第38話 運動会 第二戦 漣VS楓
「続けて第二試合、芥川漣対神山楓を始めます」
両方とも回復魔法を中心とした、いわゆる「ヒーラー」タイプだ。
基本的には前線に立つタイプではないのだが……。
「「『エーテル・マキシマム』」」!
二人の声がシンクロする。
自分自身の力を飛躍的に高める、高位強化魔法だ。
楓はともかく、漣も使えるとは思っていなかっただけに、少し驚いてしまった。
「ほな、いくで!」
「はい!」
漣の機体『オーニクス』のクォータースタッフと、楓の機体『紅』の薙刀がぶつかり合う。
どうやら前の試合によって、白兵戦をしたいという気持ちに火が付いたらしい。
「『フォース・クラッシュ』!」
更に漣が、中距離攻撃攻撃魔法まで繰り出した。
クォータースタッフと魔法によって、手数が増える。
「甘いで! 『フォース・ショットガン』!!」
楓が強烈な魔法を放つ。
距離が近ければ近いほど、破壊力が増すタイプの魔法で……漣が大きく吹き飛ばされてしまう。
「くっ、『リジェネレイト・スプリング』」
漣が自己回復魔法を使った。
一瞬で回復する『ヒール』系とは異なり、徐々に回復するタイプの魔法だ。
戦いながら回復を必要とするため、あえてこちらを選んだようである。
「じゃあ、うちも……『リジェネレイト・オアシス』」
楓も魔法を使うが、漣よりも高レベルの回復魔法だ。
当然時間当たりの回復量は、楓の魔法の方が上回る。
「あれって、僕たちを癒してくれた魔法だよね」
「だな。金色のバグとの戦いの後に使った魔法だったはずだ」
僕と久朗が、小声で会話する。
回復速度よりも、全体としての回復量を考えてこの魔法を選んでくれたようだ。
激しい戦闘が繰り広げられる。
両方とも長柄の武器なので、晶の戦いとは少し様相が異なっており、これはこれで見ごたえがある。
「まずいな、漣が押され始めてきた」
久朗が顔をしかめる。
魔法の構築速度や技の切れなどで、やはり楓の方が一枚上手のようだ。
「このままでは終われません……逆転を狙います!」
漣が切り札を使うようだ。
「行きます――『封魔・爆風陣』!!」
地面に大型の魔法陣が発生し、楓の機体を捉える。
そして、強烈な爆風が魔法陣の中に発生し、中にいる対象を押しつぶすほどの破壊力を示す。
「これって、模擬戦で使っていいレベルの技なの!?」
僕は少し、焦りを感じた。
「大丈夫だ。模擬専用に、死なないようにする術式があらかじめグラウンドに施されている」
久朗はそのことを知っていたようで、安心して見守っている。
爆風が消え、そこにあったのは……かなりのダメージを受けた、楓の機体であった。
しかしまだ、戦闘能力は失われていない!
「うちの勝ちや! とどめ、いくで……奥義『百花繚乱』!!」
楓の薙刀から、無数の花びらが飛び出して漣の機体を包み込む。
動きを封じる効果があるらしく、その場に縫い付けられる漣。
「散華!」
楓が薙刀をふるい、漣の機体を両断する。
完全に決まり、戦闘不能が確定した。
「勝者、神山楓です!」
「なんていうか……ヒーラー同士の戦いのレベルを、はるかに超えていたよね……」
「だな。私たちも無様な戦いは見せられないぞ」
緊張感がまた、強まってしまった。
「あ、ちなみにうちの場合、本気だとオプションの『紅葉』も加わるから、本来の戦闘能力はこんなものではあらへんで」
楓があっさりと、漣に告げた。
「あと、どうもその長物はあっていないようやな。もっと短いものに変えたほうがええと思うで」
漣はクォータースタッフを使っていたが、それが合っていないという事もアドバイスしていた。
どうやら戦闘能力にはかなり、差があったようだ。
「続けて第三試合、神崎久朗対船橋良を始めます。選手はグラウンドに来てください」
アナウンスが流れる。
「私の番だな。まあ、そこそこ頑張ってみることにするか」
久朗が準備を始める。
その次はみかんで、最後が僕……それまでの試合に負けないように、精一杯頑張らないと!




