第37話 運動会 第一戦 晶VSガイン
現実の富士高では文化祭と同一の日に体育祭が行われますが、シナリオの都合上分けさせていただいています。
月日は流れて、いよいよ体育祭当日だ。
僕たちの模擬戦は、お昼の前に行われることになっている。
「結城、これを見てみろ!」
久朗が少し焦ったように、体育祭のパンフレットの一部を指さす。
そこに書かれていたことは……僕たちの模擬戦は、グループで行われるのではなく、一対一で行われるように変更されたという事であった。
「せっかく、連携の訓練をしたのに……」
少しショックを受ける。
「まあ、運動場の広さを考えると、仕方ない所だろうな」
久朗はあまり、気にしていないようだ。
「組み合わせは……まず晶VSガイン、漣VS楓、久朗VS良、みかんVS実、結城VSミーシャ……ある程度似たような方向性の相手と戦うようだな」
なんだか、より勝ち目がなくなったような気がする。
一年の経験の差は、大きいのだから……。
「こら、始まる前から何をしょぼくれた顔をしているの?」
舞先生が僕たちに、声をかけてきた。
「はっきり言わせてもらうわ。今の二年生が去年の体育祭で戦ったときよりも、あなたたちの方がずっと強いわよ。それに、負けても大丈夫な機会なんてそんなにないのだから、胸を借りるつもりで挑みなさい」
少し弱気になっていたようだ。
考えてみれば、負けたところで特に失うものはない。
「分かった。全力でやってみる!」
僕のやる気に、火が付いた。
体育祭が進み、いよいよ僕たちの出番だ。
「よっしゃ。行ってくるぜ!」
晶がまず、ディアマンテにフェイズシフトする。
相手は……ガインだ。
タクティカルフレームを装着していないのだけれども、やっぱり生身で戦うらしい。
「それではヒーロークラスの模擬戦闘第一試合、清水晶対ガインナッセ=クラッシュボルトを始めます」
アナウンスが流れ、開始のピストルの音が鳴り響く。
まず飛び出していったのは、晶だ。
「一気にぶっぱするぜ! 『マグナム・インパクト』!」
いきなり大技を、ガインに叩き込む。
って、こんな技を叩き込んで大丈夫なの!?
「ぐっ、効くな!」
開始直後ということで、少し油断があったようだ。
まともにボディーに突き刺さるが……生身なのに、戦闘不能になるどころか多少ダメージを受けただけで、全く問題ないようである。
「お返しだ。『ダブル・ラリアット』!」
ガインが両腕を使って、回転するように晶に攻撃する。
一撃目を喰らって、吹き飛ばされるが……おそらく連続で喰らうことを避けるために、わざと吹き飛んだのであろう。
装甲に軽いひびが入り、威力の大きさを如実に示している。
「ガインには、タクティカルフレームは明らかに要らないよね……」
僕は思わず、口にしてしまった。
攻撃力も防御力も、下手なパーソナライズされたタクティカルフレームよりも、明らかにガインの方が上回っているようだし……。
激戦は続く。
両者とも格闘タイプなので、接近戦で次々と技の応酬がなされる、迫力のある試合になっている。
どちらも打撃系の格闘家らしく、つかみかかるような動きはしていないためよりダイナミックな動きになっており、見ごたえ抜群だ。
「ふう……そろそろ、決めるぞ!」
晶が大技の構えに入った。
タクティカルフレームには無数のひびが入り、これ以上戦闘を長引かせるのは難しいと判断したのだろう。
「こちらも行くぞ!」
ガインにも、無数の打撃が叩き込まれている。
タクティカルフレームなしなのに、それを耐えきったのだから……一体彼の体は、どうなっているのだろうか。
「奥義『シャイニング・ブロー』!!」
晶の機体の右腕に、光が集まる。
それを一気に叩き付けるという大技だ。
「はあっ!! 奥義『タイラント・ブレイカー』!!」
ガインの方も、右腕に力を集める技のようだ。
明らかに一回り以上、右腕が太くなる。
奥義のぶつかり合いの結果……立っていたのは、晶の方であった。
とはいえ機体には大きなひび割れができており、連戦は難しいほどのダメージを受けたようだ。
「いきなり大番狂わせだ! 勝ったのは一年のヒーロー、清水晶!!」
アナウンスが勝者を告げる。
二年生の方に、動揺が走った。
「次は私の番ですね。それでは行きます」
漣が準備を整える。
相手は楓……一体どんな戦いが繰り広げられるのだろうか?