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再審の男  作者: 藤澤トオル
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2人とふたり

ミーシャとニーナは昼間なのに夜の様に暗い森の中を進む。ジヤヴォールの本体を探すのに使うのは...直感と伝承、そして勇気だ。

実を言うと、2人は陽介達に期待はしていない。ジヤヴォールの倒す方法が欠片も伝わっていないからだ。あくまで伝承にあるのは『ジヤヴォールの起こす異常事態を止める方法』であって、『ジヤヴォールを止める方法』ではないのだ。


「ニーナ、逃げるなら今のうちだぞ」

ニーナはミーシャの姪である。彼が姉の死を聞き、家を訪ねるとそこに父親はいなく、ニーナが残されているのみだった。成り行きで彼女を育ててはいるが、ミーシャとしてはニーナにこんな場所ではなくもっと別な穏やかな土地で過ごしていたいと考えている。故に、ミーシャはニーナを生かさねばならないのだ。

「大丈夫よ。それに、生き残れるなら彼らも生かしてあげたいわ」

「...そうか」


何度か獣に襲われたが、全て問題なく倒すことが出来た。そして、ある物を発見する。

「...この紋様はなんだ?始めてみる」

「それにこの造り...遺跡という程ではないけど、中々に作り込まれているわ」

2人は奥へと進んでいく。




「アリシア!避けろ!」

ジヤヴォールのチョップを紙一重でかわす。ジヤヴォールの切り落としたはずの腕は、何故か再生していた。

「ヨースケ!コンビネーション!」

「了解!」

ジヤヴォールの攻撃を陽介が回避と受け流しで引き付ける。そして、微妙に隙が生まれるタイミングで陽介がアリシアと前衛後衛を交代する。ジヤヴォールとアリシアのパンチが激突する。アリシアの脇をすり抜け、陽介がジヤヴォールの懐に入り込み、腕を切り落とした。

今度はジヤヴォールが距離をとった。斬られた方の腕を見ている様に見える。

「...どう?」

「腕は前も切断に成功している。問題は...あれがダメージになっているか、ということだ」

「そりゃ楽しみね」


アリシアが皮肉混じりにそう言っていると、ジヤヴォールの腕が再生した。周囲の霧から産み出しているようだ。

「同じ手は...読まれているだろうな。致し方ないとも言える」

「それなら...また別な手を試せばいいじゃない?」

「そうだな...。2回戦目、いくぞ!」



ミーシャとニーナはかなり奥の方まですすんでいた。進んでいくにつれ、おぞましさは増し、紋様も歪な物へと変化していった。

そして、さらに進んでいくと紫色に光る場所を見つける。

「ニーナ、覚悟はいいか」

「ええ、後ろは任せて」

2人はそちらへと歩みを進めていく。そこで2人が発見したものは...。



「ぐあああああああ!!!」

アリシアが吹き飛ばされ、木に打ち付けられる。

「アリシア!くそっ!」

もう何度攻撃を食らわせたのだろうか、それなのにジヤヴォールの勢いは一向に衰えることはない。

それに対し、陽介とアリシアは満身創痍である。これは戦闘中に判明したことだが、陽介は魔術が使えないだけでなく、『魔術の効果を受け付けない』ようになっていた。それもアリシアの様に効果が微弱になる、というのではなく全く受け付けないのだ。これにより、2人の傷は増えていくばかりであった。

陽介は気絶しているアリシアとジヤヴォールの間に入り、剣を構える。恐怖よりも怒りが上回っていた。

「アリシアぁ!起きろ!」

ジヤヴォールを見据えながらもアリシアに向かって叫ぶ。反応はない。

ジヤヴォールがゆっくり接近してきた。現状判明しているのは、布ごと斬る、もしくは打撃を加えれば損傷を与えられるということ。陽介は狙いを定め、ジヤヴォールよりも先に行動し...。


今だ。その瞬間に、彼の左足に激痛が走った。狼が噛みついてきたのだ。

「ふざけ」

陽介の叫びは途中でかきけされた。逆方向から熊が突進してきた。肋骨が肺に刺さっているのが理解できる。息も絶え絶えながら、狼を斬り殺す。続いて熊の相手だ。普段ならなんということない相手だが、今はこちらが非常に危険な状況である。そんな中でアリシアを見る。


ジヤヴォールは、アリシアの首を掴んで締め上げている。

「あがっ...!!」

彼女は苦しみで目を醒まし、もがいている。アリシアは必死の思いで蹴りを放つが、効果はない。

「アリシア!!!!」


その瞬間、陽介はあるものに目がいく。ジヤヴォールの切り落とした腕だ。消えずに残っている。幸運にも、陽介の切り落とされた腕と同じ方だ。サイズは違うが、アリシアを助けるためにはこれしかないと判断した。

陽介は熊からの攻撃を剣で受け流し、剣を捨ててジヤヴォールの腕へと転がる。片足がやられているせいか上手くは出来なかったが、確保には成功した。陽介は躊躇いなく腕をくっつける。何も感じない。ただ、動かすことはできる。


立ち上がる陽介に、再び熊が立ちはだかる。

「そこを...どけ!」

陽介につけられたジヤヴォールの腕が、彼の腕のサイズへと自然に変わっていった。

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