第六話『痛い病と弱点』7
「……」
「……」
気まずい。非常に気まずい。俺の席の周りは謎の静寂に包まれていた。
「二人とも!! 何をしておる!!」
少しは空気を読んでくれ。茜は突如急に声を上げた。
「なぁ……、花澤? どうしてここにいるんだ?」
流石にいつまでも話さないわけにはいかないので話を切り出した。
「杉山さんもどうして?」
まあ、聞いてくるよな。
「俺はこいつのくだらない事に付き合っているだけだ。決してこういうの好きではない」
「こいつって姫野さん?」
「ああ」
「まさか姫野さん……」
あっ。まずい、呪いの事がばれる。それか姫野が中二病だと思われてしまう。
今は中二病キャラだが。別に思われても俺的には良いんだが。高校で色々と問題になるしな。
「いや、こいつは……。姫野の妹だよ。妹」
そう、大事な設定だからな。二回言ったぞ、俺。
「本当ですか?」
花澤がそう言い、茜に尋ねた。
空気を読めよ、茜。
「ふっ。何を言っておる。我はひと」
「ちょっと静かにしよう、茜」
俺は急いで茜を口塞いだ。
やっぱりか。頼むから合わせてくれ。
「頼むから、合わせてくれ茜。ここは」
「何かよく分からんがいいだろう」
「ありがとうな」
何とか分かってくれたな。
「あの? 先ほどから二人で何を話しているんですか?」
「いいや、すまない。ちょっとな。我は姫野叶の妹だ!!」
「そうですか……。姉妹って似るもんなんですね。しかもこんなに姫野さんと似ているなんて」
もうほとんどばれてるよ。大丈夫なのか。
凄い疑心暗鬼の目で見ているんだが。
「まあ、いいですけど」
「それで、いいんだな」
「はい。ちなみに私はどうしても働く必要があったんです」
「それは良いんだが、ならなおさらどうしてここで働いているんだ?」
花澤だったら普通のバイトでも失敗しないだろう。なぜここなんだ。
俺はその意図が分からない。
だがその意図はすぐに分かる事となった。
「ここのバイトは凄く時給が高くて」
そう言い花澤がバイトの用紙を見せられた。
時給二千円……。確かに悪くない。でもだからってな。
「それに……」
「何だ?」
「私、こういうのが好きなので」
「……。そうか」
趣味ならしょうがないか。そうだよな。
まあ、気にすることないか。何か大事なものを無くした気がする。
「まあ、お前の趣味ならしょうがないなあ」
「えっ。えええ!! 違います!! さっきのは訂正します!! 本当にたまたまです!!」
そんな慌てる事なのか。別に悪くないと思うが。
「そうか。分かった、何かすまん」
一応謝っておこう。
「いえいえ、大丈夫です。そういえば、勉強はどうしたんですか? まさかサボってるわけじゃないですよね?」
「勉強はもう終わった。今は休憩中だ」
こんなところで休憩はあまり出来ていないが。
「そういう事ですか。どうですか? 少し良くなりました?」
「いや、少しっていうレベルじゃないな。もう神レベルだ」
どうして英語が出来ない理由が分かったからな。中二を直せばいいだけだ。そう、ただそれだけ。
まあ疲れたが。
「と言う事は……もう勉強を必要ないと言う事ですか?」
「そういう事だ。理解が早くて助かる」
「じゃあ、明日の勉強は必要ないですね……」
いや、そんな残念そうにしなくても。疲れるぞ、本当に。
とは言えそれで、そうだなって答えるは失礼だ。こう答えるか。
「そんな事ない。まだ心配の所があるからそこを無くす為に勉強はした方がいい」
「そうですか……。分かりました。では明日頑張りましょう!!」
「そうだな」
元気になったみたいだな。良かった。
「あの……? 二人とも、我を忘れてないか?」
「あっ、すまん。完全に忘れてた」
「……」
何だ、この空気は。この視線は知っている。この冷たさ。この痛々しさ。
そう、あれだ。
「あなた方は!? 暁姫を忘れるなんて!! 邪道です!! 邪道!!」
もうにゃん、付いてないぞ。怖いよ。怖いです。
『貴様!! 許さん!!』
またですか。勘弁してくれ、変態。
痛い痛い。冗談ですから。冗談です。超痛いぃぃぃ。
「じゃあ、これで……帰るから……。なあ、茜?」
「いや、我はまだ……」
「いいから、行くぞ」
「じゃあな、花澤。また明日」
「はい、さよなら。後、お代も」
ちゃっかりしてるな。
「ほら」
「ありがとうございましたにゃん❤」
「もう止めてくれ」
俺は茜を無理やりカフェから連れ出し、家に戻った。
俺には猫メイドカフェは合わないのかもな。
それが今ようやく分かった気がする。
何だろう、この感じ。




