第八話『創設と強制』4
俺の意見で何となく決まってしまった青春部。今、丁度五時を過ぎたくらいか。
この季節はこの時間帯になってもとにかく暑い。もう夏だなって感じると、同時に夏ってうぜぇとも感じる。
まあ、五月の終盤だししょうがないか。俺は冷たい麦茶でも飲みながら、そんなどうでもいい事を考えていた。
あの後から、話し合いが進んでいない。ただ、青春部をどうするかを自分の中で考えているだけ。分かっていてもそうしてしまう。
それが青春という名の麻薬なのである。そんな中で姫野は本当に部活をどうするか考えているようだった。
先ほどからずっと手帳を開いている。何かを確認しているのだろうか。中身までは残念ながら俺の方向では見えない。
「……少しいいかしら?」
どうやら姫野の中で決まったようで、手帳を閉じ口を開いた。
先ほどまで自分の世界に行っていた花澤たちも戻って来て、話を聞く準備をしている。
俺は別にいつでも構わない。
「先ほど残念だけど、杉山の意見が通ったわ」
「おい、勝手に俺をディスるなよ」
さすがに俺はそれを突っ込まずにはいられなかった。
確かに思いつきで言ったけどさあ、酷くないか。
俺だって結構ガラスのハートなんだよ。案外もろいぞ、俺。
「心配しないで。あくまで私視点で話しているから」
そうですか。そんなで許されたら、日本終わるぞ。
理由が傲慢過ぎる。まあ、そんな俺の事は無視、再び説明を再開した。
「取り敢えず部活の名が青春部に決まったわけだけど、やはり具体性に欠けるわ。活動内容を具体的にした方が良いわ」
まあ、確かに。それ以前に上野先生が頷いてるしな。
というか先生、頷いているなら俺が提案した時に言ってくださいよ。先ほどまでの時間は何だったんですか。
俺は少し上野先生を見ながら、視線で聞いた。
「いや~とてもいい雰囲気だったから。ごめんなさい」
別に良い雰囲気に持って行った覚えはないが、謝ってくれた。上野先生は俺にぺこりっとそんな音が出てきそうな謝り方をした。その、可愛いので良いと思います。
先生としてはどうかと思いますが。
「そういえば、花澤さんも霧島さんも確か……生徒の手伝いをしたいだったかしら?」
そういつも通り冷静な声で尋ねた。花澤も霧島も頷いている。
あの~。俺も入ってんですけど。俺は無視ですか。
返事がない、シカトのようだ。そんなメッセージが出ちゃうじゃないか。
「その生徒の手伝いって例えばどういうものかしら?」
そこは俺も気になる。俺自身、自分で言っておきながら生徒の手伝いは何なのか全く分かっていない。
どうやら、他の人たちもそれは考えていなかったらしく頭を捻っている。
これじゃあ八方ふさがりだな。俺も言えた事じゃないが。
「そうですね……部活動ですから、他の部活を手伝うとかですかね」
最初に考え付いた花澤は少し戸惑いながらも答えた。
「部活ねぇ……。確かに活動内容としては悪くないけど、さすがに全ては無理があるわ」
まあ、それはそうだ。
ただでさえ、部員は四人なのだ。この高校の部活の数をとても四人で手伝うのは不可能に近い。
と言うより、俺は多分要らない扱いされるから絶対に無理だ。ぼっちだから。
いやぁ~ぼっちは仕事が少なくって助かる。まあ、今だけだが。
こういう時のぼっちは嫌いではない。いつも嫌いではないが。
「なら、依頼をしに来た人だけを手伝うのはどうかな? そうすればだいぶ楽になると思うけど」
おお、素晴らしい提案過ぎてしかも爽やか過ぎて拝んじゃいそうだ。
こいつには過ぎて過ぎてがお似合いだな。
俺には好きで好きでが欲しい。自分で何を言ってんのかよく分からなくなってしまった。
俺は考えでもこいつに負けているのか。
案としては別に悪くない。だが、霧島にその案を出されてしまったのは悔しい。
俺が出しても、急にどうしたのって言われて引かれるだけだもんな。別にいいのか。
「確かに……それは名案だと思うわ」
「私も良いと思います!!」
ついでにあなたはと姫野が聞いてきたので、俺は異論はないので頷いた。
上野先生も凄い楽しそうだし。
「じゃあ、決まりね。依頼応募については私がやっておくから心配はないわ」
へぇ~。そういうのはしっかりやってくれるんだな。
少し感心した。てっきり、俺に仕事を振るのかと思ったよ。
「宣伝は杉山、あなたがやっておきなさい」
前言撤回。やはり姫野はこういう奴である。
「私も何か手伝います」
花澤も何かやりたそうだった。
同じ部員として自分だけ楽するのは気に食わないのだろう。
いい奴だな、花澤。
高校生活を送っていく内に姫野の評価は下がり、花澤の評価は上がっている。俺の中では。
「もちろん、俺もだよ」
爽やかスマイルで霧島も答えた。
俺にも分けてくれ。俺にはひねくれスマイルしかないぞ。
「じゃあ、杉山だけではおそらく無理だから手伝いをお願い」
俺だけで悪かったな。相変わらず毒舌全開である。
そんな風に姫野の事を嫌っていると、一つ思い出した。
何となく答えは分かるが。
「なあ、部長って誰だ?」
「そんなの決まってるじゃない。私よ」
勝ち誇った顔で姫野に言われた。しかも堂々と。
何となく予想は付いていたが。




