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6.最強の能力―5


 出た先は広い部屋だった。体育館でも連想させる様な、天井が高く、広い部屋。が、どこを見回しても窓はない。高い位置から明かりを下ろすライトがやけに眩い。

「ここは地下六階」

 アイズがそう言うと、皆がやはりまだ地上に出してもらえはしないのか、と思った。

 その、時だった。

 皆が入ってきた方向、とは、全く逆の方向に目を凝らせば理解できる程の切れ目が壁にあり。そこが、開いた。どうやら扉だったようだ。

 普通の扉程度ではあるが、そこから、それをくぐるようにして出てきた影は、普通のサイズではなかった。

 うめき声が聞こえてきた。アイズとブレイン以外の皆は、足を止めて、思わず構えた。

 が、ブレインが手を横に出し、言う。

「問題ない。警戒をするな」

 そんな事を言う。

 こんな現状ではあるが、ブレインは知識的な意味で信用に値する人間である、と皆がわかっている。だからこそ、今は、踏みとどまった。それに、そもそも、この疲弊しきったメンバーが、その相手にまともに立ち回れるはずもなかった。

 小さな扉を入ってきた影は、簡単に言えば、宇宙人であった。

 巨大な蟷螂のような姿をした、今まで相手にしていたそれとほとんど変わらない容姿をした、それであった。

 が、それは数歩進んだと同時、変身能力により、人間の姿を変えた。

 そのまま、進んでくる。

 パンツスーツ姿の、女だった。見れば、大分若くみえる。ショートの黒髪がやけに似合うスマートな女で、仕事ができる、という印象が強く出ていた。

「……誰?」

 近づいてくる宇宙人を堂々と指さして、飯塚が問うと、アイズが応えた。

「協力者。宇宙人の、ね」

「協力者?」

 成城が眉を潜めた。

 が、言葉と態度から、その宇宙人が、敵ではないのだ、と言う事実だけは、理解出来たのだった。

 その宇宙人はある程度まで皆に近づいたところで、目をアイズとブレインへと配らせた。すると、アイズとブレインは自ずと横へとずれて、その宇宙人の前には、成城達だけが、残る形になった。

 宇宙人は皆を一瞥した後に、一度軽く頭を下げて、そして、静かに言う。

「テストクリア、おめでとう。そして、お疲れ様。理不尽に感じる事や、突然命に関わる現状に落とされて怒り、不満はあるだろう。だが、とにかく君達は今、生き残った事だけを喜んでくれ。ここから先は、私が案内をしよう。話を、しながらね」

 そう言って、宇宙人の女は、微笑んだ。

 美しい微笑みだった。まるで、人間そのものであった。

 気づけば、人がいた。群がるようにわらわらと、壁が開いて出現した扉の先から、出てきていた。その誰もが防護服の様なモノを着込み、そして、背中に何かの道具と思われる様なパックを背負っていた。

 彼らはアイズとブレインの下へと集まり、何か支持を受けて、彼らを筆頭とする団体へと成り、また別の位置に出現した扉から出て行った。島の方の片付けにでも向かったのだろう。今回のこれが最期のテストという事だ。普段より大掛かりなモノになっている可能性もある。

 宇宙人の女に先導され、成城達が宇宙人の女が入ってきた入り口の中へと消えると同時、アイズとブレイン、それに引き連れられるメンバーも、この部屋から完全に消え去った。

 成城達は通路へと出た。先ほどの部屋よりは当然天井は低く、白を基調とした近未来という言葉を連想させる様なデザインがやけに眩く、目に付く。

 宇宙人の女は、歩きつつ、語る。

「まず私の紹介をしておこう。私はこの場では『シナプス』と呼ばれている。好きに呼んでくれて構わない」

(神経伝達《synapse》か……?)

 女は砂影がある事に気付いている事に、気付いていたが、敢えて触れず、そのまま、歩きながら続けた。

「ある程度は知っているだろうけど、一応確認のために話は最初からさせてもらうね。私の素性の、この立場になった話もあるから」

 言われて、皆はそれぞれ相槌を打って返事をした。

「宇宙人っていうのは、実在する。それは身を持って体感したと思う。挙句、ただの生き物なんて程度じゃなくて、高度な文明と知能を持つ、人間と似た存在として、他の惑星に住んでいた。まぁ、そこら辺の詳細は、またおいおい……。宇宙人は知能では人間に並ぶね。人間にも賢い人、判断が鋭い人、逆に賢くない人、でも身体能力は高い人、様々な人間がいると思うから、完全な優劣は当然付けられない。宇宙人にも個性はあるからね。だからこそ、同等、といえるけど、身体能力、殺傷能力で言えば、はるかに宇宙人のほうが高い。それも、身を持って実感できたはず」

 言われ、皆、思った。

 宇宙人は変身能力にプラスして、オリジナリティといえる能力を持っている。成城達もそれを偶然奪えたからこそ、宇宙人と対等に渡り合えたのだ。だからこそ、なおさら、理解出来ている。宇宙人の能力は、強力で、危険である、と。

 だからこそ、非力であるという事実を否定する事は出来なかった。

「だからこそ、宇宙人は他所の星を、どんどん支配してきた。……これ、私達からすれば普通な話なんだけど、地球ではSFっていうらしいから、感覚のズレが生じてしまうかもしれないけど、事実だから。一応念を押しておくわ。それで、ついにその宇宙人の魔の手が地球にも伸びた、というわけ。それも、実際は一○○年近く、前からね」

「思ったより最近だな」

 諸星が言う、と、シナプスは笑いつつ、返す。

「そうだね。でも、実際、それ以前に地球に到達出来ていたら、間違いなく既に支配は完了していたはず。……宇宙人側から言わせてもらえば、一○○年程度前じゃ、遅かった。これも、君達なら、信じられるかもしれないけど、この組織は、その時には既にあって、宇宙人の存在も、把握されていたんだよね。だからこそ、下見程度の事をした宇宙人は簡単に捕まった。だからこそ、宇宙人の持つ能力が人間に移動する事がわかって、現状」

 この組織が、という台詞から、同じものなのだという事は皆、理解したが、まさか、そんな前から、こんなアングラな存在が存在したのだ、という事実には思わず驚嘆する程だった。

「そんなに、前から宇宙人の脅威に備えていたんだ」

 関心する様に飯塚が言うと、シナプスは再度、笑んだ。

「驚きだよね。近隣の星ならともかく、こんなに距離のある惑星に住んでいる生物が、その存在を把握するなんて」

 笑い話、なのだろう。宇宙人の女の立場というモノがはっきりとしていない今、成城達人間は、宇宙人がこの台詞を吐きつつ笑うという事に違和感を覚えている。が、悪い状態ではない、というのは感じていた。

 シナプスは続ける。

「でも、宇宙人は人間と同様、数がいる。組織に捕縛されたモノの作った隙をついて続々と人間界へと侵入した。変身能力を使って。だけど、潜り込んだは良いけど、動けなくなりつつあった。人間社会って、本当にめんどくさく出来上がってるから。だからこそ、時間を掛けて、人間を社会から支配してやろうと考えた者達が出てきた。一○○年近くの時間を掛けて、宇宙人の一部は、この地球でも権力を持つ程になっていた。だからこそ、宇宙人は近々動くと思われるの。だから、組織は、対宇宙人兵器として宇宙人の能力を持つ人間兵器を作り出すために、テストを実行した。……っていうのが、この現状までの流れ。いいかな?」

 シナプスが扉の前で立ち止まって振り返り、微笑み、首を僅かに傾げると、皆が、頷いた。

 ここまで、通路を幾度と無く曲がり、階段を上り、エレベーターに乗り込み、と、到達した。感覚だけの問題ではあるが、大分地上に近づいたようだった。

「さて、この先で、詳しい『これから』の説明をするから。気を楽にしてね」

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