第29話 めあへの評価、そして咲
いよいよ、めあのギフトとギアスが明らかになります。
図書室での勉強から数日後の放課後、僕たちはまた、めあちゃんと奏さんに出会った。
更にもう一人、芙士美高校の制服を着た少女が一緒にいるようだ。
「あ、結城、久朗。こんばんはなの!」
めあが僕たちに気づいて、声をかけた。
明るく元気な声で、今のところ何か悪いことが起きている様子はなく、一安心だ。
「久しぶり、めあ。そして奏さん……あと、もう一人は誰なの?」
僕が尋ねると、少女がそれに応えた。。
「初めまして。私の名前は、佐藤咲といいます」
少し人見知りするようで、ちょっとだけ怯えたような感じであった。
「奏さんとは学校で、色々なことを話すうちに仲良くなりました」
「学校で……という事だけど、クラスは別なのか?」
久朗が質問する。
咲ちゃんはあまり、ヒーローっぽくないけれども……。
「はい。私は普通科です」
咲がそれに答えを返す。
「咲さんは、すごい料理の腕の持ち主なんです……正直、うらやましいと思います」
「そんなことないですよ。普通の家庭料理です」
二人は仲がいいらしく、お互いに遠慮なく話をできているようだ。
奏は前にカラオケに行ったときは表情が硬かったのだが、今は比較的穏やかな表情になっている。
「6月の頭に、芙士美高校で文化祭があるのですが……咲さんの提案で、彼女のクラスの出し物は、本格派インドカレーになったんですよ」
「本格派?」
カレーで本格派って……もしかして、カレー粉から作るのかな?
「なにしろ、カレー粉を使わずにスパイスを調合して、カレーを作るというのですから」
!?
そんなこと、できるの!!
久朗も同じように、驚いている。
「意外と簡単なんですよ。大体6種類くらいのスパイスがあれば、自宅でもできますし」
それって完全に、家庭料理のレベルを超えているよね……。
「それは食べるのが楽しみだな……体育祭とも日程はかぶらないし、ぜひ行かせてもらおう」
久朗も乗り気だし、僕もどんなものなのかとっても興味がある。
「めあも、楽しみなの~!」
「じゃあ、めあちゃんのような子供向けに、カボチャを入れた甘めのカレーも用意しておきますね」
あっさりと咲がメニューの追加を告げた。
それが出来る時点で、既にカレーの専門店並みの腕前を持っているという事なんだけれども……。
「そういえば、めあの能力等級は一体どうなったんだ?」
久朗がめあに尋ねた。
「えっと……上がULという新しい等級になったの。そして再測定したら、下がHRだったの」
HR……久朗と同じくらいの能力ということになる。
そしてめあちゃんのために、新しい等級が作成されるなんて……あまりにも圧倒的過ぎて、言葉も出ない。
「めあちゃんの能力測定の結果、及び機体のパーソナライズができたことから、特例として正ヒーローに認定されることになりました」
奏が補足説明を行う。
「という事は、僕たちと一緒にバグと戦うかもしれないね――その時は一緒に頑張ろう!」
「わかったの!」
僕とめあは、握手を交わした。
「あと、測定の結果こんなことになったの」
めあが、測定結果が印字された紙を僕たちに見せてくれる。
能力:HR~UL、暫定値HR
ギフト:イマジナリーフレンド、うつしよ
ギアス:明らかな嘘
「これって、見てよかったの?」
僕が尋ねる。
「結城や久朗ならば、大丈夫だと思ったの」
それだけめあちゃんは、僕たちのことを信頼してくれているという事だ。
「この明らかな嘘というのは、いったいどんな事なんだ?」
久朗が疑問を抱いたようで、めあに尋ねる。
「こんな感じなの――めあは、ピーマンがすきなの」
なるほど確かに、嘘をついているというのが僕たちにも簡単に分かる。
「これは……結構きついギアスだな」
「大丈夫なの。めあは嘘をつくことがあまりないの」
めあちゃん自身は、あまりこのギアスについては気にしていないようだ。
「ギフトのイマジナリーフレンドというのは、一体?」
僕も気になって、聞いてみた。
「めあの中には、『ゆめ』ちゃんというもう一人のお友達がいるの」
めあがそれに答える。
「ゆめちゃんか……そのお友達とは、仲がいいのか?」
久朗が尋ねると、「とっても仲がいいの」という答えが返ってきた。
「うつしよ……現世という事だよね。この能力がもしかして、あの時のミラクル・トイボックスの力なのかな?」
「そうみたいなの。現実に、おもちゃを生み出す力らしいの」
おもちゃとはいえ、あの威力であれば十分「武器」として通用する。
どうやらかなり強力な能力の持ち主のようだ。
「今度機会があったら、みんなでファミレスにでも食べに行かないか?」
久朗が提案する。
「めあはオッケーなの!」
「はい、たまにはそういうのも、いいでしょうね」
めあと奏は、了承してくれた。
「ファミレスの味も、意外とバカにできないですからね。勉強がてらご一緒させてもらいます」
咲も前向きなようだ。
「いきなりメールアドレスの交換はレベルが高すぎるから、めあか奏経由で詳細は決めることにしよう――それでいいかな?」
久朗の提案に、三人とも同意した。
中間テストが終わった週の日曜日に、みんなでファミレスに行くことになった。
そのためにもまずは、試験勉強を頑張らないと!
これを前提として、注意事項を読み返してください。
なお、作中に登場するカレーは、実際に作ったことがあります。
微調整としてカレー粉をほんの少し入れましたが、ほぼ問題なくできました。
ネットで検索すると、作り方が出てくると思います。