第八話『創設と強制』3
謎の部活に加入させられてから、一日が経った。
俺は再び放課後昨日連れてこられた部屋にある席に座っている。
もちろん、姫野たちもいる。
この部屋は机や椅子が奥に積まれており、その空いたスペースを部室として利用している。
後は、ピンク色のカーテンやホワイトボードがあるぐらいだ。本当に地味な部屋なのである。
読書には最適だが、部活をするとなるとどうかと悩んでしまう。
「「「…………」」」
やはり昨日だけではこの雰囲気に慣れてる事が出来ないのか、相変わらずの静寂だった。
俺もその沈黙の中で今か今かと始まるのかと冷たい麦茶(これしか部室になかったので)を飲みながら待っていた。
すると、ガランと扉が開いた。
「皆さん、集まっているみたいですね!! では、始めましょうか!!」
いつも通り元気そうな上野先生先導の元ようやく始まった。
そういえば、何を話し合うだっけ。
「じゃあ、まずはこの部活は何をするのかを決めよう」
そうだったな。今、思い出した。
やべぇ。考えてきてないぞ。どうしようか。
一瞬霧島がこちらを見たが、様子で感じたらしく聞く人を変えた。
まあ、霧島以外だったら、見てくれないけどな。女子によく「あなた……特になさそうね」って言われる。
いや、俺だって考えて来てる時はあるんだぜ。さすがに少しぐらい相手してほしい。まあ、採用されないんだけどな。
「じゃあ、まずは花澤からお願い」
俺がそんなトラウマを思い出している内に最初に誰が発表するか決めたようだ。
花澤は頷くと部活について書いたものだろうか、それっぽい紙を出した。
「えっと……私は生徒が困っていたら助ける……救急部が良いと思います!!」
それ、どんな部だよ。と言うか内容が漠然とし過ぎている。
俺はあまり良いとは思わない。姫野もあまり好まない様子で少しため息を吐いている。
「内容がよく分からないし、どうやって生徒を助けるの? さすがに生徒全員を助けるのは無理があると思うのだけれど」
その意見を姫野に言われて、花澤は感心としていると同時にしょぼんとしている。
確かにそうだ。全く持って同じ意見である。
姫野さん、あなたエスパーですか。俺、それ言いたかったんだけど。
これが、以心伝心というものか。嫌だ、こんな奴と一緒なんて。
「はぁ~……。あなた、なぜ私を睨んでいるの? 気持ち悪いわ。反対なの?」
どうやら俺は姫野を睨んでしまっていたみたいだ。無意識って怖いですね。
おかげで、逆に姫野に睨まれた。というか気持ち悪いわ余計だ。
「それはすまん。だが、反対ではない。むしろ賛成だ」
それは聞いて花澤は余計に暗くなってしまった。
心弱すぎだろう。ぼっちの世界じゃこれが毎日だぞ。毎日だ。
まあ、でも女子の意見を否定するのはあまり良い気分になれない。
「まあその……何だ。案として良いけど、部活としては難しいと言う事だ」
俺なりの励ましを花澤にしてあげた。少し花澤が驚いた表情をしている。
まあ、俺らしくはないか。
「そうですね!! この案では難しいですよね」
少しは立ち直ってくれたのかいつもの明るいトーンに戻った。
意外と心が弱いタイプなのかもな。
「じゃあ、次は私ね」
そのちょっとほんわかした空気を破ったのは姫野だった。
口にしながら、花澤と同じように紙を出した。
うん?何か、デジャブ感半端ないだが。
「生徒の願いを聞く……そう言うならば支援部ね」
「おい、先ほどあまり変わらない気がするんだが……」
俺の言葉で気付いたらしく紙を急いで確認している。
ほんの少しだが、姫野は顔が赤かった。
こういう時は可愛いよな、こいつ。改めてそう思った。
「姫野さん……」
花澤が少し嬉しそうなのか悲しそうなのか微妙な表情をしていた。
確かに同じ意見だったと言う事は嬉しいはずだが、それならなぜ反対したのか考えてしまうからな。
「まあ、結局目的は変わらないと言う事ね」
何か、適当にまとめられた。まあ、中々新しい部活を作るって言ってもやはり酷である。
昔、そんな俺がいたが、結局はみんなにばかにされて終わった。
なら、俺が一番求めているものにしてみよう。
「じゃあ……次は俺だな。俺はせ」
「いや、言わなくていい。言いたいことはもう分かるから」
俺は途中で霧島の案を止めた。もう何となく結果が分かっている。
また、姫野や花澤と似たような事を提案するのだろう。
それを理解しているらしく、これ以上提案しようとしなかった。
「みんな~……もう少し考えてみましょう」
少し焦ったのか上野先生はそう口にした。
もうそろそろ言うか。まあ、決定するかどうかは別として。
「青春部」
「え?」
俺が漢字にして三文字の言葉を言うと、一番に驚き反応したのは姫野だった。
他のみんなも口を開いている。
「生徒同士で青春を送り、青春の中で手を差し伸べ合う部活。青春部はどうか?」
俺は説明を加えた。
青春。その言葉は俺が一番嫌いではあるが、一番心に引っ掛かっているものである。
呪いで青春を送れなかった分、ここで送りたい。それが、俺の願望であり、わがままである。
青春は幻想だ。だが、それを追い求めていくのも悪くないかもしれない。
「青春部……私は嫌いじゃないわ」
「私もです!!」
「俺はそういうの待ってたよ!!」
どうやら、みんな賛成のようだ。
みんなが言っていた人を助けると言うのは自分も利益というわけではないが安らぎを得たい。つまり、こじ付けにはなるが青春を送りたいと言う事だ。
人は青春をしたいから動き、そして助け合う。その中で安らぎを得られるから。
口にはしないが、きっと思っていることは同じなんだろう。
「青春部は良いですね!! 私も気に入りました!!」
上野先生も嬉しそうだ。どうやら、少しは先生のご希望に添えられたみたいだ。
何もないこの部屋から新たな青春を作りだす。
何か、俺らしくないな。
「じゃあ、決まりね。この部活は生徒と共に青春を送り、青春を送っている同士で手を差し伸べ合う……青春部。それが私たちの部活になるわ」
姫野の言った言葉にうんうんと頷く花澤、霧島。
俺も少し頷いた。
「美味しい所は持ってくんだな……」
「何か言ったかしら、杉山」
「いや、何も」
俺は素っ気ない返事をした。




