった腐れ縁が今も続いているというだけだ。 互いに高め合う対象として、だがな』

『公爵様。 到着しましたィ』

『む。 それでは行くぞ、エリザ。 公式の場は最初だけだ。 そう気を張らなくていい』

『今の話を聞いた後だと……いえ、頑張りますの』

『だから気を張るなと私は言ったのだがな……』


 6歳と4歳が倒せるほど小さい魔物だった、とか?

 それなら騎士団や軍が出てくるほどの騒ぎになりませんの。 学園の先生は、翼幅が10m程あったといってましたの。 実際にその場を見ていた1人だと。

 どんな化け物だよ……。


『ようこそ、シャルルー家へ。 歓迎するよ、ローレイエル公爵。 いや、ローレイエル軍団長と言った方がいいかな?』

『急な訪問への対応、感謝する。 シャルルー伯爵……いや、シャルルー騎士団長』


 うわー……。 めちゃくちゃ美人……。 すっげぇ綺麗な銀髪だな……。

 ミルトさんのお母様ですもの。 とても似ていますのよ。

 んー、ミルト嬢は温和美少女だけど、ディニテ母ちゃんは吊り目美人って感じだな。

 母ちゃん、って……。 いえ、今に始まった事ではないのですけれど……。


『本日はお邪魔しますの。 シャルルー伯爵様』

『あぁ、エリザ様もよくいらっしゃいました。 さ、中へ入ってください』


 なんかあからさまに態度が違うような。

 私は一応、本当に一応、まだフランツの婚約者ですの。 シャルルー家の敷地内とはいえ玄関先。 どこに聞き耳があるかわかりませんのよ。

 あー、未来の王妃に余計な態度は取れない、か。


『……』

『……』


 なんで無言?

 廊下だからですの。 応接間に入ればきっと驚きますの。


『……ふぅ。 さて、もういいでしょう。 久しぶりねアトゥー。 精進しているかしら?』

『愚問だなディニテ。 そちらこそ事務仕事ばかりで腕が鈍ってないのか?』

『ハッ、なら試してみる? 久方ぶりの手合せよ』

『望むところ、と言いたいところだがな。 とりあえず用事を済ませてからにしようじゃないか。 その後に、でも遅くはあるまい』

『ならさっさと話しなさいな。 あぁ……フレイ。 ミルトを呼んできて。 あの子にも聞かせなければならない話だから』

『御意』


 一気にフレンドリーというか……砕けたな。

 えぇ。 お父様もディニテ様もとても楽しそうに笑っていますの。 家族に見せる顔とはまた違う……子供のような顔ですの。

 

『いやぁしかし……エリザちゃんも大きくなったわね。 どんどん女性らしくなって……』

『ふぇっ!? い、あ、え、ありがとうございますの!』

『そう緊張する事はないぞエリザ。 確かにコイツは相手の実力を見る為にとりあえず殺気を飛ばしてみる、などという迷惑行為をする奴だが、戦時でもなければ普通の人間だ。 む、前に来た時もこのような事を言ったような……』

『あの時はさらに緊張していたわね。 私自身顔や出で立ちが怖がられるのは理解しているし。 でもアトゥー……あなたのお父様よりは怖くないでしょう?』

『えぇ!? ……は、はいですの』

『そこは否定してくれても良いのだぞ、エリザ……』


 アトゥー父ちゃんに100ダメージ!

 100だめーじ……? なんですの、それ。

 特に意味はないぞ。


『お母様、遅れて申し訳ありません。 そしてローレイエル公爵様、エリザ様、ようこそいらっしゃいました』

『あー、いいわよミルト。 もう堅苦しい挨拶は終わったの。 こっち来て座りなさい?』

『はい』


 





『それじゃ、ミルトも来たことだし始めましょ。 

 現在王国に起きている事の情報交換と、今後ライカップ家にどういう対応を取っていくかの会議をね』


使われない設定、背後関係、時代背景っていいですよね。

質問された時にだけ出すみたいなの憧れます()

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