第20話 漣の占い
図書館で勉強を行った次の日の放課後。
晶、漣、みかんの三人と話をしていて、晶の服の話になった。
「そういえば、なぜ晶は男物の制服を着ているの?」
僕は、そう尋ねてみた。
確かに、生徒手帳には「制服着用」の記載はあるものの、「女子が男子の制服を着てはならない」という規定はない。
とはいえ普通は、女子はセーラー服を着るはずなんだけれども……。
「あはは……俺が女物の服を着ると、どうしても「女装した男」みたいになってしまってな」
笑いながら、晶が答える。
「三人で制服を買いに行ったときに、私も見たのですが……明らかにこちらの方が、合っているようでした」
漣がさらに補足する。
「にゃむ。晶は普段着も、男物を愛用している」
みかんの話が本当だとすると、ちょっと可哀そうかも……。
「もしかして、性同一性障害というものなのか?」
久朗が少し、無神経な質問をした。
性同一性障害というのは、生まれもった脳の性質の一つである。
自分自身の思っている性別と身体の性別が異なるということから、激しい苦悩を伴うことが多い。
「いや、そんなことはないぜ。……確かに自分を「俺」なんて言っているし、そう思うのも仕方ないけどな」
晶が笑いながら、否定した。
「ガサツで女らしくないかもしれないが、これが「俺」というものだと受け入れているぜ」
晶の声に、かげりは見えない。
そのまま話が続き、今度は漣の趣味の話に変わった。
「漣は確か、カードの占いが得意だったよな?」
久朗が漣に尋ねる。
「はい。今持っているカードだと、タロット占いができますね」
タロット占い……ちょっとだけ興味がある。
「僕たちも、占ってもらえないかな?」
気になったので僕は、漣にお願いしてみた。
「すみません……私の場合、真剣に占うため、お金をもらってやっているのですが、よろしいでしょうか?」
漣が少しすまなそうな顔をして、そう答えた。
「修行も兼ねているのです。そのため、いい加減な占いをしたくないですから」
それって趣味の範疇を、大幅に超えているのでは……?
値段を聞いてみると、1人500円とのことだった。
そのくらいならば大丈夫なので、久朗と一緒に受けてみることにする。
「なにを占ってもらおうかな……少し悩むかも」
「そうだな、結城の恋愛運を占ってもらってはどうだ?」
久朗がとんでもないことを言い出した。
「な、なにを言っているんだよ、久朗!」
少し慌てる僕。
「分かりました――それでは始めます――」
否定する間もなく、カードを並べ始めてしまった。
めくられたカードは……「塔」、「死神」、そして「運命」。
なんだかあまり、良くない結果のような……?
「正直に告げます――あなたの恋には、大きな障害が立ちふさがっています」
漣の冷静な声が、僕に突き刺さる。
「もしかしたら、生死を分けるほどの大きな出来事が起こるかもしれません。ですが、それを乗り越えた先にある運命は、より大きな恵みとしてあなたに訪れるでしょう」
漣の解釈が正しければ、恋が成就する可能性も十分あるということで少しホッとする。
「いや、思っていたよりも本格的だな――では私も、恋愛運を占ってもらおう」
久朗が乗り気になって、漣に500円玉を渡す。
今度のカードは……「死神」、「世界」、そして「恋人」。
漣がもう一度シャッフルして、再び同じ結果になる。
「これは……あくまでも占いなので、気にしすぎないでくださいね」
前置きがあるということは、相当ひどい結果なのかも?
「あなたの恋は、おそらく死と結びついています――死別を意味するのか、あるいは未亡人など死を乗り越えた人との恋なのかは分からないのですが、そういう結果が出ていました」
少しすまなそうに、漣が告げる。
「ですが、その恋は世界をまたにかけるほどの、巨大なものになるでしょう。そしてその恋は永遠に続くという結果です」
それはそれで、悪くない結果だと思う。
「なんというか……思ったよりも面白かったな。これならばお金を払う価値がある」
久朗自身はわりと、この結果に満足しているようだ。
「話は変わるけれども、週末みんなで遊びに行かないか?」
晶が僕たちに聞いてきた。
「午前中に買い物をして、午後に図書館で勉強。どうだろう?」
悪くない提案だったので、僕たちは了承した。
どんな週末になるか、楽しみだ。




