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第十話『歓迎、そして一歩踏み間違える青春』9

 調理室に行くと、相変わらずクッキー作りに奮闘している桃の姿があった。

 「皆さん、来たんですね。待ってました」

 「待ってたと言うのはどういう事だ?」

 俺は珍しい事を桃が言うもんなので、つい聞きたくなってしまった。

 いつもは軽く挨拶をし、すぐにクッキー作りを再開する。

 だが、今日は今も俺たちの方を見ている。

 「もちろん、試食です!!」

 元気に質問に答え、完成したクッキーを渡してきた。

 またかと少し呆れながら、クッキーを受け取った。

 「うん?」

 これ、本当に桃のクッキーか? 

 そのクッキーは今まで、桃が作ってきたクッキーとはまるで違っていた。

 今日は姫野や花澤はいない。

 というと、つまりこのクッキーは桃が作ったという事になる。

 「これ、桃が作ったのかい?」

 高城も疑問に思ったらしく、桃に尋ねる。

 「もちろん。正真正銘、私が作ったクッキーです」

 少し威張るように答えると、さあ食べていわんばかりの表情を俺たちに見せる。

 少し不安な気持ちがあったが、今の桃を見たらそれも無くなった。

 こんなに自信ありげな桃を見るのはこれが初めてだろう。

 俺は一切の躊躇なく、クッキーを食べた。

 「うっ美味い」

 「えっ!! 本当!?」

 俺の反応に桃は今にも飛び上がりそうな程嬉しそうだった。

 俺は視線で霧島と高城に感想を求めた。

 「美味い。桃っちのクッキーとは思えないぜ」

 「とても美味しいよ。上達したんだね」

 その感想を聞いて桃は胸を撫で下ろした。

 まさか、ここまで上達するとは思ってみなかった。

 正直、この準備期間では間に合わないだろうと思っていた。

 桃の頑張りを神様が見てくれていたのだろうか。

 俺もだいぶマシな考えが出来るようになったな。

 「これだったら、出しても全然大丈夫だな」

 霧島も高城も同意見だったようだ。

 「ありがとうございます!! 本当に嬉しいです!!」

 「おい、泣く事か」

 気付けば、桃の目には涙が浮かんでいた。

 余程嬉しかったのだろう。

 「はい……。私、ここまで上達した事は今まで初めてで……」

 すると、高城が俺の元に寄って来て、

 「中学生の頃の話だから」

 おい、雰囲気を打ち壊すな。

 俺は心の中で突っ込んだ。

 まあ、そうだろうなとは思っていたが。

 「本当に……ありがとうございました!!」

 とはいえ、この笑顔も嘘とは思えないな。

 話は嘘でもこの表情は嘘を吐いていなかった。

 なら、俺の返答はこれしかない。

 「披露会、一緒に頑張ろうな!!」

 「はい!!」

 これで、披露会準備は終わりを迎える。

 依頼としても。

 ようやく俺も休息が出来るようだ。

 「ただいま!!」

 俺が安堵していると、仕事を終えた花澤と姫野が戻って来た。

 相変わらず元気な花澤ともう休みたそうな顔をしている姫野がそこにいた。

 改めてみるとこいつらって正反対だと思った。

 「姫野たちも仕事が終わったか」

 「ええ。さすがにもう休みたいわ」

 「私はまだまだですけどね」

 凄いな、花澤。

 「桃さん。クッキー作りどうかしら?」

 「ばっちりです!!」

 そう言い、ピースをする。

 意外と桃はまだ子供なのかもな。

 そういうところに高城は気になったのだろうか。

 まあ、そんなことは別にいいか。

 「いよいよ明日ね」

 「そうですね」

 「本番、頑張りましょうね!!」

 みんな、やる気充分のようだ。

 何だかんだで意外と時が早く過ぎた。

 最初はだるくてしょうがなかったが、今はそんなことはない。むしろ楽しいくらいだ。

 そんな時間も過ぎて、明日が最後。

 いよいよ、本番だ。

 その時はどう思うのだろうか。

 まあ、それは明日分かるからいいか。

 こうして披露会準備最終日を終えた。

 

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