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第17話 仲直りと泣き寝入り




騒動があった翌日の夕方



リオンは待っていた。


はるかの到着を。


彼女に謝罪の言葉を述べるために。



ユーマに問いただされて必死に思い出そうとしたが

結局彼女の怒りの原因は分からなかった、しかし自分が悪いということは自覚していた。


こうなりゃ誠心誠意アタマ下げるしかねーよな…


そして彼は店の裏口で待っていた。



◆◇◆



ユーマは見ていた。


遥を待つリオンを。



展開を見守るために。



昨夜にリオンを問いただしたが

結局彼女の怒りの原因は分からなかった、しかし何か深い理由があると確信していた。


こうなっては見届ける他あるまいな…



そして彼は店の裏口の段ボールの陰からそっと見ていた。



◆◇◆



遥は急いでいた。


栄林庵への道を。


リオンにお詫びの言葉を言うために。



昨日家に帰って考えると

改めて些細なことで目くじらを立てた自分が恥ずかしかった、しかも彼を傷つけてしまった。



こうなったら許して貰えなくても謝らないと…



そして彼女は小走りになった。



◆◇◆






「「ごめんなさい!!」」



これがリオンと遥さんの第一声だった。

同時に頭を下げる。


そして…



「「…え?」」

これが第二声だった。

同時に顔を上げる。




一種のお見合い状態の中、先に口を開いたのは遥さんだった。

「な、なんでリオンさんが…謝るのは私なんです!」


しかしリオンも譲らない。


「いや、オレが悪かったんだ…」

「気付かないトコでデリカシーの無い事言っちゃうんだ…オレ」

そこで彼は再度頭を下げた。



「え、いやそれは、あの…」

予想外の言葉に少し慌てる遥さん。

なぜなら今の彼の言葉は確かに自分が昨日腹を立てたポイントでもあったからだ。

ただし自分にではなくユーマに対しての彼の態度に…だったが。


「と、とにかく顔を上げて下さい!」

と彼女は言う。


「許して、くれるのか…?」

とリオンが尋ねる。


「許すも何もリオンさんこそ私のこと…怒ってないんですか?」

遥さんは恐る恐る訊く。


「いやいや、怒るって何を?」

今度は本当に当惑した様子のリオンだった。


「え……そ、それならよかったです…でも昨日は本当にごめんなさい」

そうして彼女も再び深々と腰をおった。



「ちょ、やめろって!」

リオンは色々驚いたのか、突然昨夜に僕が話した内容に触れ始めた。


「そ、そういや、ここで働いてる理由って家の為なんだろ?」



彼女の目が僅かに見開かれた。

「どうして…それを…?」



「あ~…いや、ちょっと知っちまったんだ」

今頃になってマズいという顔をするリオン。


「そ、それで…?」

遥さんは微かな声できく。



「それでさ、その…色々大変なんだろ?だからオレにもなんか手伝えねーかなっておも…」


しかしその続きを彼が言うことはなかった。


いや、言えなかった。



ぎゅっ…!



なぜなら感極まった遥さんがリオンの胸に飛び込んだからだ。



「!?!?」



は、遥!?…がオレの腕の中に…?

突然のことにリオンはここが現実だということを理解するのに精いっぱいだった。




そして…


フラ…ッ


ガラガラ、ガッシャーンッ!!


「「え!?」」



許容量を超える光景を目撃したユーマが倒れて近くのビールケースに落下した音で2人は我に返って

お互いに離れた。



しかし意識を失う寸前で僕の網膜にはしっかりと抱き合う二人の画像が焼き付けられていた。


このまま…死んでいい…?

ユーマは三途の川を見た気がした。



◆◇◆


その晩

ユーマは店を欠勤した。





ユーマとリオンの部屋





「うああ…ひぐっ、ぐす…」


リオンが仕事から戻ると部屋に奇声を上げる布団の塊がいた。


「もう、ダメ…だ、うぐっ…」



「…………………」

う、うわー、めっちゃ沈んでやがる…。

流石のリオンも少し気の毒になってガラにもなく慰めようとした。



「いや、ユーマ?夕方のコトは、その、なんだ…事故みてーなもんだから」

事故などという心にもない言葉でごまかそうとしたが、


「…ふえっく…」

「………うあぁぁ…!」

逆効果だった。



「くっ…」

何歳児だテメーは!?

つーかホントに諜報員?


そう言いたかったが、多少の引け目を感じていた彼はなんとか踏みとどまる。

まあ、勝手にゴールインしちまったのは事実だしな…コイツがショックを受けんのも無理ねぇか。


逆だったらオレも確かに傷つくし…。

でもごまかしたって事実は変わんねーよな…。

そう思ってリオンはユーマを元気づけつつも、事実を伝えるための言葉を探した。

そして…


「見てるなんて知らなかったんだ、でも…結果的には…悪ぃ」

「……グズ…」


「けどな、遥のコトはオレがぜってー幸せにすっから、な?」

「……ひぐっ」


ダメかよ…


その後もリオンは頑張った、彼にしては根気強く励ました。

しかしリオンが事件の当事者である以上どんな言葉も無意味だった。



「…いや、だからな、ユーマには他にもイイ出会いがあると思うぜ?」

彼なりの懸命のフォローだった。


が…


「うう……ぐすっ…うう…」

布団の塊がもぞもぞしただけだった。



…イラっ!

…会話がまったく成立しねぇぇ!!いつまでウジウジしてんだチクショウ!

リオンの怒りが限界を迎えた。


「め、めんどくせぇ…!!もうしらねーよ、メシはここに置いとくからな!」

遂に痺れを切らした彼はそう言って部屋を後にした。




◆◇◆



…ぐすん…。


僕は泣いた。


さっきのことが現実だと分かって、脳裏に映像が蘇って。



リオンが珍しく気を使っていたこともその事実の裏付けをしていて…。



おかしーよ…僕の方がよっぽど誠実に遥さんに向き合ってきたのに…

なんでリオンとハッピーエンド?



顔か?やっぱり顔なのか?



そんな嫉妬をも超えた絶望感に浸りながら

布団を頭まですっぽり被ってユーマは泣き続けた。


いわゆる泣き寝入り状態だった。


ユーマにはもはやリオンの弱み(激写画像)をちらつかせる気力もなかった。





カチャ…


するとリオンが去っていくらも経たないうちにドアが開く音がした。


…?



しばらくして声が聞こえた。



「ユーマさん、大丈夫ですか?」

心配げな優しい声。

よりによって彼女だった。




………ぐすん

もう僕にかまわないで…。



「あの、私のせいですよね…」

少し後悔を含んだ声。


…ひぐ……?

そうだけど…それは、どういう…?



思わず顔を出してしまった。


「あの時はリオンさんの優しさが嬉しくてつい…」



その言葉に僕は思う。


…やっぱりね、リオンとお幸せに…。

もういっそ清々しかった。


が、


「ユーマさんみたいな常識のある人の前で突然あんなことを…驚かれて当然です」


………?

なんの話?



「恋人でもないのに、公衆の面前で抱き合うなんて」



………


「だから深い意味はないんですよ!?」

慌てた様子で付け加えた。





かなりの長い沈黙。

そこで初めて僕は口を開き、かすれた声が後に続く。

「…今の…話は、本当ですか…?」



すると彼女は何度も頷いた。

「ええ、お騒がせして本当にすみませんでした。リオンさんにも後で謝らないと…。では、ゴハン食べてゆっくり休んでくださいね…」

そう言ってお辞儀をして遥さんは出て行った。


バタン…


トタタタ……


……






僕は思った。

…天然とは、無意識とは無自覚とは残酷だと…。



一瞬脱力した僕だったがふつふつと思いが込み上げてきた。



…色々…




…色々…分かってなーーいッ!!


心の中で僕は糾弾する。




常識はずれなことにショックうけたんじゃないよ!

どんな無理やりな解釈?いくら僕でもハグシーン見ただけで卒倒しないよ…。

問題は貴女がそれをしたからなのにッ!




え?何、しかも深い意味ないの?


紛らわしいにも限度がありますよ遥さん!


あれはどー見たって感動のラブシーンでしょうが!


これじゃリオンも浮かばれないよ…アイツ、内心じゃめっちゃ喜んでましたよ?

…いや浮かばれなくていいけど。


ホントにタダの事故だったよ、少なくとも彼女の中では…。





っていうかこんなことがあっても遥さんは僕やリオンの好意に気づいてないの!?

ニブいにも程があるでしょーが、モブ達の心はもうメチャメチャです!




後に残された僕は頭だけを布団から突き出したカメのような状態でシャウトした。




「なんて日だッ!!」


今夜だけはダイさんの怒号も飛んでこなかった。




夕飯としてリオンが持ってきたおにぎりは塩と涙が混ざったせいでいつも以上にしょっぱかった。


僕とリオンの恋路は想像以上に険しそうだ。





なんだか話の方向性を見失いそうです(汗)

でもモテる人のニブさというのは時に犯罪です。


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