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第21話 バグについて、そして漣のお弁当

飯テロ注意

「今日の授業では、バグとヒーローについて説明を行う……こら久朗(くろう)(まい)先生ではないからといって、露骨にがっかりした顔をするのではない」


 今日の授業は、(まもる)先生が担当している。


「まず、バグについて説明する」


 バグというのは、十数年前からこの世界に出現するようになった、謎の存在である。

 人間を襲うこと、及び生命活動が停止すると光の粒子になって消えてしまうという特性がある。


「倒すと遺体が残らないというのが、研究が遅れてしまっている要因の一つだな」


 発生原理については、「人間が観測していない矛盾点や、世界の歪みが関係しているのではないか」という説が今のところ、もっとも有力な説である。

 とはいえバグとは意思の疎通ができず、あくまでも推測の範囲にとどまっている。


「バグには、いくつかのタイプがある。――お前たちならば、アントくらいならば何度も倒しているだろう?」


 基本的に虫の形状をしているのだが、「バグ」という名前に反して、大型の存在も確認されている。

 アント、スパイダーなどは比較的小型であるが、中型のセンチピードになると5メートル以上の個体も確認されている。


「後は、空を飛ぶタイプがあるのも厄介なところだな」


 ワスプやローカストと呼ばれるタイプのバグは、空を飛んで人間に襲い掛かってくる。

 通常のバグに比べて圧倒的な機動性があり、大量発生の際には多くの被害が発生することが多い。


「そして、バグと戦う力を持った存在が、ヒーローだ」


 厳密には、戦車などの戦力でもバグと戦うことは出来る。

 しかし市街地で戦車を投入した場合、周辺に与える被害は計り知れない。

 だからといって通常兵器を用いたところで、バグに対しては効果が薄く、人的被害を増すだけの結果になりかねないのだ。


「最初のころは、ヒーローが火器を使っていたこともあり、効くという情報と効かないという情報が錯綜していて、それもまた被害を拡大してしまった原因だな」


 ヒーローが用いた火器は、バグに対して効果があったのだ。

 そのため軍隊がバグに対して攻撃を行い、有効に戦うことができなかったということもしばしば発生していた。


「そして、ヒーローの力なのだが……武術などを学んでいる人間の方が、より大きな力を発揮できるという特徴がある」


 そのため古来からある武術が見直され、学ぶものが多くなっている。

 そしてその中から、新たなヒーローが生まれるという好循環が成り立っているのだ。


「また、ヒーローの力が込められているのが、『コクーン』と呼ばれる防御装置だ」


 一般人がバグの攻撃から身を守るために、スマートフォンに標準搭載されているアプリが「コクーン」である。

 バグの攻撃からある程度身を守ることができ、また災害時にも身の安全を守ることができるため、子供であってもスマートフォンを持つようになっている。


「まあ、一度に詰め込んでも覚えきれないだろうな。テキストを読んで、よく復習しておくように」

 守先生の授業が、終わった。


「今日は久朗もみかんも、眠らなかったようで何よりだ」

 どうやら二人とも、要注意人物としてチェックされてしまったらしい。


「ふう~っ、終わったな」

 休み時間になり、久朗が大きくのびをする。


「お二人とも、よろしいでしょうか?」

 (れん)が僕たちに、声をかけてきた。


「実は、家で料理の勉強をしていたのですが……作りすぎてしまって、お弁当がすごいことになってしまったのです。よろしければ一緒に食べませんか?」


 内容は、お昼のお誘いだった。

 今日のお昼ご飯はサンドイッチで、少し物足りなさを感じていたため、喜んでその提案に乗ることにする。


「おお~!! これはまた、豪華なお弁当……というより、お重だな」

 (あきら)が喜色の声を上げた。


 黒塗りの重箱に、ぎっしりとおかずが並んでいる。

 基本的に和食がメインのようで、いりどりにレンコンのきんぴら、鶏のつくねにちくわの磯部揚げなど、見るからにおいしそうなラインナップだ。


「みかんも、もらっていいのかにゃ?」

 みかんのお弁当は……巨大な弁当箱にぎっしりとご飯が詰められていて、そこに卵とひき肉のそぼろが乗せられている。

 きぬさやがアクセントになっていて、色鮮やかでこれはこれで美味しそうだ。


 ちなみに僕たちのお昼は、「がんもいっち」というサンドイッチだ。

 これは芙士地域独特のもので、甘く仕上げられたがんもどきをパンで挟んだものである。

 がんもどきのしっかりとした食感とパンが上手くマッチしていて、かなり美味しいのだ。


「漣は料理が上手いな。これは花嫁修業の一環なのか?」

 久朗が漣に尋ねる。


「花嫁修業というわけではないのですが……カードの占いと同じく、最近は料理にもはまっているのです」

 漣がそれに答えた。


「漣の家は、結構いいところだぜ。俺たちが最初に行ったときは、入っていいのかどうか迷ったくらいだ」

 晶が笑いながら、説明してくれた。


 やけにみかんが静かだと思っていたら……黙々と漣のお弁当に手を伸ばしていたようだ。

 このままでは終わってしまうと思い、慌てて僕たちも箸を伸ばす。


 どのおかずも美味しく、大満足。

 僕たちも今度何か、お礼をしないとな……。

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