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普通の日々

そういえば…


真由里殿のビジュ、あんまり描写してないや



「東坂さん、これの入力もよろしく」


「はあい」


あれから一週間と少し。

職場復帰も大体1ヶ月が経った

以前と変わらず、デスクでキーボードをカタカタ


お昼は食堂。

今日はパリッと焼けた皮が美味しい焼き鯖定食

あっという間に食べてしまった

デザートの大きい飴は三個目。

舐めながら数字を打ち込んでいく


そんな作業の中でも考えるのが家の事

燈魔がいる。

夕飯を作ってくれているかな

メニューは何だろう

温かいお風呂に入りたい

入浴剤は何だろう 


前は一人管理の鍵や冷蔵庫の残りや献立、一人飲む酒の時間

そんな事ばかり考えていた

だからこそ、期待する時間が楽しい

『誰かがいる』家に帰れる安心感

それがあるから疲れても今は平気


貧血だけは少し辛いけれど


「んん、あとは…」


今日の分は大方終わり

早く終わらせた所で増えるだけ。

数字一つ一つを指でなぞりながらゆっくり確認

遅いと言われても気にしない

そもそも間違える方が問題。

なのに効率重視でミスしたらまた怒られる


理不尽を重ねる位ならこれが正解だもの


「3、2、1」


定時。終わり

放送で鐘が鳴る

一年前は残業出来たのに、今はこれを皮切りにみんな帰り始める

持ち帰りも駄目。時代らしいけれど有難い

タイムカードを押してからロッカーへ。

荷物を持って退勤

胸を踊らせながら帰路につく


『お仕事終わったよ』


メッセージアプリで書き込み

相手は燈魔。

古いスマートフォンの使い方を教えてみたらすぐに覚えた

何でも飲み込みが早い

昼間は花達に音楽を聞かせているとか


『お疲れ様』


メッセージでは五七五じゃない

ちょっと見やすい


『今日のご飯は何?』


『肉じゃがとやらを拵えた』


『やった!食べたかったの、ありがとう!』


丸っこいキャラクターが喜ぶスタンプ

その度に燈魔も似た物で返してくる

律儀さが可愛いと思ってしまう


『買って帰る物はある?』


『無い故、気をつけて帰られよ』


『はーい!』


"ありがとう"

返ってきたのはほわほわとした喜びのスタンプ

最近は他のシリーズをあげたらどうなるか、とても気になっている


数駅電車に揺られながら吟味

こんな事も一人じゃ無かった。

行きも帰りもつまらなくて仕方なかったから、有難い


最寄り駅から歩いて十五分位

暗くて人通りが少し見える住宅街を歩く

ヒールの音を響かせながら着いたアパートは心做しか明るかった


「ただいまーっ」


鍵を開けた扉の先

ふわりと出汁の香りが出迎えた


「労つかはし 夕餉に湯浴み 何れが先か」


「夕飯っ 楽しみに帰ってきたんだぁ」


並んだ鉢の前

撫でる葉が喜ぶ中、燈魔が朗らかに笑っている。

ゆっくり立ち上がった彼は此方に向き直った


「あい承知 直ぐにつぐ故 待ち申す」


「はぁい」


硬いヒールを脱ぎながら

そのまま部屋の奥で上着を掛る

消臭スプレーを一吹き。爽やかな緑が香る


靴下も脱いで洗濯機へ

ついでに凝った背筋を伸ばす

深呼吸する頃にはもう、炊きたてのご飯の匂いがした


「真由里殿」


振り返る

背の低いテーブルにはもう、いい香りの湯気が立っていた


「わあ、ありがとうっ」


早速席に着く

床に座るだけ。

真後ろのソファには水を持った燈魔が腰を下ろしていた


「よっし、頂きまーす」


まずはお味噌汁。

長ネギとお豆腐でシンプルなのに、ゆっくり火が通ったネギの美味しさが出汁に溶けている

お味噌の塩気が引き締めていて優しい


肉じゃがはほっこり

ほんの少し濃いめの味付け。糸こんにゃくが旨味を吸っていい塩梅

根菜の甘みと出汁が醤油の角を丸く、柔らかい牛の薄切りの脂が相性抜群

ご飯の上に乗っけて頬張る。

ほんの少し硬めのご飯が味を吸って解れるのが堪らない


「ん、ふふ 美味しーっ」


合間に小鉢

ころころ切ってあるきゅうりと鰹節が小気味好い

梅の酸味がさっぱりと効いていて、口がリセット

また他のメニューが欲しくなる


「拵え飯 童の様に 頬張るは 眺めに飽きぬ 一時なり」


冷えた水を飲みながら。

燈魔は水しか飲まない

味は感じる。

けれど、飲み込んだ所で身体が無い

結局水しか口に出来ないんだとか

お腹も別に空かないらしい


「ふう、ご馳走様ぁ」


結局、あっという間に食べちゃった


「足りぬなら 代わりもある故 ついで来よう」


「大丈夫、おなかいっぱい。ありがとう」


食器を片付けながら。

シンクへ重ねて持っていく

水を出して洗剤をスポンジに垂らす。そこで燈魔が横から代わってくれた


肌色の手袋が濡れて張り付いている

指の球体が少し見えた


「食器なら 片しておく故 構い無く 君は湯浴みに 勤しみや」


折角だし甘えよう


「うん。分かった そうさせて貰うね」


ありがとう

お礼に燈魔はにこりと返す

着替えを取ろうと部屋の奥へ。

改めて通り掛かったそこで小さく音が流れていた

さっきは気付かなかったみたい


「燈魔。これ、お気に入りなの?」


外の、嵐の音がする  


「子らの声 踊る雨粒 宴かな」


「へぇ…ふふ。フェスみたい」


着替えを取りながら。

向き直った先で燈魔の首が傾いている

宴の事だよ。それで彼が元通りに動く


偶にこうして世代の様な違いが見える。

それでも通じるから、面白い


「じゃあ、お風呂入ってくるね」


「承知した 一時ゆるりと 楽しみや」


「はぁい」


脱衣場へ

脱いだ服を洗濯機へ放る

あとは入るだけ。シャワーを浴びて頭から順に洗っていく

ネックレスも外してもみ洗い

からからと心地良い音を鳴らしている


中身は白い欠片と緑の葉っぱ

造花の布っぽさは無い。むしろ葉脈が本物のそれ

ずっと青々としているのに、種類もよく分からない

お風呂でも萎れない


白い欠片も何となく見覚え

多分"そう"なのだろうけれど。

本当なら心強い

怖い思いなんてもう嫌だから

それでも、仄かに温いそれが不思議でならなかった


「っんー」


ネックレスを掛け、湯船で伸び

この瞬間が毎日楽しみ

一番風呂は何回入っても気持ちが良い

肩を回しながらリラックス

足の裏もゆっくり揉んでいく

じん、とした痛みが湯に溶けていく様で癖になる

ずうっと入っていられないのが残念


立ち上がりに伝うお湯が名残惜しかった


「ふぅ…」


バスタオルで手早く

湯冷めする前に着替え

その間、視界の端っこで燈魔は何か準備している

テーブルには小皿。何かまでは分からない


「わあ、それ何?」


こんがりとチーズの匂いだけでも美味しかった


「ちぃずと云う 焼きにさくりと 趣よ 併せは氷菓か 泡立つ酒か」


燈魔は水を飲みながら一息

お風呂上がりを計って用意する位の熟れ感。

もうほとんど燈魔に張り合えなさそう

そうするつもりも無いけれど


「ふふ。アイスがいいなぁ、髪乾かして来るね」


にこりと朗らか

ドライヤーで根元から乾かしていく

髪が立ってふわふわ。旋毛は特に念入り

仕上げに冷風で梳かしながら。

こうするとツヤが出る、気がする

凝視する中、鏡越しの燈魔は花に使っていたスマートフォンを回収していた


「よっし」


手入れも終わり。

首を振ってさらさら

後は心待ちのアイス。

きっとカリカリになったチーズと冷たいアイスが美味しい逸品

テーブルへ着く前に寄り道。

上着のポケットを漁る

取り出したスマートフォンを起動して軽く操作


「ふふん」


吟味したギフトの送信。

ぴろり、と燈魔の端末が鳴った

続くかもよーぉ

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